≪医師監修≫よく笑う人は長生き。笑いは健康によい影響を与えるか!?

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2017年10月8日・9日に大阪で開催された医学会(医師と医療関係者が参加)のレポート第2弾です。第1弾の≪医師監修≫うつ、睡眠障害、疲労…。「男性の更年期障害」を改善するには?の記事に、当サイトへ掲載させていただく経緯をご紹介しています。

第31回 日本臨床内科医学会 レポート 02
大平哲也医師 福島県立医科大学 医学部疫学講座 主任教授


「笑いが健康に良い影響を及ぼす」ということは古来、よく言われてきましたが、大平医師はずばり、「笑いは病気の予防、治療、健康増進に関係するか」について研究を進めておられます。本講演では、「笑い」が糖尿病をはじめとする生活習慣病や認知症の予防、改善にどう影響するかについて、「よく笑う人は長生きか?」、「金持ちはよく笑うか?」といった興味深い多様な研究データを紹介しながら、ストレスホルモンの減少が実証されつつある「笑いヨガ」の実践まで、終始会場の笑いが絶えない中で展開されました。


「私は『笑いと病気の関係』について研究をしていますが、『お笑い』ではありません。『お』がつくと違うものになります」との自己紹介でスタート、さっそく笑いを呼んだ大平医師による「笑いと医学」(演題)をレポートします。本文は、大平医師によるお話しです。

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「第31回日本臨床内科医学会」で講演する大平哲也医師

笑いは感情ではなく行動

まず、「笑いとはなにか」を考えてみましょう。実は、面白いと思う段階はまだ笑いではありません。声が出て初めて笑いになります。つまり、笑いは感情ではなく行動であり、「アハハハ」という発声と表情や手足の筋肉運動など体の動作の2つから成り立っています。とくに、笑い声はほかの動物では見られない、ヒトに特徴的な要因のひとつになります。

ヒトは生後8~10カ月ごろから笑うようになりますが、笑いの形成には環境が大きく影響すると考えられています。「男性と女性ではどちらがよく笑うのか」、「若者と中年ではどうか」、「笑いで病気は改善するのか」など、笑いに関する疑問は多く、我々研究グループは、年代別や職業別、地域別、また生活習慣別などによる調査を行っています。

加齢とともに笑いの頻度は減ってくる

その結果を一部紹介しますと、「アハハハの笑い方の速度は、加齢とともに遅くなる」、「女性と男性では、女性のほうがよく笑う」、「働いている人と働いていない人では、働いている人のほうがよく笑う」、「配偶者がいる人といない人では、いる人のほうがよく笑う」、「若い人と中年世代では、若い人のほうがよく笑う」、「収入が多い人ほどよく笑い、30年後に社会的に成功している人が多い。笑っていると金持ちになる確率が高いと言える」などが明らかになっています。

また、「加齢とともに笑いの頻度は減ってくる」、「よく笑う人は長生き」といった結果もあります。それはどうしてなのか、ストレスとの関係か、と考えて分析すると、「ストレスは40代が最も多いが、笑いは50代以上も減ってくる」といった結果があり、ストレスだけが笑いと関係しているわけではないことがわかりました。

ではいったいなぜ、笑いと加齢や長生きが関係しているのでしょうか。結論から言って、その要因は、老化現象認知機能にありました。

笑いが減ることは認知機能の衰え

笑いと老化現象、認知機能について見てみましょう。「ほぼ毎日笑っている人に比べて、笑っていない人の認知機能は衰えている」という結果があります。笑いは一瞬で理解して瞬間的に反応する行動であるため、高度な認知機能だと言えるのです。つまり笑いは、加齢現象、認知機能の程度を表すひとつの指標になると考えています。

