≪医師監修≫ 臨床内科専門医が教える。その症状、認知症の初期かも? もの忘れで悩む人へ

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「あの人の名前はなんだったっけ?」、「今朝、何を食べたかなあ?」。そんなド忘れは年齢とともに誰しも起こる現象と思いがちですが、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美医師は、「病気としての『もの忘れ』が始まっているかもしれません。そうと考えて、早めに対策をとるようにしましょう」と話します。

加齢による自然なもの忘れか、認知症のサインなのか

「このごろ、ド忘れが続くなあ」と思う場合、「クリニックではまず、特に病気の心配がない『加齢に伴うもの忘れ』なのか、『認知症のサイン』なのかを診断します」と話す正木初美医師は、こう説明を続けます

「例えば、『さっき食べたごはんのおかずはなんだった?』などと、体験の一部を忘れている場合は加齢に伴うもの忘れです。一方、『ごはんを食べていない』と、食事をした体験そのものを忘れる場合は、認知症のサインになります。

また、誰かにヒントを与えてもらえたら思い出す場合は加齢が原因、ヒントがあっても思い出せない場合は認知症のサインであることが多くなります」

自分では判断しづらいこともありそうです。正木医師は、「迷ったら、いち早く医療機関を訪れてください」と言います。

何度も同じことを聞く、趣味に関心がなくなったら注意

「もの忘れだけではなく、生活の変化も診断の基準になる」と正木医師は、医療機関での診察について、次のように説明します。

「まず、ほかの病気と同様に、患者さんから主な症状を聞き取ります。『具体的に何をどのように忘れているのか』、『いつごろからその症状があるか』、『もの忘れを自覚してから今日まで、心身ともにどのような変化があったか』などです。

次に、『既往歴』と言って、『これまでにかかった病気はないか』、『現在の暮らしの状態や生活習慣』、『家族の既往歴』などをお尋ねします。

そのうえで、認知症のサインかどうかの知能検査を行います。病院で実践されている代表的な方法は、『改訂 長谷川式簡易知能評価スケール』と『MMSE検査』(ミニメンタルステート検査)の2つです。

15~30分の口頭による質問形式で、後者は簡単な図形確認もあります。ともに30点満点で採点し、ある程度判別することが可能です。

必要に応じて、脳の画像診断であるCT検査やMRI検査、脳の断面の血流状態がわかるPET検査(ペット検査。ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)やSPECT検査(スペクト検査。シングル・フォト・エミッションCT)などを行います」

診察時には家族が付き添ったほうがいいのでしょうか。

「認知症によるサインの場合は、本人が気づいていないことがよくあります。何度も同じことを聞く、趣味への興味や関心が薄くなった、名詞が思い出せずに『あれ、それ』をよく言う、人前に出るのを嫌がる、また、夜はよく眠れているか、イライラやうつの症状はないか、金銭管理は自分でしているかなど、その人の生活や個性の変化に気づきやすい家族や身近な人の付き添いがあったほうが診断しやすくなります。

ご家族は、患者さんの変化を可能な範囲でメモをしておくなどするといいでしょう。

また、周囲の人が気づいた時点で、実はすでに早期の認知症である場合が少なくありません。症状が進むにつれて自分では受診を嫌がる人が多いという現実もあります。

『もの忘れが多い』という訴えを耳にしたら、年のせいだろうと流さずに、いち早く受診を勧めましょう」(正木医師)

認知症予備群の「軽度認知障害」とは

認知症とは別に、「軽度認知障害(MCI)」(Mild Cognitive Impairment)という病名を耳にしますが、どういう症状でしょうか。正木医師はこう話します。

「軽度認知障害は、正常と認知症との間のグレーゾーンの状態です。認知症予備群とも呼ばれます。認知症との違いは、生活に支障が出ているかどうかです。出ている場合は認知症、生活には特に不自由がない場合を軽度認知障害としています。

先ほどの『改訂 長谷川式簡易知能評価スケール』は、医療機関で使用されるテストですが、ネット上にもたくさん情報がアップされています。家族や親しい人とでもすぐに実施できるので、気になる場合は一度行ってみてください。結果はあくまで参考ですが、30点満点で20点以下なら認知症の可能性が高いとされています。その場合は医療機関を受診しましょう。

軽度認知障害や認知症の早期には、比較的直近の記憶から失われていくので、ついさっきのできごとが思い出せなくなります。さっき見たテレビ番組の内容が思い出せない、いままで手に持っていたコップをどこに置いたか忘れるなどが続く場合は注意が必要です。

次第に思い出せないことが増え、今までの記憶も徐々に失われていきます」

最後に正木医師は、医療機関の探し方について、こうアドバイスを加えます。

「『もの忘れ外来』や、『認知症外来』がある病院か、かかりつけ医に相談してください。もの忘れ外来の多くは予約制なので、事前に必ず電話で問い合わせをしてから訪れましょう。

大学病院や大規模な総合病院の場合は、かかりつけ医からの紹介状が必要です。ですから、まずはかかりつけ医に相談するのが得策でしょう。

それに、脳出血や脳梗塞(こうそく)などが原因の脳血管性認知症の場合は、その病気を早期に治療することで認知症の悪化を防ぐことができます」

いまお湯を沸かしていたことを忘れて違う用事をしていた、などという現象を放置して、軽度認知障害に発展したという事例は「枚挙にいとまがない」と正木医師。早期に自覚し、自らかかりつけ医を受診するという勇気と決断が認知症を改善する、現状を維持する、発症を遅らせることにつながるということです。

取材・文
藤井空/ユンブル

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取材協力・監修
正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。内科、リハビリテーション科とともに、漢方治療、更年期外来、禁煙外来を行っている。
正木クリニック:大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9
http://www.masaki-clinic.info/

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