《糖尿病専門医が教える》「腸内フローラ」が糖尿病、肥満を予防・改善する。

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ヒトの腸内には、約1,000種類、600兆個以上もの腸内細菌が生息していると言われます。腸内を電子顕微鏡で観察すると、さまざまな細菌が種類ごとにグループを形成してすみついている様子が花畑のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢・そう)」と呼ばれています。

このありようが体と脳のさまざまな状態に深い関わりがあることが知られていますが、糖尿病専門医で臨床内科専門医でもある福田正博医師によると、「腸内フローラの存在と糖尿病や肥満、メタボとの関連が明らかになりつつあり、そういった病気の予防・改善にも役立つと期待されています」とのことです。詳しいお話を聞いてみました。

腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が肥満や糖尿病の抑制に役立つ

福田医師はまず、
「腸内フローラを構成する細菌の種類やバランスは一人ひとりで異なっていて、同じ人でも食生活など生活環境や加齢などの影響によって変化していきます。多くの研究で、腸内細菌の変化が糖や脂質の代謝などに影響することがわかってきました」と切り出します。

腸内細菌は、腸に届いた食べ物などを分解して、さまざまな物質を作り出していると言います。中でも、糖尿病や肥満との関係で注目されているものについて、福田医師はこう説明をします。

「腸内細菌が作る代謝に関する物質の中で、糖尿病や肥満との関係で特に注目されているのが、『短鎖(たんさ)脂肪酸』です。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などを指します。

バクテロイデスという種類の腸内細菌は、主に食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性の環境にして悪玉菌の増殖を防いだり、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促したりするほか、腸壁から吸収されて、血液を通じて全身に届けられます。

短鎖脂肪酸が脂肪細胞に働きかけると、脂肪の取り込みや蓄積が抑えられます。短鎖脂肪酸は、体と脳の状態を調整する自律神経のうち、活動や興奮を司る交感神経の働きを活発にして、心拍数や体温を上げ、エネルギーの消費量を増やす作用もあります。

さらに、短鎖脂肪酸は、肝臓や筋肉、脂肪細胞などに働きかけて、インスリン抵抗性を改善するという研究も進んでいます。インスリンとは、すい臓から分泌されるホルモンで、血糖(血液中のブドウ糖)が筋肉などに取り込まれてエネルギーとして利用されるときに必要なものです。このホルモンの働きが悪くなることを『インスリン抵抗性』と呼びます。インスリン抵抗性があると、インスリンが分泌されても血糖が利用されずに血糖値が上昇し、糖尿病の発病や悪化につながります」

つまり、腸内細菌が活発に働いて体内の短鎖脂肪酸を増やすことができれば、脂肪の蓄積が抑えられ、体の消費エネルギーも増えるわけです。これが肥満防止の役に立ち、インスリンの働きが正常化して糖尿病の予防・改善効果も期待できるということです。

腸内フローラの乱れが生活習慣病をまねき、老化を促進する

続いて福田医師は、腸内フローラと糖尿病の関連について、興味深い研究成果を紹介します。

「順天堂大学の研究チームの調査によると、2型糖尿病(生活習慣が原因で発症する糖尿病)患者では腸内フローラのバランスが乱れやすく、腸管のバリア機能が低下して、腸内細菌が血液中に侵入することや炎症性物質が増加することが明らかになりました。

腸内細菌が血液中に移行したり、炎症性物質が増加したり、体のあちこちで炎症が慢性的に起こりやすくなります。これは体内でじわじわとくすぶり続け、がんや動脈硬化、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や老化の引き金になると考えられています。

糖尿病のインスリン抵抗性も、慢性の炎症が一因とされています。こうした点から、腸内フローラ全体の乱れが、糖尿病の発症や悪化につながる可能性があると考えられています。

また、海外の研究によると、肥満の人は腸内細菌の多様性が失われていることや、90歳を超えても若々しい高齢者の腸内フローラは健康な30代の若者と変わらないことなどが報告されています。

腸年齢には個人差が大きいと言われます。腸内フローラは加齢とともに変化し、いわゆる悪玉菌の割合が増加して、腸内細菌の多様性も失われていきます。年をとっても健康で若々しい体を保つには、多彩な細菌がバランスよく生息する腸内フローラを維持することが重要と言えるでしょう」

腸内フローラの改善には、食物繊維を積極的にとる

では、腸内フローラをよい状態に維持するには、どうすればよいのでしょうか。福田医師は、食生活を見直して、食物繊維をとることを第一に挙げます。

「腸内フローラを整えるために積極的にとりたい栄養素が、食物繊維です。先に紹介した高齢者を対象にした研究でも、食物繊維の摂取量が多いほど、腸内細菌の多様性が保たれていたことが確認されました。

食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、どちらも重要です。水溶性の食物繊維は不溶性よりも腸内細菌のエサになりやすく、また、不溶性の食物繊維は便のカサを増やし、排便をスムーズにして悪玉菌を増えにくくします。

また、肉類や乳製品、糖質の多い食べ物は悪玉菌を増殖させて、腸内フローラのバランスを崩すので、とり過ぎに注意してください」

次に福田医師は、「食物繊維が豊富な食べ物」を具体的に挙げます。

野菜・果物、豆類、雑穀類、きのこ類、海藻類などがあります。これらを食事の最初に食べると、血糖値の上昇を抑えることもわかっています。また、ごぼうや玉ねぎ、大豆、牛乳、ハチミツなどに含まれるオリゴ糖も、腸内で善玉菌のエサとなるので、積極的にとるようにしましょう。

ヨーグルトや納豆、味噌、ぬか漬けなどの発酵食品は、腸内フローラの改善に役に立つという報告もあり、これらの食品もとるようにしましょう。

肥満やメタボ、糖尿病の予防も、健康長寿も、腸内フローラが決め手と言えるようです。体にいい腸内細菌が色とりどりに花開く腸内環境をイメージしながら、食生活の改善を目指しましょう。

取材・文 城川佳子 × ユンブル

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取材協力・監修
福田正博氏。医学博士。糖尿病専門医。臨床内科専門医。大阪府内科医会会長。日本臨床内科医会副会長。医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。著書に、『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)、『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』、『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)など多数。名医として知られる存在で、分かりやすく面白い講演でも定評がある。
医療法人弘正会 ふくだ内科クリニック

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糖尿病は自分で治す!
↑福田正博医師の最新刊『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)

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↑『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』(福田正博 アスキー新書)

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