《大腸肛門病専門医が教える》「腸内フローラ」を整えてアレルギーを改善

adobestock_133388782

「腸内フローラ」という言葉をよく耳にします。大腸肛門病専門医で指導医でもある大阪肛門科診療所(大阪市中央区)の佐々木みのり副院長によると、「『腸内フローラ』とは腸内細菌の集団を全体としてとらえた呼称で、学術的には『腸内マイクロバイオータ』と言います。これらがアレルギーの症状と関係していることが近年の研究でわかってきています」とのことです。腸内細菌とアレルギーがどのように関係しているのか、詳しいお話を聞いてみました。

花畑のように腸内に群生する細菌

「腸内フローラ」という言葉の響きから、花(フラワー)を連想しますが、佐々木医師はこう説明します。

「腸壁には、多種多様な細菌が種類ごとにグループになってまとまっています。顕微鏡で見ると、その姿が群生するお花畑、英語でフローラ(flora)のように見えることから、『腸内フローラ』と呼ばれるようになりました。生息する腸内細菌の種類や数は約1,000種類、600兆個以上などと言われ、人種、年齢、食事、生活習慣によって異なります」

腸内フローラが免疫力の決め手かもしれない

佐々木医師は、「実は、体の中でもっとも免疫細胞が多い部位は、腸内です」と話し、次の説明を続けます。

「『免疫』と聞くと、白血球を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、腸内には、全身の免疫細胞の約70%が集まっていると言われます。免疫細胞とは、免疫を活性化する細胞の総称です。マクロファージ樹状細胞(じゅじょうさいぼう)、好中菌(こうちゅうきん)、NK細胞などで、これらの名称を耳にすることも多いでしょう。

また、人体は基本的に閉じた空間ですが、食べ物などが入る口から肛門にいたる消化器官は『外部の世界』とつながっています。つまり、腸管は体の『外』と考えることができます。

腸菅に集まる免疫細胞は、その『外』から侵入する病原ウイルスや細菌などを防ぎ、排除するように働くわけです。さらに、免疫細胞は血液で全身に運ばれて、体のさまざまな場所で、健康に悪影響を及ぼすウイルスや細菌を見つけると、攻撃をしてやっつけるように働きます」

免疫細胞とアレルギーはどう関係するのでしょうか。

「免疫細胞は、普段は食品などの安全なものと病原ウイルスなどの危険なものを判別しています。花粉やハウスダストが体内に入ると異物だと認識されますが、これに免疫細胞が過剰に反応する、また攻撃する必要がない自分の細胞を攻撃するなど異常な事態になると、アレルギーや自己免疫疾患などの病気を引き起こします。

このとき、腸内環境が異常になっているということがわかってきていて、研究が進んでいます。つまり、腸内環境を整えてよい腸内フローラを育むことが、アレルギーの改善に役に立つと言えるわけです」と佐々木医師。

腸内フローラには3つのパターンがある

腸内フローラを形成する細菌は1,000種以上もあるとのことですが、佐々木医師は次の代表的な腸内細菌を挙げます。

「よく知られているのは、ビフィズス菌乳酸菌ウェルシュ菌大腸菌ではないでしょうか。このうち、ビフィズス菌や乳酸菌は善玉菌、ウェルシュ菌、大腸菌は悪玉菌とされていました。しかし、最近の研究で悪玉、善玉と単純に分けられないこともわかってきました。」

また、腸内フローラは食生活によって変化しますが、現在のところ、大きく次の3つのパターンに分類されています」と佐々木医師。

(1)バクテロイデス属が多いタイプ
炭水化物が少なく、動物性タンパク質や脂肪の摂取量が多い人、いわゆる肉食傾向のパターン。かつて「悪玉菌」と言われていたが、腸内の環境により良くも悪くもなる。

