《医師監修》糖尿病専門医が教える。「隠れ肥満」に最大注意!

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特別に太っているわけでもないのに、健康診断を受けたところ、「糖尿病」と診断されてしまった、という声を聞くことがあります。見た目はわりとスリムだし甘いものが好きなわけでもない、なのに……と納得できないようです。

糖尿病専門医、臨床内科専門医でふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博院長は、「一見スリムでも実は肥満と言える体型の人がいます。しかも、そうした人たちは糖尿病などの治療の現場では最も注意が必要なタイプでもあります」と警鐘を鳴らします。それはなぜなのでしょうか。詳しく聞いてみました。

危険1 やせて見えるのにおなかぽっこり!

私たちはさまざまな理由から「太っている」、「やせている」を判断して一喜一憂していますが、「肥満」かどうかには、医学的に明確な基準があります。「それがBMI(Body Mass Index)という体格指数です」と話す福田医師は、次のように説明をします。

「BMIとは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出する数値です。日本肥満学会の定義ではBMIが22を標準体重としていますが、この体格は統計上、最も死亡率が低い、病気になりにくいことで知られています。また、肥満とは、BMIが25以上を言いますが、日本人では23.5を超えると糖尿病になりやすいという研究報告があります」

では「一見スリムでも実は危険な体型」とは、どういったことを言うのでしょうか。
「体内にどのくらいの脂肪がついているかを示す体脂肪率にも注目してください。男性は20%、女性は30%以上だと肥満と判定します。BMIが25未満であっても、体脂肪率がこれらだと『隠れ肥満』と言えます。

このタイプの人は、手足はわりと細長く、座っていると太って見えないのですが、おなかはかなり出ていることが多いのです。立ち上がるとおなかがぽっこりと張っていることがわかる体型で、中年世代に増えてきます。『隠れ肥満』の場合も肥満と同様に、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になりやすい体型であることを理解してください」と福田医師。

BMIだけで自分の体型を判断すると危険だということです。

危険2 内臓脂肪から悪玉ホルモンが分泌されて病気をまねく!

次に福田医師は、体脂肪について説明を続けます。

「体脂肪には、おなかや腰、ふともも、おしりについてつまみやすい皮下脂肪と、おなかの内部、腸間膜についてつまみにくい内臓脂肪があります。皮下脂肪は女性に多く、内臓脂肪は男性に多いものです。

生活習慣病にとって問題となるのは、内臓脂肪の方です。内臓脂肪が溜まっているおなかは、たたくとポンポンと音がする、いわゆる太鼓腹という特徴がありますが、その内臓脂肪からは、『アディポサイトカイン』という悪玉ホルモンが分泌されているのです。このホルモンは、すい臓から分泌されて血糖を抑える『インスリン』の働きを弱くし、また動脈硬化をまねいて血栓(けっせん)をつくるなど、健康に悪影響を及ぼします。そうして、生活習慣病のリスクを高くするのです」

メタボリック・シンドローム(以下メタボ)ということでしょうか。福田医師は、メタボの診断基準についてこう解説を加えます。

腹囲(へそ周り)が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上あるとメタボリック・シンドロームの要因の一つになります。メタボとは、おなか周りのサイズのほかに、高血糖・高血圧・脂質異常のうち2項目以上が重なった場合に診断されます。全体に太っていなくてもおなかが出ている人は、この心配があるということです」

つまり、健康でいるには内臓脂肪がつかないようにしようということです。

危険3 「隠れ肥満」は自覚がない!

福田医師はさらに、『隠れ肥満』の人は最大注意と呼びかける理由について、こうアドバイスをします。

「肥満が隠れているような体型であるだけに、肥満であることや生活習慣病のリスクへの自覚がない人が多いのです。『自分は太っていないから大丈夫』と思い込んでおられることがもっとも危険であるわけです。中年世代になると、おなかが出てきても年齢のせい、運動不足のせいと判断して健康診断でひっかかっても放置する人が少なくありません。

上着のサイズは大きくはないのに、ウェストのサイズは人より大きい、若いころよりベルトのサイズが2つも大きくなったなどという人は、内臓脂肪型肥満やメタボを疑って検査を受けてください。

病院では腹部CT検査によって、へその位置で内臓脂肪の面積(断面積)が100cm²以上ある場合を『内臓脂肪型肥満』と診断します」

先ほど、女性は皮下脂肪が多いとのことでしたが、では女性は内臓脂肪型肥満の心配はないのでしょうか。
「最近では女性にも増えていることがわかっています。運動不足や甘い物ばかりを食べている、また過度なダイエットの反動で筋肉量が減って脂肪がつきやすくなり、内臓脂肪が急増するケースも多くあります」

「食事」と「運動」で脂肪を減らす

ダイエット法として多くの情報が渦巻いていますが、福田医師は、脂肪を落とす方法はシンプルだと指摘します。

「肥満を解消するには、栄養バランスをとりながら食事で摂取するカロリー量を減らすことと、運動を取り入れて余分なカロリーを消費することです。どちらか一方だけでは何かしらに無理が出て、リバウンドのもととなります。食事の量を急に減らしてやせようとする人がいますが、先に説明した通り、それでは結果として内臓脂肪を溜めることになりかねません。

まずは、甘いものは15時までに食べて少量にする、お酒の量を控える、1日の摂取カロリーを計算して自分にあった量にする、一駅分多く歩く、エスカレーターを使わずに階段を使うなど、日常の活動を改善することから始めましょう。そして、スクワットやけんこう骨のトレーニングなど簡単な筋肉運動を取り入れてみてください。テレビを見ながらなど、手軽にできる方法を選ぶほうが長続きします。急に激しく実践するのではなく、1日に200~300キロカロリーほどを食事で減らして運動で燃焼すると考えましょう」

太って見えるわけでもないし、BMIも理想的な22くらいなのに、おなかがぽっこりと出ていて、腹囲が男性で85センチ、女性で90センチ以上あり、しかも体脂肪率が男性で20%以上、女性で30%以上と高い。これらの条件が揃っている場合は『隠れ肥満』ということです。自分の体型を体重や見た目だけでは判断せず、体脂肪に注目し、おなか周りのサイズを測って「隠れ肥満」をいち早く自覚していますぐ対策を始めるようにしましょう。

取材・文 堀田康子 × ユンブル

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福田先生
取材協力・監修
福田正博氏。医学博士。糖尿病専門医。臨床内科専門医。大阪府内科医会会長。日本臨床内科医会副会長。医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。著書に、『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)、『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』、『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)など多数。名医として知られる存在で、分かりやすく面白い講演でも定評がある。
医療法人弘正会 ふくだ内科クリニック

糖尿病は自分で治す!
↑福田正博医師の最新刊『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)

kenkousyoku
↑『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』(福田正博 アスキー新書)

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