《医師監修》臨床内科専門医が教える。「血(けつ)」を補う。足のつりを鎮める漢方薬の役割とは

漢方薬の役割

ロート製薬が2万人に実施したアンケート調査(2015年11月実施)では、「50.8%の人は足がつった経験があり、うち14.8%の人は週に1回以上足がつる」と回答したとの報告があります。足がつりやすい人とそうでない人にはどのような違いがあるのでしょうか。

臨床内科専門医で、漢方治療も行う正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、
「足のつりは、東洋医学では、筋(すじ)や腱(けん)に栄養を与えながら、なめらかに動かすように働く『血(けつ)』が不足することで起こると考えられています」と話します。詳しく聞いてみました。

足がつるのは、血液の量や働きが不足する「血虚」の状態

はじめに、足のつりが起こる原因と状況について、正木医師は次のように説明します。

「東洋医学では、ヒトの体は、『気・血(けつ)・水(すい)』という3つの要素で構成され、これらがお互いに連動しているととらえます。

『気』とは、心身の生命エネルギーを指します。『血(けつ)』とは主に血液のことで、全身に栄養素や酸素、熱を運んで老廃物を回収する働きのことです。『水(すい)』とは血液以外の体液のことで、代謝や免疫機能をつかさどります。

足のつりは『血(けつ)』が不足している『血虚(けっきょ)』の状態にあると考えます。血液の量や働きが不足し、足を正常に動かすために必要な栄養素や熱が届かず、足のどこかがけいれんしてつっぱるように感じます。神経が刺激を受けるため、痛みが走ります。

痛みが数十秒ほどの短時間で治まるときと、数分は続くけれどさすったりストレッチをしているうちに治まるとき、また、歩いていられない、寝ていられないほどの激痛に襲われるときもあるでしょう」

では、どうすれば症状を改善することができるのでしょうか。正木医師は、病気の可能性を含めて、こう話しを続けます。

「まずは、けいれんしている部分とその付近を無理がない程度にさする、ゆっくりと伸ばすなどして、痛みを和らげてください。

頻繁に起こる、一方の足だけが冷たい、色が悪い、しびれるなどの場合は、足の血管の動脈硬化によって起きる閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症や椎間板ヘルニアなどではないかを検査などで調べる必要があります。また、糖尿、肝臓、腎臓、甲状腺の病気などが原因の場合もあります。

ほかの病気ではなく、体内の『血(けつ)』が不足している状態ならば、それを改善しましょう。消耗した『血(けつ)』を補う方法の一つに、漢方薬の服用があります。漢方薬とは天然に存在する生薬(しょうやく)を配合している医薬品で、体質や症状に合わせて選びます」

原因や体質に合わせて漢方薬を選ぶ

次に、「足のつりの改善に働きかける漢方薬」を正木医師に挙げてもらいましょう。

(1)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

芍薬と甘草という2つの生薬からなる漢方薬で、足のつりを改善する際にもっともよく処方されています。寝ているときや運動中など突然足がつって急激な痛みが起こったときに、筋肉のけいれんや痛みを鎮める働きがあります。

服用するとすぐに効果が現れるので、足がつりやすい人は、持ち歩く、枕元に置いておくのもいいでしょう。ただし、予防する働きはないので、運動前や睡眠前に服用したからといって足がつらないわけではありません。

(2)疎経活血湯(そけいかっけつとう)

芍薬や甘草を含む17種類の生薬が配合されている漢方薬です。血のめぐりが妨げられると、その滞った部分に痛みやしびれが生じると考えられていて、この薬には血のめぐりをよくする働きがあります。

貧血気味の人や冷えが気になる人に適しています。寝ているときや冷えを感じるときに足がつりやすい、慢性的に痛みが続く症状を改善します。

(3)八味地黄丸(はちみじおうがん)

8種類の生薬が配合されています。年齢を重ねるごとに、血管の老化や冷えで血のめぐりが悪くなり、足がつりやすくなります。八味地黄丸は、血液の循環を促して体を温め、全身の機能を整えるように働きます。

特に膝(ひざ)から下の冷えが気になる人、高齢者に適しています。ほてりやすい人や汗をかきやすい人には不向きです。

最後に正木医師は、漢方薬を服用するにあたって、次の注意を加えます。

「患者さんからよく、『漢方薬には副作用がないのですよね?』と聞かれるのですが、漢方薬はあくまで薬品ですから、副作用がないとは言えません。

一つの症状や病気に強い効果を発揮する西洋医学の薬と比べると、複数の生薬を組みわせる漢方薬は効き目が穏やかな種類が多いので、全般に副作用の程度や頻度が少ないとは言えます。

しかしながら、体質に合わない、アレルギー反応を起こすケースなどもあります。特に甘草は、手足の力が抜ける、むくみ、血圧の上昇などの副作用が報告されています。

神経質になる必要はありませんが、処方薬は指示通りの分量を、市販薬は説明書に記載されている用法用量に沿って服用しましょう。1週間、長くても2週間ほど服用してもあまり効果が感じられない、足のつりの回数が増えた、ほかの不調が現れた場合は、服用を中止して医師か薬剤師に相談してください」

足のつりは、足をスムーズに動かすために必要な栄養素や熱が足に届いていないサインであり、激しい痛みとなって現れることもあるようです。「体質や症状にあった漢方薬を試してみるのも一つの方法です」(正木医師)ということです。漢方薬でのケアに興味のある方は、参考になさってください。

取材・文 岩田なつき/ユンブル


正木医師

取材協力・監修
正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。内科、リハビリテーション科とともに、漢方治療、更年期外来、禁煙外来を行っている。
正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9
http://masaki-clinic.net/wp/

▼医師が教える、足のつりの対処法【動画】

漢方薬の役割

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