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《医師監修》うつ、睡眠障害、疲労…。「男性の更年期障害」を改善するには?

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2017年10月8日・9日の2日間にわたり、日本臨床内科医会による第31回学会が大阪で開催されました。主催は大阪府内科医会(会長・福田正博医師。事務局・大阪市中央区)で、参加の医師や医療関係者は1800名超と、これまでの同医学会で最高の参加者を集める規模の実施となりました。

また、大阪府内科医会の会長の福田正博医師、副会長の泉岡利於医師、理事の野崎京子医師、正木初美医師、吉田裕彦医師らは、当サイト『これカラダ!』の特集において、これまでに複数の記事をご監修いただいています。そこで同医学会に取材をさせていただき、当サイトの読者の皆様にとって興味深いと思われるいくつかの講演をレポートします。


なお、講演は医学会という場で医師を対象としているため、当記事は、専門的な知見をわかりやすく講演者の先生方に改めてご監修いただいたうえでご紹介します。

第31回 日本臨床内科医学会 レポート 01
石蔵文信医師 大阪大学 人間科学研究科 招へい教授

更年期障害というと、これまで、中年期の女性に特有の女性ホルモンの減少による諸症状とばかり言われてきましたが、近ごろ、男性にも同様の不調があることが注目されています。いったいどのような状態で、ケアや治療にはどういったことが実践されているのか、また、女性のそれとの違いはあるのでしょうか。2001年から男性更年期障害の外来診療を実践されている石蔵文信医師による講演「男性更年期障害の現状と展望」(2017年10月8日開催)をレポートします。本文は、石蔵医師によるお話しです。

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「第31回日本臨床内科医学会」で講演する石蔵文信医師

働き盛りの男性に、うつ病・うつ状態が関与

男性の更年期障害の多くは、うつ病・うつ状態が関与していると言えます。当院のデータでは「初診時にうつ病が約半分、精神科に受診していた人も半分なので、実に約7割の人がうつ病やうつ状態」であるため、私はホルモン療法をせずに、カウンセリングと抗うつ薬での治療を行っています。

男性はテストステロンという男性ホルモンを持っていますが、更年期障害の原因は女性とは違って、ホルモンの減少が主な原因ではないと考えています。

当院の患者さんの症状を挙げますと。多くは抑うつ、不安、睡眠障害、疲れやすい、動悸(どうき)、めまい、下痢、頭痛、耳鳴り、肩こり、腰痛、ED(勃起障害)などが3年ぐらい続くこと。また、ひどくなると自殺念慮(ねんりょ)に注意が必要になります。

50代前半のこういう患者さんがいらっしゃいました。「3年前からふらつきや耳鳴りがあるため耳鼻科を受診したが異常なし、突然の胸痛や血圧上昇で複数回の救急受診をして心電図やMRIの検査をしたけれど異常なし、どの病院でもどこも悪くはないと言われた。病院に行くのが怖い、自殺も考えた」ととてもつらそうにおっしゃいます。話しをじっくりお聞きし、うつ状態からの男性更年期障害の症状であることを伝えると、「初めて診断名がついた」と、涙ながらに安堵の様子を見せられました。そして抗うつ薬を処方すると、3日で症状が軽快したのです。

抗うつ薬の効能が出るには一般に10日~2週間ですので、3日で軽快したとなると薬の効用ではなく、「原因が分かった」という精神的な安心感からだと考えられます。

男性ホルモンと更年期障害、うつ病の関係とは

最近の自殺者数の推移は、厚生労働省が発表するデータを見ると、平成10年ごろから急増して男性が女性の2倍という数字になっています。社会的に大変な問題を内包しているという結果でしょう。

当院の受診者の内訳は、「年齢が51.8±10.6歳(27~83歳)、主訴は更年期症状が約80%・EDが約20%」です。テストステロンの量(血液検査などで判定される)と、EDやうつ病の指標とは関係が認められませんが、うつ状態でテストステロンが低下することは、多くの研究データから明らかです。

つまり、「男性ホルモンの量は更年期障害の原因ではないけれど、治療の効果を判定することはできる」ということになります。

また、うつ病の患者さんが男性ホルモンの数値が低いのは、慢性のストレスで脳にある視床下部が打撃を受けて、分泌に影響するからと考えられます。

男性更年期障害について、「泌尿器科では男性ホルモンの低下・勃起機能の低下に対してホルモン補充療法」、「心療内科はうつ病・不安症・夫婦関係の変化・社会環境の変化に対して薬物療法・心理療法」としてとらえています。

男性更年期は、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の起きる時期と重なりますが、実際のところ、生活習慣病を診療する内科は男性更年期障害にはあまり関心を持たれてないようです。

治療には、夫婦でカウンセリングを実施


石蔵医師はかねてから著書などで、「夫源病(ふげんびょう)」と呼ぶ「夫の言動や存在がストレスとなり、妻の心身に現れる不調」について、提言しています。「夫源病」は石蔵医師による造語で、医学的な病名ではありません。講演の後半は、夫婦関係における更年期の状態、対処法について話題が展開していきます。

