《医師監修》新常識! 睡眠と疲労の医学博士が教える。真の「 睡眠のゴールデンタイム」とは!?

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日本では昔から、「睡眠のゴールデンタイムは22時~翌2時」と言い伝えられてきました。「この時間に眠ると、健康に良い」と言われますが、残業やアフターワークに予定があれば、とてもその時間に眠ることはできません。いったいどうすればいいのか、また、そもそもこの情報は医学的に正しいのかが気になります。

そこで、大阪市立大学医学部特任教授で東京疲労・睡眠クリニック(東京都港区)院長、また、ベストセラーとなった『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)の著者でもある梶本修身(かじもと・おさみ)医師に詳しく聞いてみました。

熟睡中に、成長ホルモンが多量に分泌されて細胞を再生する

――まず、睡眠のゴールデンタイムは22時~翌2時という情報は正しいのでしょうか。

梶本医師 結論から言って、22時~翌2時という時間帯についての医学的な根拠はありません。

ゴールデンタイムというのは、「一日のうちで最も深く眠っているとき」にあたります。なぜかというと、深く眠っているときには、脳の下垂体(かすいたい)という器官から「成長ホルモン」が分泌されるからです。

成長ホルモンという名称はよく耳にされると思いますが、幼児期に骨を伸長させて背を伸ばす、筋肉を成長させることで知られています。

成長ホルモンの分泌量は思春期にもっとも増えて、加齢とともに減少するものの、大人でも分泌され続けます。代謝の機能に大きく関わり、食事でとりいれた炭水化物、タンパク質、脂質の代謝を促進し、脂肪を分解して筋肉量を増やす、骨や皮ふの細胞の再生を促して丈夫にする作用があります。

つまり、成長ホルモンは、22時~翌2時といった時間帯によって分泌量が増えるわけではなく、何時に寝ようが深く眠っているときに出るため、「その人にとって、深い眠りの時間帯こそが睡眠のゴールデンタイムだ」と言えるわけです。

「寝入りばなの3時間」がゴールデンタイム

――では、深い眠りとは、具体的にいつごろになるのでしょうか。

梶本医師 不眠症ではなくて健常な状態であれば、「眠りについてから約3時間」の間が最も深く眠っていることがわかっています。

睡眠には、リズムというものがあります。医学では、「脳波」、「目の動き」、「筋肉の動き」によって、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」に分類しています。

レム睡眠という呼称は、浅い眠りのときは目がぎょろぎょろと動いているため、急速眼球運動の「Rapid Eye Movement」の頭文字をとってRem(レム)としています。筋肉は休んでいるけれど脳が休んでいない状態で、夢を見ると起床後も覚えていることがよくあります。

ノンレム睡眠とは、眼球運動がみられない「Non Rem(ノンレム)」の状態です。脳が休んでいて、血圧、心拍、体温も低下し、安らかな眠りと言えます。

眠りにつくと、約5~30分で一気に深い眠りのノンレム睡眠になり、次に浅い眠りのレム睡眠へと移行します。これを約90分周期で一晩に4~5回、一定のリズムで繰り返します。

睡眠中で最も深い眠りとなるのが、寝入ってすぐの1回目のノンレム睡眠の時間帯です。このあと、レム睡眠にスムーズに移行すると、朝まで睡眠のリズムが整い、質が良い睡眠をもたらすことになります。

このことから、「寝入ってから約3時間が睡眠のゴールデンタイム」であるわけです。

これまで、22時~翌2時と言われてきたのは、22時に寝ると、翌1時ぐらいまでに成長ホルモンが多量に出て6時前には目が覚めるので、早寝早起きを勧める意味も含まれていたのでしょう。

――寝てから3時間以内に何かで起こされる、目が覚める、トイレに起きるなどすると、その日の睡眠の質は悪くなるのですね。

梶本医師 そういうことです。成長ホルモンの分泌量も抑えられるでしょう。ですから、翌日は疲れやすくなるので、活動を抑える、残業をしないで早く帰ってゆっくり休むなどするようにしてください。

寝る直前には脳に刺激を与えない

――質が高い睡眠を得るためには、どうすればいいのでしょうか。

梶本医師 睡眠は、脳や体にとっての休息タイムです。寝る1~3時間ぐらい前から、血圧、心拍、体温、呼吸などをコントロールする自律神経のうち、リラックス時に働く「副交感神経」が優位になるように行動してください。

つまり、寝る直前には脳に強い刺激を与えないことがポイントです。

熱い風呂やサウナに入る、食事や飲酒をする、スマホやタブレット端末の操作をする、ネットサーフィンやゲームをする、ホラー映画を観る、仕事をするなどは避けましょう。

――すっきり目覚めるための方法はありますか。

梶本医師 睡眠の後半は、レム睡眠の時間が長くなります。この浅い眠りのときのほうが自然に目覚めやすいので、まずはそのことを知っておきましょう。

カーテンを少し開けておくと、朝方のレム睡眠のときに、光を感じながら徐々にゆっくりとした目覚めを迎えることができます。

このとき、大音量の目覚まし時計で飛び起きるのはお勧めできません。突然の大きな音は、動物にとっては差し迫った危険を意味します。血圧や心拍を上昇させるため、不快なだけでなく健康にも良くありません。

――ありがとうございました。

 
睡眠のリズム、メカニズムと関連し、「寝ついてからの3時間」の間に、脳と体では成長ホルモンが大活躍して細胞の再生などを促しているということです。この時間の重要性を意識し、寝る前には活動を抑えてすっきりとした目覚めを迎え、そう快な日中を過ごしたいものです。

取材・文 阪川夕輝/ユンブル


梶本修身先生

取材協力・監修
梶本修身氏。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。医学博士。国家プロジェクトとしての疲労対策の研究を続ける。著書に、『すべての疲労は脳が原因2 <超実践編>』、『すべての疲労は脳が原因』(ともに集英社新書)、『「体の疲れ」が消える本』(PHP文庫)ほか。『林修の今でしょ講座』(テレビ朝日)、『助けて! きわめびと』(NHK)、『この差って何ですか?』(TBSテレビ)ほかメディアに多数出演。睡眠と疲労に関する新常識の提案、わかりやすい解説で知られる。
東京疲労・睡眠クリニック:東京都港区新橋1-15-7 新橋NFビル3F
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↑梶本修身医師の最新刊『すべての疲労は脳が原因2 <超実践編>』(集英社新書)

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