《管理栄養士監修》「もの忘れ」対策の栄養素と食材はこれ!

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「もの忘れ」は認知症の前段階と言われますが、予防には、生活習慣の見直し、中でも栄養バランスのとれた食事は重要だと言われています。そこで、管理栄養士で糖尿病療養指導士でもある西山和子さんに、もの忘れ対策のための食事について具体的なお話を聞きました。

血液がサラサラな状態を維持する

はじめに、もの忘れの原因の一つとなる老化と血管の状態、食事の関係について、西山さんはこう説明します。

「人間の脳や体の細胞は、加齢にともなって新陳代謝が衰えるなどして、老化がおこります。これを止めることはできませんが、新陳代謝を改善することで老化を遅らせることは期待できるでしょう。
 
そこで、細胞に栄養を運ぶ血液が、できるだけサラサラな状態を維持するように意識しましょう。動脈硬化の原因となる高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の症状が出ると血管が硬くなりやすく、食事などによっては血液がドロドロして脳卒中や心臓病のリスクが高まります。

もの忘れを予防する食事は、生活習慣病の予防にも直結します」

では次に、もの忘れと生活習慣病を予防する食事の方法、栄養素、食材について教えてもらいましょう。

栄養バランスを考え、減塩し、抗酸化物質を食べる

「まずは、何と言っても栄養バランスがとれた食事をとることです」と言う西山さんは、もの忘れ対策になる食事のしかたについて、次の3つを挙げます。

(1)栄養のバランスがいい食事を

具体的には、『主食』(米、パン、めん類などの穀類。主な栄養素は炭水化物)、『主菜』(魚や肉、卵、大豆製品を料理したメインのおかず。主な栄養素はタンパク質)、『副菜』(野菜、海藻、きのこ類を使ったサイドメニュー)をそろえます。主食1品、主菜1品、副菜(汁物含む)3品を目安にすると、必然的に栄養のバランスは整います。定食屋の「和定食」をイメージするといいでしょう。おやつには、果物や乳製品をとりましょう。

(2)減塩する

塩分を摂り過ぎると、高血圧、動脈硬化をまねきます。1日の摂取量は、男性8.0グラム未満、女性7.0グラム未満を目標としてください。1グラムは1円玉の重さです。塩の代わりに、昆布、かつおぶし、干しエビなどの「だし」や、ワサビ、ショウガ、ネギなどの香辛料、酢やトマトなどの酸味をうまく利用するようにしましょう。

(3)活性酸素を抑える「抗酸化物質」をとる

次の項目で具体的な食材を紹介します。

ポリフェノール、青魚、BCAA、GABAを食べる

先に紹介した食べ方をふまえ、ここでは、もの忘れの対策になる栄養素と、それを含む食材を西山さんに教えてもらいましょう。

(1)抗酸化物質を含む……ポリフェノール、ビタミン類

ポリフェノールは、植物が光合成で生んだ色素や苦み成分で、自然界には5,000種以上が存在すると言われます。特に注目したいのは次のものです。

  • アントシアニン(ブルーベリー、クランベリーなどのベリー類、アサイー、赤シソなど)
  • イソフラボン(大豆)
  • レスベラトロール(赤ワイン)
  • カテキン(緑茶)
  • タンニン(紅茶・ウーロン茶など)
  • サポニン(大豆、小豆、ぶどうの皮など)
  • セサミン・セサミノール(ゴマ)
  • リグナン(アマニ、ゴマ)
  • ルチン(そば)
  • など

また、ビタミン類では次のものをとりましょう。

  • ビタミンA(β-カロテン。ガボチャ、ニンジン、ホウレンソウなどの緑黄色野菜)
  • ビタミンC(赤・黄ピーマン、ジャガイモ、イチゴ、キウイフルーツなど)
  • ビタミンE(ナッツ類、アボガドなど)

 

(2)青魚……DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)

イワシ、サバ、アジ、サンマなどの青魚の油には、DHAやEPAという成分(ヒトの体内では作られないため食事でとる必要がある「必須脂肪酸」)が豊富に含まれています。

血液をサラサラにして血管をやわらかく保ち、動脈硬化を抑えるように働くとされています。脳の血流改善も期待でき、脳血管性認知症の予防に適していると言えるでしょう。

効率よくDHAやEPAをとるには、新鮮な青魚を食べることです。魚の鮮度が落ちると、脂肪酸が酸化してよくないので注意しましょう。

(3)必須アミノ酸……BCAAなど9種

肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などのタンパク質食品を食べると、胃腸でアミノ酸という成分に分解され体内に吸収されます。ヒトが必要とする20種のアミノ酸のうち、体内でつくることができず、食事でとる必要があるものを「必須アミノ酸」と言い、9種類あります。偏食やダイエットでこれらが1つでも不足すると脳や体の健康にはよくありません。

9種類のうち、イソロイシン、ロイシン、バリンの3つをまとめて「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」と呼び、筋肉疲労の回復によいとされています。ほか、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、ヒスチジンがあり、不足しないようにとることで筋肉や神経ほか、体のあらゆる部分を整えるように働きます。

9種類をバランスよくとるには、食事ごとに、『主菜』(タンパク質食品)を適切な量とるようにしましょう。

(4)GABA(ギャバ)

アミノ酸の一種で、神経伝達物質として脳内で機能し、ストレスを和らげるように働くとされています。また、血圧を低下させる作用もみられ、生活習慣病の予防や改善に期待されています。

発芽玄米には100gグラム中に10ミリグラムのGABAが含まれていることが知られていて、これは白米の約10倍、玄米の約3倍にあたる量です。また、カボチャや発酵食品であるチーズ、味噌、しょうゆ、ぬか漬け、キムチなどにも含まれています。

気持ちを落ち着けて健康を維持するには、先に紹介した和定食一食で十分にこれらの栄養素を摂取できています。よりリラックスしたい場合は、発酵食品を多めに選ぶとよいでしょう。
 
最後に西山さんは、食生活についてこうアドバイスを加えます。

「これらの食材でも食べ過ぎないように、適切な量とカロリーをとるようにしましょう。1日3食を規則正しく食べる習慣が重要です。また、アルコールは脳への刺激が強いため、ひかえるようにしましょう」

脳の働きを活発にすることは、生活習慣病の予防にもつながる、そのためには細胞を老化させない食事を実践するとよいということです。今日からすぐに取り組みたいものです。

取材・文  藤井空/ユンブル

西山和子氏

取材協力・監修
西山和子氏。糖尿病専門・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)にて管理栄養士、糖尿病療養指導士。糖尿病、生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんを対象に、パーソナルな食事指導にあたる。『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(福田正博 洋泉社)の監修担当。また、食生活に関する記事の執筆、監修多数。
医療法人弘正会 ふくだ内科クリニック

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