《医師監修》糖尿病専門医に聞く。「血糖値スパイク」とは何? どうすれば防げる?

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中年太りで出っぱったおなかをさすりながら、近ごろよく耳にするようになった「血糖値スパイク」という言葉を気にする人は多いのではないでしょうか。糖尿病専門医で臨床内科専門医でもある福田正博医師に尋ねると、「健康診断で『空腹時の血糖値は正常』とされたにも関わらず、実は食後に急に血糖値が上昇することがあります。これが『血糖値スパイク』で、自覚がないままに血管や脳にダメージを重ねる厄介な症状です」ということです。その正体と危険性や対策について詳しいお話しを聞きました。

検査での血糖値は正常なのに、食後に急上昇している

――「血糖値スパイク」とは、どのような現象なのでしょうか

福田医師 スパイクとは急にはね上がるという意味で、食後に血糖値が急にピューンと上昇し、やがて正常値に戻る「食後高血糖」の現象を「血糖値スパイク」と呼びます。糖尿病専門医の間では以前から指摘されていた症状です。

健康診断では通常、おなかが空いた状態で血糖値を測定(空腹時血糖値)することが多く、このときには異常が見つからず、また無自覚であっても、「血糖値スパイク」が生じている可能性があります。「かくれ糖尿病」とも言われます。

潜在的な患者数は約1,400万人にのぼると推定され、20代のやせ型の女性にもみられるとの報告もあります。「血糖値スパイク」とは、糖尿病ではない老若男女の誰にでも起こりうる症状だと考えられています。

健康なつもりが、心筋梗塞、脳梗塞、がん、認知症、糖尿病に!?

――急上昇しても、後に正常値に戻るとのことですが、何が問題なのでしょうか

福田医師 血糖値とは、血液中の糖分の濃度のことです。これが短時間のうちに急上昇と降下をくり返すと、血管にとっては大きなストレスとなります。

血管の内壁の細胞は、高濃度の糖分と低濃度の糖分に交互にさらされると、活性酸素が大量に発生します。すると、酸化ストレスによるダメージを受けるため、血管の内壁が硬くなって動脈硬化が進みます。しなやかさが失われた血管は血流が滞りやすく、心筋梗塞(こうそく)脳梗塞など重篤(じゅうとく)な病気になるリスクが高まります。

――「血糖値スパイク」は、がん、認知症の発症にもつながると聞きますが、どうなのでしょうか

福田医師 その危険性も強調されています。食事をして糖が血液中に増えると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、糖を臓器の細胞にとり込んでエネルギーとして燃焼させるために必要不可欠なホルモンです。

食事によって糖が血液中に急に流れ込んでくるとインスリンが大量に分泌されますが、それでもこのインスリンの分泌が追いつかない、また働きが悪いと、血糖を抑え込むことができずに「血糖値スパイク」が生じます。

「血糖値スパイク」が続くと、インスリンの分泌量や働き具合の関係、また、酸化ストレスや炎症、糖を燃焼したときにできる有害な物質の「終末糖化産物(AGE)」などの影響が脳にも及びます。すると、脳で認知症の原因物質とされるアミロイドβ(ベータ)の蓄積が進んで、記憶力の低下や認知症のリスクが高まるという研究報告があります。また、インスリンは細胞を増殖させるため、がん細胞をも増やすことが指摘されています。

――「血糖値スパイク」とは血糖値が正常の人の症状ということですが、糖尿病やメタボリック・シンドローム(以下、メタボ)をまねくことはないのでしょうか

福田医師 高血糖になる症状ですから、もちろんあります。インスリンは過剰に分泌されると、燃焼しきれなかった糖を脂肪に変えて蓄えるように働きます。すると太りやすくなってメタボや肥満症、糖尿病を発症する可能性は高まります。「血糖値スパイク」は糖尿病予備群の症状と言えます。

このように「血糖値スパイク」は、血管や脳神経の老化のスピードを速め、命に関わるさまざまな病気を引き起こすと考えられます。見方をかえれば、血糖値スパイクの改善はアンチエイジングにつながると言えるでしょう。

「食べる順番」、「食後20分~2時間の間に運動」で予防する

――血糖値スパイクを防ぐために、自分でできることはありますか

福田医師 血糖値の「急激」な上昇を避け、ゆるやかにする方法をとりましょう。まず、食事のときには食べる順番と食べるタイミングに注意してください。

食べる順番の方法は浸透しているようですが、実際に患者さんに聞くと、なかなか実践されていない側面があります。始めに、食物繊維が豊富な野菜や海草類、きのこ類から食べます。そうすることで血糖値の上昇がゆるやかになります。そのあと、魚、肉、豆類などのタンパク質を、最後にごはんやパン、めん類などの炭水化物の順で食べましょう。

さらに、長時間空腹な状態にならないように、1日3食を規則正しい時間にとることも重要です。朝食抜きや1日1食だけ、また遅い時間の夕食は早食いやドカ食いになりがちで、「血糖値スパイク」をまねきます。残業などで食事と食事の時間があくときは、おにぎり1個やバナナ1本など、低カロリーで腹もちがよい間食をうまくとり入れてください。

ただし、順番やタイミングをいくら守っても、食べすぎや飲みすぎ、ドカ食い、早食い、脂っこいものばかり食べる、甘いジュースや清涼飲料水をたくさん飲むのは禁物です。明らかに血糖が急増します。

――食事以外ではどのような対策法がありますか

福田医師 食後に軽い運動をしましょう。血糖値がもっとも高い時間帯は、食後20分から2時間の間です。この時間内にウォーキングなどの軽い有酸素運動をすると、血液中の糖分が燃焼されやすく、上昇した血糖値がもとに戻りやすくなります

通勤時やオフィス、買い物ではエスカレーターではなく階段を使う、仕事中のランチなら、ちょっと離れた場所へ歩いて出かける、別のフロアのトイレを使う、こきざみに足踏みをするなどの方法でも運動になります。

デスクワークや自宅でテレビの前で座ったままというのはよくありません。立ち上がる動作だけでも心がけるようにしましょう。

――血糖値スパイクの現象と危険性がよくわかりました。ありがとうございました。

血液検査では異常がなくて自分は健康だと思い込んでいても、実は食後に高血糖になって重大な病気をまねいているかも……。ドキッとする話しです。日ごろから糖分のとりかたに注意を向け、食後すぐに体を動かす習慣を身につけようということです。そう難しいことではないので、毎日の工夫を積み重ねて、「脱血糖値スパイク」を目指したいものです。

取材・文 ふくいみちこ×ユンブル

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福田先生
取材協力・監修
福田正博氏。医学博士。糖尿病専門医。臨床内科専門医。大阪府内科医会会長。日本臨床内科医会副会長。医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。著書に、『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)、『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』、『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)など多数。名医として知られる存在で、分かりやすく面白い講演でも定評がある。
医療法人弘正会 ふくだ内科クリニック

糖尿病は自分で治す!
↑福田正博医師の最新刊『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)

kenkousyoku
↑『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』(福田正博 アスキー新書)

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