≪医師監修≫睡眠と疲労の医学博士が教える。熟睡を妨げるいびきとその対策法

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加齢とともに熟睡できなくなる理由の一つに、「いびき」があるとよく言われます。大阪市立大学医学部特任教授で東京疲労・睡眠クリニック(東京都港区)の梶本修身院長は、「いびきとは、呼吸が苦しくて眠りが浅くなっているサインです。いびきが大きい、また途中で止まる場合は睡眠時無呼吸症候群SAS:Sleep Apnea Syndrome)という危険な病気の可能性があります」と話します。いびきと睡眠の関係について、詳しいお話を伺いました。

いびきの原因は、のどの筋肉が垂れて気道をふさぐから

ひと昔前まで、ガーガーといびきをかいて寝る姿は熟睡の証とイメージしていましたが、いまや危険な病気のサインということ分かっています。梶本医師はまず、いびきについて次のように説明をします。

「いびきは、睡眠中にのどのあたりの気道が狭くなり、そこを通る空気によって粘膜が振動することで生じます。ではなぜ気道が狭くなるのかと言うと、太って首や舌の周囲に脂肪がつくことや、加齢や疲労で舌の根元の筋肉が垂れ、睡眠時にのどの奥に落ち込むことなどによります。

扁桃腺(へんとうせん)が大きい人やあごが小さい人も気道が狭いため、また、鼻がつまっている人は口呼吸になるため、いびきをかきやすくなります」

運動をしたときや仕事で疲れた日の夜はいっそうといびきが大きくなるように思います。梶本医師はこう説明を続けます。

「疲労が激しいとのどの筋肉がゆるむため、気道が圧迫されていびきをかきやすくなります。いびきが大きいときは、呼吸がしにくい低呼吸になっている、また、呼吸ができない無呼吸になりやすい状況です」

いびきをかくということは、睡眠中に呼吸が異常をきたしているととらえるべきなのでしょう。

中年期以降の女性もいびきに注意

いびきをかくのは男性のほうが多いというイメージですが、女性はどうなのでしょうか。

「女性ホルモンは咽頭(いんとう)部の筋肉のゆるみを防ぐ作用があるため、50歳ぐらいまでは男性のほうが圧倒的に多くなっています。ただし女性も、女性ホルモンが減少する50歳以降はのどの周囲の筋肉がたるんで、いびきをかくようになります。

また、女性はいびきが小さいように感じますが、それは男性に比べて肺活量が少ないからであり、その分、脳への酸素供給が不足しかねないことが分かっています。ですから、中年期以降の世代の女性は、睡眠時の呼吸に異常がないか、男性同様に気を付ける必要があります」と梶本医師は注意を促します。

横向きに寝ていびきを軽減

いびきは熟睡を妨げるということですが、ここで、「自分でできる、少しでもいびきを軽減する方法」について、梶本医師に教えてもらいましょう。

「すぐに実践してほしいのは、右側を下にして横向きに寝ることです。多くの人はあお向きで寝ていると思いますが、そうすると、のどの筋肉が垂れ下がって気道をふさぎやすくなります。横向きだと、気道がふさがる危険性が少なくなるわけです。私のクリニックでの実験データでも、あお向き時に比べて横向きで寝た場合は、いびきの量、低呼吸、無呼吸とも約半分になっています」

右側を下にする理由は、「胃の入り口が上に、出口が下になって内容物が移動しやすくなるから」と梶本医師。ただ、寝返りでいつのまにかあお向きになっていることも多いのではないでしょうか。

「それを防ぐために、ウエストポーチにタオルやテニスボールを入れ、ふくらみ部分を腰の後ろに回して装着したまま寝ることを提案しています。すると、寝返りであお向きになろうとしたときにふくらみの違和感で横向きに戻ります。この検証も私のクリニックやテレビ番組で何度か実験しており、有用であることが分かっています。

また、横向き用の抱き枕を利用するのもいいでしょう。下に置く右側の手足への負担が軽くなります。

そして、枕を購入するときは、あお向きでなく横を向いたときに自然な高さになるものを選びましょう。あお向きで合わせた枕で横向きに寝ると、低くて首に負担がかかることがあります」(梶本医師)

また梶本医師は、昼間の眠気や疲労感が激しいときについて、こうアドバイスを加えます。

「低呼吸と無呼吸を繰り返す睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気の可能性があります。この場合、睡眠中の突然死のリスクもあり、また、高血圧や心臓病、脳卒中などの生活習慣病を発症しやすいことが分かっています。

SASかどうかは、睡眠外来などの医療機関で、健康保険適用にて約3000円で検査を受けることができます。それに、CPAP(シーパップ。持続陽圧呼吸療法)という気道を押し広げて空気の通りをよくする器具を使用した治療法が確立されていますから、日中の眠気や疲労感が気になる人、また家族にいびきの大きさを指摘された人は早めに受診しましょう」

睡眠とは疲れを回復するものであるはずが、いびきをかく場合は余計に疲れが増強するということです。梶本医師は、「寝起きの第一歩がつらいとき、起きてから4時間後にもう眠いとき、電車などで座るとすぐ寝落ちする場合は、夜間によい睡眠がとれていないと自覚しましょう」とアドバイスを加えます。

筆者もかなり思い当たるので、ウエストポーチをつけて右側を下にして横向きに寝るようにし、家族にいびきの有無を尋ねるなどして今日からすぐに改善を試みたいものです。

取材・文 阪川夕輝/ユンブル



梶本修身先生

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↑10万部ベストセラーの『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)

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↑梶本修身医師の最新刊『すべての疲労は脳が原因2 超実践編』(集英社新書)

取材協力・監修:梶本修身氏。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。医学博士。国家プロジェクトとしての疲労対策の研究を続ける。著書に、『すべての疲労は脳が原因2 超実践編』、『すべての疲労は脳が原因』(ともに集英社新書)、『仕事がはかどる! 超高速脳のつくり方』(宝島社)ほか。『林修の今でしょ講座』(テレビ朝日)、『助けて! きわめびと』(NHK)、『この差って何ですか?』(TBSテレビ)ほかメディアに多数出演。睡眠と疲労に関する新常識の提案、わかりやすい解説で知られる。
東京疲労・睡眠クリニック:東京都港区新橋1-15-7 新橋NFビル3F
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