当院では、男性更年期障害の患者さんの場合は、夫婦でのカウンセリングを行っています。妻も更年期障害であることがとても多く、「夫婦のケンカは1回5分で1日3回、1年で50時間している」というデータもあり、夫婦でうつ状態になることを避ける目的があります。

妻には「夫源病」ではないかと伝えてカウンセリングをし、抗うつ薬や安定剤を処方すると3カ月ほどで不調が軽減します。一方で夫は、徐々に仕事をセーブして家庭中心の生活を送るように指導しながらの治療で、抗うつ薬を処方して1~2年で改善に向かいます。治療効果は女性のほうがかなり速く現れると言えます。

妻の「夫源病」、夫の更年期障害には、夫が自立することが重要


石蔵医師は、妻の「夫源病」の対策に、男性が料理をすることを提案し、『男のええ加減料理 60歳からの超入門書』(講談社)という著書を出されています。

雑誌『婦人公論』の「夫を捨てたい妻たちの本音」という記事では、「50代夫婦の仮面夫婦期間は12年に及び、夫への愛情がない妻は71.2%」とありました。そして、夫のどこが嫌なのかと言うと、「暴言、偉そう、金銭感覚が合わない」となり、離婚を踏みとどまる理由には「経済的理由、子どもに父親が必要、離婚は面倒」と続きます。

また、「60歳以上の女性は夫がいると死亡リスクが2倍、男性は妻がいると死亡リスクが0.46倍」というデータがあります。妻にとって夫はストレスの原因であり、夫にとって妻は長生きの原因であるということが読み取れます。治療の現場で私は、妻は夫の定年後に「夫源病」、夫は「「定年うつ」(病名ではありません)が多いと実感しています。

こういった現実から、夫は妻に日常生活のことを依存せずに自立することが、夫と妻ともに更年期障害の治療になると考えます。男性更年期障害の改善には行動療法が重要ということもあって、私は中高年男性のための料理教室を実践しています。

これには、妻は定年後の夫の昼食を毎日作らねばならない「昼食うつ」(病名ではありません)と呼べる人が多い現実が背景にあります。また、夫が料理をするようになると夫婦の会話が成立しやすくなるでしょう。食事は毎日3度もあるため、夫は掃除や洗濯よりも、料理とその後片付けをすることが、自分の更年期障害と妻の「夫源病」を軽快するにあたって良い方法と言えるのです。

男性更年期障害の改善のカギは夫婦関係

私の場合、患者さんに携帯の番号を伝えてありますが、ほとんどかかってきません。患者さんからすると、伝えておくことで不安障害が楽になられるようで、治療効果が高いと考えています。

それに、こちらから3日に1回ぐらい電話をして、睡眠の状況や現在の状態を聞いています。うつ病の人は診察で言いたいことを言えていない場合が多いからです。その際、患者さんから質問があるのは、主に薬の副作用についてです。

また、私は料理教室のほかに、メタボリック・シンドローム対策にもなる「自転車をこいで発電する運動」の普及活動(日本「原始力」発電所協会)を主宰しています。こういった活動を実践し、夫婦関係がよくなって、抗うつ薬をうまく活用していただくと、時間はかかっても男性更年期障害の症状の多くは改善するでしょう。


一般には、男性でも更年期障害と言えば、加齢によって男性ホルモンの量が減ることが原因だと思われがちですが、石蔵医師は、「実はうつ病が根底にあると考えている」ということです。女性の更年期障害の原因との違いや、「夫源病」、「男性の自立」、「定年うつ」、「昼食うつ」などのキーワードとともに、問題点や治療法が順序立てて明解に示されました。また、「男性の更年期障害を放っておくと『介護うつ』に発展して大変な事態になっていく」(石蔵医師)とも提言され、日本の未来像がリアルに浮かぶ場面もありました。この病気は、医療界のみならず、社会全体で対処するべき問題であると理解を深めることができた次第です。

取材・文 阪河朝美/ユンブル  撮影/林信哉
協力/一般社団法人 大阪府内科医会

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石蔵文信氏:大阪大学人間科学研究科招へい教授。内科専門医。循環器専門医。一般医―精神科医(G・P)ネットワーク、日本「原始力」発電所協会代表。吹田市及び相生市男女参画審議会委員・会長。

三重大学医学部卒業後、国立循環器病研究センター、大阪警察病院などを経て米国メイヨークリニックに留学。2001年より「男性更年期外来」を開設。『夫源病』(大阪大学出版会)、『とまどう男たち―生き方編』 (阪大リーブル)、『なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか』(幻冬舎新書)など著書多数。テレビ、講演会、執筆などメディアでも活躍中。

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↑『なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか』
(石蔵文信/幻冬舎新書)

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『男のええ加減料理』(石蔵文信/講談社)
※シリーズで3冊刊行されています

第31回 日本臨床内科医学会 レポート 02 大平哲也医師による「よく笑う人は長生き。笑いは健康によい影響を与えるか!?」はこちら

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