《医師監修》眠れない睡眠障害とは?自己診断と対処法

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眠いはずなのに眠れない。眠っても直ぐに目が覚める。ベッドの中で考え事が収まらずに目が冴える。そんな状態は、もしかしたら「睡眠障害」かもしれません。

じゅうぶんな睡眠は健康の要です。睡眠不足はさまざまな病気の原因にもなり、最近では睡眠を専門にケアするクリニックも登場しています。ただ眠れないだけだと「ちょっと寝不足だけど大丈夫」と気にしない人もいますが、実は「睡眠障害」と診断されるくらいになっている可能性もあります。

誰でもなりうる、睡眠障害とはどういう状態なのか。新橋スリープ・メンタルクリニックで院長を務める、日本睡眠学会認定医の佐藤幹先生にお話をうかがいました。

「睡眠障害」にはどんなものがある?

不眠症(不眠障害)は、睡眠障害の代表例のひとつです。しかし、不眠症といっても、さらに細かい症例に分かれると佐藤先生は教えてくれました。

「不眠症(不眠障害)の症状には、布団に入ってからなかなか寝つけない『入眠障害』や、夜中に2回以上目覚め、その後寝つけない『中途覚醒』。そして、ふだんより2時間以上早起きしてしまい寝つけなくなる『早朝覚醒』、また、不眠障害の国際的な診断基準には含まれていませんが、ぐっすり眠れず熟睡感を得られない『熟眠障害』があります」(佐藤先生)

また、不眠症とは逆に7時間半以上(※)、じゅうぶんに睡眠をとっているにも関わらず寝不足の状態が続くようなら「過眠症」の可能性もあると、佐藤先生は指摘します。

睡眠障害の原因としては、うつ病などの精神疾患や睡眠時無呼吸症候群といった疾患、認知症によるものなどさまざまな理由が考えられるため、それぞれの原因や睡眠の環境に合った治療が必要です。

※必要な睡眠時間には年齢により幅があります。10代であれば、8時間以上の睡眠が必要になります

ライフスタイルの変化で睡眠時間は45分減

現代人は睡眠の悩みを抱える人が多く、その割合は「5人に1人」だと佐藤先生はいいます。現代社会の睡眠環境に関しての問題は色々ありそうですが、なかでも平均睡眠時間の変化には注意する必要がありそうです。

NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」によれば、2015年の男女合わせた平日の平均睡眠時間は7時間15分。1970年代に約8時間だったのに対して、45分も短くなっている計算となります。主な原因はライフスタイルの変化で、昨今では夜中のスマートフォン使用などでより短くなっていっているという指摘もあります。

また、年齢別にみるともっとも睡眠時間が短いのが、40~50代の女性。活発な20代や30代の睡眠時間が一番短いと思われがちですが、佐藤先生は「40代~50代の女性は仕事に家事、子育てなどで睡眠時間が削られているのではないか」と分析しています。

睡眠障害を自己診断する方法は?

私たちは、どんな症状が出たときに「睡眠障害」を疑えばいいのでしょうか。佐藤先生は「社会生活に問題が生じるようなら、睡眠の質か量に問題がある可能性がある」と指摘します。具体的には、「睡魔に襲われる、注意力が散漫になってミスをしてしまう、起床時の爽快感が少なく、日中の倦怠感が強い、などの状態が日常的に続くようであれば、医師に相談してみる必要もある」といいます。

また、「1ヶ月以上にわたり寝つきが悪い、あるいは夜中に目が覚めてしまうなど眠れないことへの不安が続くような場合」も睡眠障害のおそれがあります。これら慢性化している不眠症状の原因を探るため、佐藤先生は患者さんの悩みを以下のアプローチからも判断するようです。

1:過度なストレスがあって眠れない
2:過度なストレスがないのに寝付けない
3:1・2のいずれかにも当てはまらない

1の場合は精神疾患や適応障害が疑われるケースが多く、その場合には専門の治療が必要になります。

2の中には一時的に不眠症状が出現しているケースもあり「数日間遅寝早起きしてみると改善される場合や、睡眠の環境を整えると速やかに良くなることも少なくない」といいます。

