《医師監修》寝だめはNG?睡眠負債を返済するための安眠術

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2017年の流行語大賞に「睡眠負債」という言葉が選ばれました。昨今、ただ眠るのではなく、その質について関心を寄せる声も増えてきています。

そこで、睡眠が人体にどんな影響をおよぼすのか。そして、改善方法の一つとされる「寝だめ」は果たして可能なのかといった素朴な疑問を、医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木の理事長・井上雄一先生へお伺いしました。

勘違いしている人も! 「質のよい睡眠」の本当の意味

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睡眠総合ケアクリニック代々木の理事長・井上雄一先生

そもそも「質の良い睡眠」とはどのような状態のことをいうのでしょうか。井上先生は「質について誤った認識をしている人が多い」と言います。

「本来、最低でも7時間程度の睡眠を取ることが必要です。たまに『短時間の睡眠でも質が良ければ問題ない』という話を聞きますが、それは間違い。良質な睡眠を取るためには、ある程度の時間と質の両方がなければいけません。

人間は脳や自律神経、体の代謝など、さまざまなものを休養させなければならず、そのためには深い睡眠とある程度の時間を必要とします。2つのどちらが欠けても、休養が不完全なままになりかねません」(井上先生)

それでは、「良い睡眠」とは具体的にどんなものなのでしょうか。ポイントは「朝方、眠りから覚めたときにリフレッシュした感覚があるかどうか」だそうです。

「寝起きがすっきりとしていて、気分も晴れやか、すぐに行動を開始できるという状態は『よい睡眠が取れた』という証拠です。反対に、起きてもだるくて頭が働かず、なかなかベッドから動けないという状態は、結果として悪い睡眠だったということになります」(井上先生)

長さと質の両方が満足いくものになって、初めて「質のよい睡眠がとれた」といえるわけですね。ただ、ちょっとした時間の昼寝については「質のよい睡眠」をとらないほうがよいそうです。

「昼寝の目安は、30分以内の浅い眠りにとどめておくことです。これ以上の時間を取ると『睡眠慣性』が働いてしまい、寝て起きたらだるい状態のまま目覚めてしまう場合もあります」(井上先生)

人間の就寝時は基本的に、睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠が交互に起こっています。このうち、ノンレム睡眠時に起きて目覚めが悪くなることが「睡眠慣性」と呼ばれています。

「寝だめ」は貯金ではなく単なる借金の返済?

「休日に寝だめをしておけば、平日は短時間睡眠でも大丈夫」という人もいますが、井上先生によれば、その答えは「NO」だそうです。さらに、寝だめをすると病気にかかるリスクもあるといいます。

「人間の体は、たくさん寝てその後の寝不足に備えるということはできません。よくいわれる『寝だめ』とは、それまでの寝不足を解消しているだけです。睡眠は負債になることはあっても、貯蓄をすることはできません。

寝不足が長期間続けば、そのぶん自律神経や代謝を休養できていないわけですから、結果、血圧の上昇や心臓疾患、高脂血症などのリスクを高めてしまいます」(井上先生)

寝だめと共に、睡眠時間が比較的短い「ショートスリーパー」についても、井上先生は疑問を投げかけます。

「若かったり体力があったりすると、睡眠時間が短くても日常生活を送れる人もいるでしょう。しかし、その反動から30~40才くらいになってグッと疲れやすくなるケースもあります。あくまでも個人的な見解ながら、一生ショートスリーパーでいることは難しいかと思います」

なお、人間は60~70才くらいになると体力の低下から持続して眠れなくなり、睡眠時間が短くなるともいわれますが、日中の活動量も減るため短時間睡眠になっても相殺することができるようになるそうです。

どうしても眠れない場合や疲れが取れない場合は病院へ

満足のいく睡眠を取るためには、「就寝前の嗜好品や刺激物の摂取を避ける」「明かりは消して静かな環境を作ること」がよいそうです。また、就寝前の食事も消化器官を働かせるため、睡眠のリズムを崩してしまう原因になるので避けたほうがいいと、井上先生は教えてくれました。

もし、これらを改善しても長期間にわたって眠れない場合には、病院へ行くことをおすすめします。しかし、この「眠れない」状態も2種類に分けられるようです。

「『疲れているのに眠れない』、『眠れるけれど疲れが取れない』、この2つは原因がまったく異なります。『疲れているのに眠れない』状態が2週間以上続くようであれば、不眠症の疑いがあるので病院に行きましょう。こちらは専門医でなくても対応が可能です。

また、『眠れるけれど疲れが取れない』状態は、睡眠時無呼吸症候群などの身体的な疾患から睡眠が妨害されている可能性がありますので、専門医へ相談してみましょう」

日本人の平均睡眠時間はこの30年間で1時間も短くなっているそうです。忙しい毎日の中で、睡眠時間を削ってしまったことは誰しも経験があるかもしれません。しかし、睡眠時間は言葉を発さない体にとって、とても貴重な休息時間。「質」を望むなら、環境はもちろんのこと、時間もしっかり確保することが大切です。

【取材協力】
医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木/理事長・井上雄一先生
http://www.somnology.com/
2003年に代々木睡眠クリニックの院長へ就任すると、2011年には医療法人社団絹和会の理事長へ就任。日本睡眠学会、日本薬物脳波学会の理事も務めている。
「ササッとわかる『睡眠障害』解消法」(講談社)、「眠れない…イライラする…脚がむずむずしたら読む本」(メディカルトリビューン)など著書も多数。

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