≪医師監修≫ いつもしんどい……。漢方専門医に聞く、慢性的な疲労を改善する方法とは?

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仕事から帰るとぐったり、週末に旅行するとしんどいだけ、どうにも元気が湧いてこないなど、疲れがとれないと感じている人は多いのではないでしょうか。

漢方専門医で、消化器内視鏡専門医、また臨床内科専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長は、「疲労感やだるさに加えて、胃腸の不調や頭痛など複数の症状があるけれど、検査をしても異常が見られないと言う患者さんはとても増えています」と話します。日々の疲労感を自分でケアするにはどうすればいいのか、詳しく聞いてみました。

「気」と「血(けつ)」が不足している

――「いつもしんどい」とは辛いことだと思います。具体的にはどういった不調があるのでしょうか。

吉田医師 患者さんが訴えられる症状は、全身の疲労感が抜けず、胃が重い、便秘だ、頭痛がする、肩こりや腰痛がある、風邪をよくひくなど多様です。いつもではなく、調子がいいときと悪いときの波があって休みの日に疲れがどっと出るという人もいます。

――検査では器質的な異常がない場合、原因はどういったことが考えられるのでしょうか。

吉田医師 西洋医学の場合、疲労感や倦怠(けんたい)感は、睡眠不足や食生活の乱れなどの生活習慣や日頃のストレス、加齢や気候が影響して、自律神経のバランスが崩れた状態が続いていると考えられます。

また漢方医学では、健康を維持する「気・血・水(き・けつ・すい)」の3つの要素のいずれか、あるいは全部のめぐりが悪い、不足しているととらえます。疲れやだるさはとくに、生命活動のエネルギーとなる「気」と、「気」を支えて活性化する「血(けつ)」が関係します。

――漢方で言う「気」とは、元気の気でしょうか。

吉田医師 元気や陽気、気分などの「気」をイメージするとわかりやすいでしょう。漢方医学での「気」は、食事をして消化吸収する機能と、自律神経の機能を表します。

「気」の状態は、すべての内臓や組織に影響します。「気」が滞ると、「消化吸収の力が衰えて食欲がなくなる」、「胃が重い」、「便秘や下痢をする」、「それがもとで栄養不足になる」、また、自律神経の影響で「血圧の変動が大きくなる」、「めまいや立ちくらみがする」、「憂うつ」といった症状が表れることがあります。これが「疲れた」、「だるい」という感覚につながります。

――「血(けつ)」とは、どういった働きなのでしょうか。

吉田医師 血液と、血液に含まれる栄養素やホルモンを含めた水分以外の体液全体を指し、食事でとった栄養を全身に運ぶ機能を言います。西洋医学で言うと、心臓や呼吸器の循環器系とホルモンを分泌して生体の機能を調整する働きになります。

生活習慣を見直しつつ、自分に合った漢方薬を試す

――疲れやだるさを改善するには、どうすればいいのでしょうか。

吉田医師 生活において、バランスが崩れている要因はないかを一つずつ検証しましょう。例えば、次のことがらを自問自答してみてください。

  • ・栄養のバランスがとれた食事を1日3回とっているか。
  • ・大食いや早食いなどしていないか。
  • ・お酒を飲み過ぎていないか。
  • ・タバコを吸っていないか。
  • ・睡眠時間は不足していないか。
  • ・夜中に1回以上トイレに行く、目が覚めるなど、睡眠の質は悪くないか。
  • ・ストレスや悩み、不安なことはないか。
  • ・エアコンで冷え過ぎたり、乾燥し過ぎたりしていないか。

 
これらにひとつでも思い当たることがあれば、すぐに改善しましょう。

――疲れやだるさを薬で治すことはできますか。

吉田医師 検査で病変が見られない場合は、西洋医学ではビタミンなど栄養素の補給や安定剤、また、付随する症状ごとに、例えば便秘薬や胃薬、頭痛緩和のための鎮痛剤などを処方することが多いでしょう。

疲れやだるさの根本的な改善を目指すためには、漢方薬が適していることがあります。漢方薬は、原因がはっきりしない症状や、複数の症状がある場合、また、体と精神的な不調の両方にアプローチしたい場合に、血圧や体重、冷えの有無、気分の状態など患者さん特有の体質を考慮して処方します。

例えば、次のような漢方薬があり、これらは市販もされています。

・疲れやすくてだるさがある、胃腸の調子がよくない、食欲がない、風邪をひきやすい、体力がないといった人には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」

・それらの症状に加えて、冷え症、貧血気味の人には「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」

・体力がなくて冷え症で、胃痛や腹痛、下痢、吐き気がある人には「人参湯(にんじんとう)」

・虚弱体質で疲れやすく、神経が過敏、トイレが近い人には「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」

いずれの場合も、生活習慣を見直しながら、漢方薬で調整して体調を取り戻すと言う考えかた、方法が重要です。それを1カ月前後実践して体調を観察してください。ただし、多忙だからと言って、睡眠不足のまま漢方薬を服用しても改善されないので注意しましょう。

――疲れやだるさを放っておくとどうなるのでしょうか。

吉田医師 仕事や生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)が下がります。免疫力の低下や精神的不安定なども起こるでしょう。そうなる前に、疲れを自ら改善すると心に決めて、前向きに取り組むようにしましょう。

ただし、これらを1カ月ほど実践しても疲れが改善されない場合は、何らかの病気が隠れていることがあります。かかりつけ医などの医療機関を受診してください。

――ありがとうございました。

疲れやだるさといった感覚は、日ごろの忙しさにまぎれてつい放っておきがちです。胃腸の調子、冷えやめまい、貧血など自分の体質もよく見つめた上で適した方法と薬を探り、疲れにくい体を取り戻したいものです。

取材・文 藤井空/ユンブル

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取材協力・監修
吉田裕彦氏。 臨床内科専門医。消化器内視鏡専門医。漢方専門医。栄養指導医。大阪府内科医会理事。八尾市医師会副会長。医療法人朋侑(ほうゆう)会・吉田クリニック院長。

医療法人朋侑会・吉田クリニック:大阪府八尾市山本高安町2-1-3

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