(2)プレボテラ属が多いタイプ
野菜などの食物繊維、炭水化物の摂取量が多く、穀物がメインの食生活を送っている人のパターン。

(3)ルミノコッカス属が多いタイプ
(1)と(2)の中間的な食事をしている人のパターン。肥満の人に多い。

「(1)のパターンは欧米人に多く、(2)は日本人を含む東アジア人に多いとされています。腸内フローラは国と地域、民族によって違っており、腸内細菌の構成を調べるだけで国と地域が分かるくらいに特徴的です。

日本人にだけ海藻を消化する腸内細菌が生息していて、それは『スシ・ファクター』と呼ばれています。日本人の祖先から代々受け継がれてきたものであり、和食を食べることによって培われた腸内細菌とされています。

それが食生活の急変で細菌のバランスが崩れようとしています。『昔ながらの和食の生活が良い』と言われる理由は、日本人固有の腸内細菌に合った食事をすることで腸内細菌のバランスが保たれ、そのことがアレルギーの改善などにつながると考えられているからです」(佐々木医師)

和食で腸内環境が良くなるとは朗報です。

穀物由来の食物繊維をとることが重要

では、どうすれば腸内フローラを整えることができるのでしょうか。佐々木医師はこう説明をします。

「先ほど話したように、食生活を見直すことが何より重要です。日本人の食物線維の摂取量が昔に比べて激減しているのは、主食である米を食べなくなったからと言われます。食の素材が多様になったこと、また、糖質制限やダイエットで炭水化物を避ける傾向があるようですが、米をはじめとする穀類由来の食物線維は腸内細菌のバランスを保つうえでとても重要です。

1日に1食は米を食べ、野菜やきのこ類、海藻類に豊富に含まれる食物繊維を積極的にとり、栄養のバランスが整った食事をすることで腸内環境が改善します。動物性タンパク質や脂っこいものばかりを食べていたり、炭水化物の量を極端に減らしたりするのは腸内フローラにとって好ましくありません。また、日常的に軽い運動を行って、ストレスをためないことも自分でできる方法です」

最後に佐々木医師に、腸内フローラの状態が悪いときのサインを教えてもらいました。

□便秘や下痢をよくする
□おならが臭くなった
□花粉症などアレルギーがある
□肌荒れやニキビなどの肌トラブルが治りにくい
□不安、気分の落ち込みがひどい
□イライラしやすい
□風邪をひきやすくなった

「ひとつでも当てはまれば、腸内フローラのバランスが乱れているかもしれません」と佐々木医師。いますぐに食事や生活習慣を見直して、腸内環境を整えるように行動したいものです。

取材・文 堀田康子 × ユンブル

%e4%bd%90%e3%80%85%e6%9c%a8%e5%85%88%e7%94%9f200x200
取材協力・監修
佐々木みのり氏。関西初の女性医師として大腸肛門病専門医の資格を取得。肛門科指導医。大阪肛門科診療所(旧・大阪肛門病院)副院長。大阪大学病院などで皮膚科医として勤務後、肛門科医へ転身。臨床を行うかたわら、肛門科、内科、皮膚科などの医学会でも肛門疾患の治療について講演活動などを積極的に続けている。
大阪肛門科診療所(旧・大阪肛門病院) 大阪市中央区釣鐘町2-1-15

佐々木みのり医師ご監修による、次の記事も参考になさってください。
大腸肛門病専門女医が教える。おしりの病気になりやすい便秘とそのケア法とは

今月の特集のほかの記事はこちら
《糖尿病専門医が教える》「腸内フローラ」が肥満、メタボ、糖尿病を予防、改善する。
《糖尿病専門医が教える》医学的に健康な減量法。1カ月で1センチの「腹やせ」で内臓脂肪1キロ減!
《心身医学専門医に聞く》「腸内フローラ」がストレス、性格にも影響する?
《臨床内科専門医に聞く》下剤?食物繊維?「腸ストレス」改善の方法、これは正しい?
《理学療法士が教える》「腸活ヨガ」でぽっこりおなか対策4つ

adobestock_133388782

この記事が気に入ったら
いいね!しよう