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《漢方専門医に聞く》足のつりに芍薬甘草湯が処方される理由と服用の仕方

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足のつりは、おもにふくらはぎに発生する筋肉の過度なけいれんで、激痛をともないます。この症状は、ふくらはぎの別称「腓(こむら)」にちなみ、「こむら返り」とも言われますが、長時間のウォーキングやジョギング、水泳などをした日の睡眠中に起こることがよくあります。

漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田裕彦医師は、「そういったときによく処方されるのが、『芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)』という漢方薬です。古くから足のつりや筋肉のけいれんによる痛みを鎮めるために用いられています」と話します。詳しいお話を聞きました。

足のつりは、一時的な「血(けつ)」の不足が原因

――「足のつり」には、東洋医学による改善法が知られていると聞きますが、どういう理由でしょうか。

吉田医師:東洋医学では、ヒトの体の構成要素を「血(けつ)水(すい)」の3つとして、それらが互いにバランスよく連動しながら働いている状態を「健康」であるととらえます。また、心身の不調は、それらの要素の不足やバランスの偏りから生じると考えます。 

「気・血(けつ)・水(すい)」を簡単に説明すると、「気」は心身の生命エネルギー、「血(けつ)」はおもに血液、「水(すい)」は血液以外の体液を指します。

足のつりは、「血(けつ)」が一時的に不足している「血虚(けっきょ)」の状態だととらえます。血液は足の筋肉や神経に酸素や栄養を与え、正常に動かせるように働くわけですが、その血液の循環が足りず、異常な緊張、けいれんが起きていると考えます。

つまり足のつりでは「血(けつ)」を補い、「気・血(けつ)・水(すい)」のバランスを整えることが改善につながります。

――では、足のつりによく用いられるという「芍薬甘草湯」という漢方薬は、血(けつ)を補うということでしょうか。

吉田医師: そうです。「芍薬甘草湯」は筋肉の緊張やけいれんを和らげ、急激な痛みを鎮める働きがあり、睡眠中や運動を行っている最中に起こる突然の足のつりの改善に期待ができます。漢方の古典として知られる中国・漢の時代の医学書『傷寒(しょうかん)論』に記載されているほど、古くから使われていると言われています。

芍薬甘草湯は急に発生する痛みに用いる

――ではその芍薬甘草湯とは、いつ、どのタイミングで飲めばいいのでしょうか。また、どのような特徴がありますか。

吉田医師:足がつって痛むときにすぐに服用してください。この漢方薬は、生薬の「芍薬(しゃくやく)」と「甘草(かんぞう)」で構成されています。どちらも筋肉の緊張をゆるめ、痛みを和らげる働きがあります。

多くの漢方薬は服用してから効き目が現れるまでに時間がかかると言われますが、この薬は即効性があり、服用するとすぐに効き目が現れることが特徴のひとつです。

筋肉に痛みが出たときに「頓服薬(とんぷくやく)」として、ウォーキングやジョギングなどの運動をする際には持参したり、就寝時は枕元に置いたりして備えておくとよいでしょう。

――芍薬甘草湯は腰痛にも作用するということですが、どういった症状によいのでしょうか。

吉田医師:足のつりのほかに、突然のぎっくり腰や関節の痛み、また、内臓の筋肉のけいれんにともなう胃痛や結石の発作時の痛みなど、急性の症状に用いられます。

多くの漢方薬は、「証(しょう)」といって、例えば、冷えやすい、のぼせやすいといった体質や、太っている、あるいはやせ気味といった体格などを考慮して処方されます。しかし芍薬甘草湯は、証にこだわらずに用いることができることも特徴のひとつになります。

服用しやすい錠剤タイプや、ゼリータイプなども市販されていますので、自分に合ったタイプを選びやすいのではないでしょうか。

――芍薬甘草湯は日ごろから飲むことで、足のつりを予防することはできますか。

吉田医師:急性のけいれんや痛みに働きかける漢方薬であるため、足のつりの発生そのものを抑えることはできません。そのため、毎日や痛みがないときに服用することは避けてください。ただ、自分は「日中に運動をしたときによくつる傾向」などがあって、足がつりそうなきざしを感じた場合に服用するのはよいでしょう。

体質によって、疎経活血湯や八味地黄丸も

――芍薬甘草湯のほかに、足のつりに働きかける漢方薬はありますか。

吉田医師: 貧血気味の人、冷え性の人には、疎経活血湯(そけいかっけつとう)も選択肢のひとつになるでしょう。芍薬、甘草のほかに17種類の生薬が配合され、血(けつ)のめぐりをよくする働きがあります。

膝(ひざ)から下の冷えが強い、また高齢者には、八味地黄丸(はちみじおうがん)が適している場合があります。8種類の生薬が配合され、血液の循環を促し、体を温めるように働きます。

いずれにしても迷ったら、薬店の薬剤師やかかりつけ医に相談をしてください。

漫然と長期的に服用することは避ける

――芍薬甘草湯を服用するときに注意することはありますか。

吉田医師: 漢方薬は副作用がない、と思われがちです。しかし、自然由来の生薬を使用しているといっても、薬であるからには副作用はあります。

甘草は、手足の力が抜ける、むくみ、血圧の上昇などがみられることがあります。また、ごくまれに、芍薬甘草湯による深刻な副作用として、間質性肺炎、偽アルドステロン症(低カリウム血症や体重増加など)、ミオパチー(脱力感や筋肉痛、麻痺など)などの報告があります。

市販薬でも医師による処方薬でも、用量と用法は必ず守ってください。また、痛みが治まったら服用を中止しましょう。たとえ足のつりがくり返す場合でも服用の期間は1週間を目安に、長くても2週間までにとどめ、漫然と服用するのは避けましょう。もし不調が現われたら、その時点で服用を中止し、医師か薬剤師に相談をしてください。

――足のつりの原因と対処する漢方薬についてよくわかりました。ありがとうございました。

漢方薬と言えば、ゆっくり穏やかに働きかけるものだと思っていましたが、即効性が期待できる種類があるということは、新鮮な情報でした。足のつりのあの痛みに備える方法のひとつとして、枕元に用意しておくなど、参考になるのではないでしょうか。

取材・文 ふくいみちこ・藤井空/ユンブル

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取材協力・監修
吉田裕彦氏。 臨床内科専門医。消化器内視鏡専門医。漢方専門医。糖尿病療養指導医。大阪府内科医会理事。八尾市医師会副会長。医療法人朋侑(ほうゆう)会・吉田クリニック院長。
医療法人朋侑会・吉田クリニック:大阪府八尾市山本高安町2-1-3

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