《医師監修》悪玉が多いとどうなる? 臨床内科専門医に聞く、コレステロールの謎

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「ノンコレステロール」と表示された食材を目にする機会が増えました。ダイエットや健康維持を考えるときに、「コレステロールは悪者」というイメージがありますが、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、「そうではありません。細胞膜やホルモンなどの栄養分となる『脂質』の1つです。ただし、体内で増えすぎると血管の壁に蓄積し、動脈硬化(こうか)の原因となります」と話します。さまざまに湧く疑問を解消するため、詳しく聞いてみました。

悪玉の過剰、善玉の不足が脂質プラークを破る

(1)コレステロールには、善玉と悪玉があると聞きます。どう違うのでしょうか?

正木医師 コレステロールの多くは肝臓で糖や脂肪から作られて、血管を通じて全身の組織や細胞に運ばれます。悪玉と呼ばれるのは「LDLコレステロール」です。これが血液中で過剰に増えると血管の壁に入り込んで溜まるため、動脈硬化の原因になります。LDLは血液中には少ない方がいいわけです。

善玉とは、「HDLコレステロール」のことです。小腸で作られ、硬くなった血管から余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶため、動脈硬化の進行を防ぎます。血液中には多い方がいいものです。

血液検査で、LDLコレステロールの値が高すぎる、また、HDLコレステロールの値が低すぎると血中の脂質の状態が異常とされ、「脂質異常症」という病気と診断されることがあります。動脈硬化が進んでいると考えられます。

(2)悪玉コレステロールの数値が高くなると、体はどうなるのですか?

正木医師 蓄積した悪玉コレステロールを異物とみなして免疫細胞がこれを取り込み、軟らかく破れやすい「脂質プラーク」と呼ばれるこぶを作ります。これが破れると、修復するためにやがて血栓(血のかたまり)ができます。
 
この血栓で血管が詰まる、また血液の流れが止まると、狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患、また脳梗塞や頭蓋(ずがい)内出血などの脳血管障害など命に関わる病気につながります

(3)コレステロールの数値が高いとき、何か自覚症状は現れますか?

正木医師 いいえ、自覚症状はありません。また、動脈硬化にも自覚症状はありません。動脈硬化が、「静かなる殺し屋(サイレン卜・キラー)」と呼ばれているのはこのためで、これが怖いのです。

コレステロールの数値の異常は血液検査をしなければ分からないので、突然、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞が起こって苦しみ、はじめて明らかになるケースが多くあります。

(4)「卵は1日1個まで」と言われます。本当でしょうか?

正木医師 以前は言われていましたが、コレステロールの多くは体内で合成されて体の多くの機能の影響を受けるため、食事で摂取したコレステロールが血液中のコレステロールの量にそのまま反映されるとは限らない、個人差も大きいことから、こうした摂取制限の提唱は撤回されました

ただし、どれだけ食べても問題がないというわけではなく、食べすぎれば当然、カロリーオーバーにもなります。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の患者さんや、喫煙者、LDLコレステロール値が高い人は動脈硬化が進みやすいので、食生活にはくれぐれも注意をしましょう。

(5)中性脂肪とコレステロールはどう違うのでしょうか?

正木医師 よく混乱されるのですが、別の物質です。中性脂肪とは、肉や魚、食品中の脂質や体脂肪の大部分を占める物質です。脂肪細胞の中に蓄えられていて、必要に応じて、私たちが活動するためのエネルギーとして使われる、不可欠なものです。取りすぎると体脂肪として蓄えられて、メタボリック・シンドロームや肥満につながります。

コレステロールも脂肪の一種ですが、エネルギー源にはなりません。細胞膜やホルモンの材料として使われます。

(6)お酒を飲むと善玉コレステロールが増えると聞きました。本当ですか?

正木医師 アルコール摂取量が増えるとHDLコレステロールは増加しますが、その適量があります。例えば、男性は純アルコールで20グラムまで、ビールに換算して大瓶1本、日本酒1合まで、女性は10グラムまでであれば、血圧を上げずにHDLコレステロールが増加するとされています。

ただし、これを超えて飲む量が増えると、血圧の上昇やカロリーオーバーなど、かえって生活習慣病のリスクが高まります。特に、生活習慣病がある人や喫煙者は、こういった情報だけを信じ込んでお酒をたくさん飲むといったことは避けてください。

コレステロールの意味、引き起こす病気、中性脂肪との違い、食事やお酒との関係など、日ごろから疑問に思っていた謎が解けました。正しい知識を得て、できるだけしなやかな血管のキープを意識したいものです。

取材・文 岩田なつき/ユンブル

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取材協力・監修
正木初美氏。日本臨床内科医会専門医、大阪府内科医会理事、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本医師会認定産業医、正木クリニック院長。内科、リハビリテーション科とともに、更年期外来、禁煙外来、漢方治療を行っている。
正木クリニック 大阪府大阪市生野区桃谷2-18-9

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