一方で、慢性の不眠障害のケースにも、患者さんが「不眠の原因となるストレスは思い当たらない」と訴える場面が多くみられると言います。この場合は(社会生活の中にストレスがなくても)、眠れないこと自体がストレスになっていることがあります。また、不眠症状がストレスにより出現した後に、ストレスがなくなっても不眠症状だけが残る場合も多くみられます。

さらに、ストレスがはっきりしない不眠症状が、睡眠時無呼吸症候群やムズムズ脚症候群、薬剤、内科外科疾患などによって引き起こされている可能性も考えられます。
このように、明らかなストレスを感じていないのに不眠が継続しているケースには、様々な原因や状態があり、その鑑別には詳細な診察が必要になると言います。

現代人はストレス社会で生活しています。日中の心配ごとがそのまま睡眠の質に直結してしまうので、「ちょっとくらい我慢すれば大丈夫」と無理をせず、早めに受診しましょう。また、ストレスを感じていない場合でも、不眠が慢性化するケースや治療が必要になる場合が多くあるという点には注目しなくてはいけません。

薬に頼るべき? 今すぐできる対策とは?

最近では、街の薬局でも睡眠導入剤や睡眠改善薬を手に取りやすくなりました。しかし、どうしても寝つきを改善したい場合はこういった薬に頼ってもよいのでしょうか。佐藤先生は「市販の睡眠改善薬は医師が処方する睡眠剤に比べ、長期的な効果が証明されているものが少ない」と指摘します。

「数日だけ、短期間の効果を求めるのであれば有効なこともありますが、睡眠改善薬が無効である場合や、効果を感じにくくなってきた場合には、医師と相談し適した治療を受けたり、薬を処方してもらいましょう」(佐藤先生)

慢性的な不眠の場合はやはり医師に相談する必要があるようですね。また、以下のような日常的に行える睡眠の質を上げる方法も教えてもらいました。

・眠たくなるまで布団には入らない
無理に寝ようと、眠くなる前から布団に入ってしまうと、不安や緊張が高まりやすくなり眠れなく場合があります。

・就寝90分前までに入浴を済ませる
入浴直後(特にバスタブに入った場合)は深部体温(脳や内臓の温度)が下がりにくくなり、眠りに入るまで時間がかかります。90分ほどかけて火照りを冷ましましょう。また、深部体温を下げるために、寝るときに手足を中心に温めることも快眠への近道です。

・朝起きる時間を一定にする
夜間に眠くなる時刻は起床して日光を浴びるとセットされるといわれます。起きる時間が不規則になることは、眠くなる時刻が不規則になる原因になります。一定の時間に起床することで、寝付きやすさの改善が期待できます。

休日の朝はゆっくりと目覚める方や、長時間の昼寝をとる方も多いと思います。しかし、遅めの時間に長時間の昼寝をとることや、大幅に寝坊することは体内時計(睡眠と覚醒のリズム)の観点からはよくないほか、佐藤先生は「昼寝により睡眠不足を補うことはできるが睡眠を貯蓄・前借りすることはできない」と語っていました。

休日にまとめて休めたい場合には、普段よりも60分以内程度の寝坊をし、仮眠をとる場合には11時~14時の間に1時間ほどがよいそうです。また、過度の寝坊や、15時以降の昼寝は、その晩の寝付きを悪くし、眠りを浅くしてしまう可能性があります。その結果、スッキリしない、午前中眠いといった不調を休日明けの朝から感じてしまうので注意しましょう。

私たちのすこやかな生活には欠かせない睡眠。不調を感じた場合、まずは自分眠りから改善すると、調子がよくなるかもしれませんよ。

【協力】
新橋スリープ・メンタルクリニック 医学博士 佐藤 幹 院長http://www.sleep-mental.com/index.html
【参考】
NHK放送文化研究所|2015年 国民生活時間調査
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20160217_2.pdf

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