≪薬剤師監修≫ 薬剤師が教える。ストレスや不安で眠れないときの市販薬の種類と働きとは

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「ストレスのせいか、寝つきが悪くてしんどい」などと、睡眠の悩みについて嘆く人は後を絶ちません。最近では、薬局やドラッグストアの棚には睡眠の質の改善によいという薬や漢方薬、サプリメントがずらっと並んでいますが、どう選べばいいのかも迷います。そこで、薬剤師で大阪府薬剤師会理事の近藤直緒美さんに、薬店で手に入る睡眠の薬やサプリメントについて、詳しいお話を聞きました。

まず、睡眠の質が悪い原因を探る

はじめに、「睡眠薬と言えば、くせになりそうだからできるだけ飲みたくない」というイメージがありますが、実のところはどうなのでしょうか。近藤さんはこう説明をします。

「医療機関を受診した場合は、不眠の原因や症状の強弱によって睡眠薬を適切に処方されると思われますので、用法と用量を守れば体に害になることはまずありません。診察をして薬を選択、変更、また、『減薬』と呼ぶ薬を減らしていくことや、薬を増やす『増薬』などの診断をします。

市販薬の場合は処方薬に比べると効き目が薄いですが、それだけに、こちらも用法と用量を説明書通りに守れば、くせになる可能性や副作用が表れる確率は低いでしょう。ただ、だからといって、1週間以上飲み続けるなどしてはいけません。1週間服用しても症状が改善しない場合は、病院を受診してください」

では、市販の薬を試して様子を見たいときは、どのように選べばいいのでしょうか。

「まず、睡眠の状態が悪い原因を自分で探りましょう。『ストレスや悩み、心配ごと、不安感があるから』、『大事な商談や試験など特別な行事を控えて興奮しているから』、『何らかの病気や体の痛みがあるから』、『睡眠時無呼吸症候群(SAS)かも』、『加齢に伴うもの』などがあるでしょう。

次に、効き目が早い薬がいいのか、副作用が少ないとされる漢方薬から選びたいのか、サプリメントを試してみたいのかなど、ジャンルを考えましょう」と近藤さん。

西洋薬は睡眠改善薬と鎮静剤の2種類

ではここで、市販の薬とサプリメントについて、ジャンル別に近藤さんに挙げてもらいましょう。

<西洋薬の睡眠改善薬>

「ドリエル」(エスエス製薬)という製品名で販売されています。病院で処方される薬を「睡眠薬」と言いますが、こちらは「睡眠改善薬」と呼ばれ、「寝つきが悪い」、「眠りが浅い」といった一時的な不眠症状を改善するもので、アレルギーの薬や風邪薬の副作用である眠気を誘う成分を利用しています。

脳の神経伝達物質の一つ、「ヒスタミン」の覚せい作用を抑える成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩)が含まれていて催眠をもたらしますが、あくまで一時的な症状に利用するタイプです。「睡眠障害」や「不眠症」といった病気としての不眠に対する効果は認められていないことも知っておきましょう。

風邪薬を飲んだときに眠気を感じるタイプの人は効きやすいと考えられます。

<西洋薬の鎮静剤>

「ウット」(伊丹製薬)という製品名で販売されています。こちらは不安対策の成分(ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素)を含み、ストレス、不安、興奮、神経衰弱、頭痛など鎮静を必要とする症状を伴う場合に向きます。市販薬の中では、催眠作用が強いと言われます。過量に服用すると中毒を起こすこともあるので、用法と用量を必ず守り、数回服用して効果が実感できなければ中止し、医療機関を受診しましょう。

漢方薬はストレスや不安感にまつわる不眠を改善することも

<漢方薬>

ストレスや不安感、体力が虚弱、疲労などにまつわる不眠、また、不眠に関する寝汗や目覚めが悪いといった症状を改善するとされる漢方薬をいくつか紹介します。
先の西洋薬に比べて、効き目はゆっくりで長めに服用することが前提となりますが、体質によっては習慣性が少ない、副作用が少ない、また、体質の悩みの改善にも期待できる場合もあります。

次にあげる「向く体質や悩み」は、すべてが自分に当てはまらなくても、8割ぐらいの要素を「そうだな」と思えば、その漢方薬は自分に適していると言えるでしょう。

・加味帰脾湯(かみきひとう)

体力がなく貧血気味で、ストレス、イライラ、ウツウツ、不安感の精神的疲労が激しく、胃腸の消化もよくなくて、寝汗がある、寝ても疲れが取れない、ぐっすり眠れないといった悩みがある場合に向きます。

【配合されている生薬】
遠志(おんじ)、酸棗仁(さんそうにん)、人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、柴胡(さいこ)、竜眼肉(りゅうがんにく)、山梔子(さんしし)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、木香(もっこう)、生姜(しょうきょう)

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

体力がなく虚弱、すぐに疲れる、胃腸の働きが衰えている、めまいがする、顔色が悪い、食欲がないといった悩みがあり、寝汗が気になる、夜中にすぐ目が覚める、目覚めが悪い場合に向きます。

【配合されている生薬】
人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、 黄耆(おうぎ)、 当帰(とうき)、大棗(たいそう)、柴胡(さいこ)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、升麻(しょうま)

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

比較的体力があって、日ごろから血圧が高め、動悸がする、便秘の症状があり、緊張しやすい、興奮しやすい、驚きやすい、イライラしてなかなか寝つけない悩みに向きます。

【配合されている生薬】
柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、大黄(だいおう)、生姜(しょうきょう)

サプリメントは、成分と分量をチェックする

睡眠を改善するためのサプリメントも多くのメーカーから多種が販売されています。アミノ酸の一種であるグリシンGABA(ギャバ)、L-テアニンといった成分が含まれることが多く、これらはリラックス作用があるとされています。選ぶ際には表示を確認し、どの成分がどれだけ含まれているかを比較するとよいでしょう。

注意したいのは、サプリメントは医薬品ではなく、あくまで「加工された食品」であるということです。効能や効果を述べる、表示するなどはできません。「特定保健用食品」、「機能性表示食品」、「栄養機能食品」などと表示されているタイプがありますが、これらは効果を示したものではなく、制度上の呼称であることも知っておきましょう。

最後に近藤さんは、寝酒についてこうアドバイスをします。
「薬はいやだからと言ってお酒を飲んで寝ようとする人も多いのですが、お酒は睡眠の質を悪くすることが医学的に明らかになっています。寝酒の習慣がある人は改善しましょう。また、お酒で薬を飲むことは体に害があるため、絶対に避けてください」

ひとことでぐっすり眠れないと言っても、原因や改善の目標は一つではないようです。自分の体質を見つめ、自分に合うタイプの薬を選びとりたいものです。

取材・文  海野愛子/ユンブル

近藤氏
取材協力・監修
近藤直緒美氏。薬剤師。大阪府薬剤師会理事。なのはな薬局本店、真上(まかみ)店、ケアプランセンター(ともに大阪府高槻市)を運営する有限会社スターシップ代表取締役。
なのはな薬局:大阪府高槻市城北町1-4-18

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