また、病気との関連では、「笑いで痛みが低減する」、「NK(ナチュラルキラー)細胞(悪性に変化した細胞やウィルスを退治するリンパ球の一種)の活性が上昇する」、「アレルギー反応が低減する」、「血管拡張能が増加する」、「ほぼ毎日笑う人は、ほとんど笑わない人に比べて、脳卒中、虚血性心疾患とも少ない」といった調査結果が出ています。免疫機能を活性化する、また、アレルギーや動脈硬化の対策の役割があると考えられます。

さらに、糖尿病との関係を調査したところ、「糖尿病患者19名(平均63.4歳)に糖尿病の講義を40分、翌日は漫才を40分聞いてから血糖値を計測して比べた。前者は血糖値が急上昇、後者はあまり上がらなかった。笑っていない人ほど糖尿病が多い」こともわかりました。

面白くなくても笑うとストレスホルモンが減少する

次に、落語による笑いのストレス解消への影響について、ストレスホルモンである唾液中のコルチゾール値の変化で検討したところ、「普段落語を聴く機会が多い人、普段から笑う頻度が多い人は、コルチゾール値がより低下する傾向」が見られました。

また、近年、笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせた「笑いヨガ(laughter yoga)」で笑うことによって、落語と同等以上に唾液中のコルチゾール値が低下することがわかってきました。「笑いヨガ」とは、落語のように、何か面白いネタや話を聞いて笑うのではなく、「笑いという運動」をする行動です。エクサイズとして、「アッハッハ」と発声をして表情をゆるめ、体を使って笑うようにします。

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「笑いヨガ」を実践する大平医師と聴講の医師たち

この笑うエクササイズでストレスホルモンが減少するということは、面白くて笑っていても、面白くなくて笑っていても、血圧や自律神経の状態など体に与える影響は同じと言えるわけです。手拍子をする、笑いながらゆれる、リズム手拍子を打つなどで健康によいという効能は認められています。何をもって笑うかが問題ではなく、笑うことそのものの行動が重要なのです。

さらに、多方面からリクエストが多い、「笑いとダイエットの関係」も検証しています。「100回の笑いは15分間のエアロバイクに相当する。1日15分間笑えば約40キロカロリーを消費」との計算ができました。笑いでダイエットは可能だと考えています。

これらの結果から、笑いは認知症や生活習慣病の予防、メンタルヘルスがより多面的に行える可能性があると言えるでしょう。ぜひ、毎日ひとりでも笑う運動を実践しましょう。


講演の途中、会場をあげて「笑いヨガ」が実践され、筆者の周囲で聴講されていた医師たちから、「なるほど、体が楽になる」、「気分が軽やかになる」、「自律神経のバランス調整にいいのでは」といった声が次々と聞こえてきました。面白いことがなくても、無理にでも「笑うという行動」をとると、唾液中のストレスホルモンが減少する、つまり健康に良いということは社会にとってかなり有用な情報でしょう。さっそく、笑う行動、笑う時間を増やす生活習慣を意識したいものです。

取材・文 阪河朝美/ユンブル  撮影/町田緑 高橋瑞樹
協力/一般社団法人 大阪府内科医会

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大平哲也氏:福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授。福島県立医科大学健康増進センター センター長。放射線医学県民健康管理センター健康調査支援部門 部門長。大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 招へい教授。日本笑い学会理事。大阪府立健康科学センター主幹兼医長、ミネソタ大学疫学・社会健康医学部門研究員、大阪大学医学系研究科准教授を経て現職。専門は疫学、公衆衛生学、予防医学、内科学、心身医学。生活習慣病、認知症などの身体・心理的リスクフアクターの研究、心理的健康と生活習慣との関連についての研究、及び運動、音楽、笑いをはじめとするストレス解消法についての実践的研究を行っている。テレビやラジオの番組に多数出演し、笑いと健康について訴求している。

第31回 日本臨床内科医学会 レポート 01 石蔵文信医師による「うつ、睡眠障害、疲労……。『男性の更年期障害』を改善するには?」はこちら

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