《医師監修》固太り? ストレス太り? 水太り? 漢方専門医に聞く、太りすぎの原因を漢方医学でチェック ――前編

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「ちょっと食べすぎた」、「飲みすぎかも」、「疲れたなあ」と思っていると、すぐに体重が増えておなかに脂肪がつく、食事を減らしても運動をしても体重が落ちない……。そんな太りすぎの悩み改善法の一つに、漢方でのケアがあると聞きます。

臨床内科専門医で消化器内視鏡専門医、また漢方専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長に聞くと、「太りすぎの原因は人によって異なります。漢方ではまずは自分の体質や習慣を見つめて原因を追究し、自分に合った適切な方法、薬を探っていきます」と話します。具体的な対策について詳しく聞いてみました。

漢方医学では、個人の体質や症状を見定めていく

はじめに吉田医師は、「このごろ太ってきたな、とか、肥満だ、といった自覚は重要です。早めに対処しないと加齢とともに代謝が悪くなるため、どんどん減量は難しくなります。肥満は動脈硬化をまねいて糖尿病や脳卒中、心筋梗塞(こうそく)など重い病気につながります」と警告します。

では、肥満は病気なのでしょうか。肥満の定義や、病気に関する西洋医学での診断と漢方のとらえ方の違いについて、吉田医師はこう説明を続けます。

「まず肥満とは、『体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められるBMI(Body Mass Index)が25以上の場合』を言います。誰しもすぐに計算できるでしょう。

西洋医学の場合、肥満であることに加えて、肥満が原因となる糖尿病や高血圧、脂質異常症、痛風、骨・関節疾患や睡眠時無呼吸症候群などの健康障害が1つ以上あること、または内臓脂肪が過剰に蓄積して健康障害が予測される場合に『肥満症』という病気だと診断し、医学的な減量、治療を行います。

一方、漢方医学では、肥満にも多くの原因とタイプがあり、専門用語で『証』と呼ぶ個人の体重や体脂肪率も含めた体力や体質、症状、経過などを見定めていきます。たとえば、体力があってがっちりした体格で血圧が高めなどのタイプを『実証』、体力があまりなくてやせ型で冷え気味などは『虚証』、その間や両方を合わせ持つと『中間証』とします。

そして体を構成する要素を『気・血(けつ)・水(すい)』ととらえ、肥満や肥満症で悩む場合を含めて多くの症状には、そのいずれか、あるいは全部の滞りの状態や、関連する内臓の作用と体全体の機能のバランスを診ていきます」

西洋医学では客観的な検査値などをもとに、漢方医学では数値化されない個人の状況からも症状を見極めていくようです。また吉田医師は肥満について、

「治療の現場では現実として、肥満の人のほとんどは何らかの病気を合併していて、肥満症に該当します。つまり、肥満の場合は肥満症という病気である可能性が極めて高いと言えます」と、注意を促します。

「気・血(けつ)・水(すい)」が過剰か不足かを診る

では、「気・血(けつ)・水(すい)」とはどういうものでしょうか。吉田医師は、「日常で使う『血(ち)』や『水(みず)』などの言葉のイメージとは異なります。漢方での解釈を理解しておくと、ケア法や漢方薬を選ぶ際にも役に立つでしょう」と、次のように説明します。

「気」……気分や気合、気力といった言葉から連想するように、生体としての活動のエネルギーを意味します。西洋医学的には、生命活動の基本である食べることと、消化吸収、自律神経の機能にあたります。

「血(けつ)」……生命活動を活発にする要素で、血液とホルモンなど体液の総称です。血管や心臓の循環器系やホルモン系の機能にあたります。

「水(すい)」……生命活動を外敵から守るための栄養と潤いを全身に与える水分とリンパ液の総称です。免疫系の機能にあたります。

「そして、肥満症の原因は、個人の体質や症状による『証』と、『気・血(けつ)・水(すい)』のどれかが過剰か不足なのかなどから探っていきます」と吉田医師。

「固太り」は食べすぎで「血(けつ)」が過剰な状態

ではここで、漢方でいう肥満の原因、症状について、具体的に教えてもらいましょう。

吉田医師は、「食べたものを栄養として消化吸収する率やエネルギーに変える率が個人の活動に見合っていれば、肥満にはなりません」と言い、まずは、「多くの肥満のタイプの中でも特に、肥満症の可能性が高い『固太り』について見ていきましょう」と、次のように整理して解説します。

<固太り 体格はがっちりで、おなかが固く出っ張っている>

原因:食べすぎ飲みすぎでカロリーを過剰に摂取し、「血(けつ)」の成分が多くなって血管や組織に糖や老廃物が溜まり、めぐりが滞っていること。血液がドロドロして動脈硬化を起こしている人は多く、糖尿病、脳卒中、心臓病の危険がある太り方です。

証:体力があって声が大きく、一見活力がある「実証」で、中年男性や元スポーツマンに多い。

特徴:脂肪が内臓にからみつく「内臓脂肪」が蓄積しているため、おなかの肉はつまめずに固く、たたくとポンポンと音がする、いわゆる「太鼓腹」

油っこい、味付けが濃い食べ物を好み食欲おう盛、お酒もよく飲むために胃腸の働きが活発になって熱を持っています。漢方ではこれを「胃熱」とも言い、過剰な食欲が止まらない状態と言えます。そのため冬でも冷たいドリンクを好むことがあるでしょう。

伴う症状:便秘気味、血圧が高め、コレステロールや血糖が過多、動悸(どうき)、のぼせ、汗の量が多い、むくみ、頭痛、肩こり、湿疹・皮膚(ふ)炎、吹き出もの、副鼻腔(ふくびくう)炎、肥満症など。

セルフケア法:漢方では、カロリー過多の分を減量すると、体重だけではなく、「気・血(けつ)・水(すい)」の機能のバランスが整って好循環になると考えます。

まずはリバウンドに注意しながら、少しずつあっさりした味付けの食事に慣れるようにしてください。お酒は1日に中ビン1本、ワインならグラス1杯までにして、カロリーコントロールを習慣としましょう。また、1日20~30分程度の軽いウオーキングを継続して代謝アップを試みてください。

向いている漢方薬:肥満症の内臓の熱や不要物を排除するように働き、便秘を改善、脂肪を分解燃焼する「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」になります。なお、この薬は「皮下脂肪」にも有用です。

固太りについて吉田医師は、
「まずは多くの病気を合併する可能性が高いことを認識しましょう。そして、食事と運動など生活習慣を早急に見直しましょう。ご紹介した症状が強い場合は、漢方薬をまずは2週間から1か月ほど試して体調を見てください」とアドバイスを加えます。

肥満症はさまざまな病気につながる想像以上に危険な状態であることと、その場合に体では何が起こっているのか、その原因と、「固太り」の特徴や対策が分かりました。後編では、女性に多い「血(けつ)」の不足による停滞が原因の「冷え太り」、また、「気」が原因の「ストレス太り」、「水(すい)」が原因の「水太り」などについて見ていきます。

取材・文 藤井空/ユンブル

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取材協力・監修
吉田裕彦氏。 臨床内科専門医。消化器内視鏡専門医。漢方専門医。糖尿病療養指導医。大阪府内科医会理事。八尾市医師会副会長。医療法人朋侑(ほうゆう)会・吉田クリニック院長。

医療法人朋侑会・吉田クリニック:大阪府八尾市山本高安町2-1-3

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