股関節の痛みに悩む人必見!その原因とケア方法とは?

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股関節は体の中で最も大きな関節なので、痛みがあると日常生活がとても不便です。そこで、関節治療のプロフェッショナルとして名高い、アットホーム表参道クリニック院長の腰塚裕先生に、股関節の痛みの原因や治療法、日常生活でのケアなどについてアドバイスをいただきました。代表的な病気である「変形性股関節症」についても、詳しく解説しています。

目次

 

股関節の仕組みと働き

股関節は胴体と両脚をつなぐ、人体で最も大きな関節です。脚の付け根にあり、太ももにある大腿骨(だいたいこつ)と骨盤から形成されています。大腿骨の骨頭(こっとう)は球形をしており、骨盤のくぼみである寛骨臼(かんこつきゅう)にスッポリとはまり込む構造。

骨同士が接触している部分は、軟骨に覆われています。軟骨はコラーゲンとプロテオグリカンといった成分でできており、クッションの役割をして股関節にかかる負担を軽くしながら滑らかに動きます。それに加え、周囲の丈夫な筋肉の働きもあって、前後・左右・回旋と、複雑な動きに対応しています。

重い体重を支えるだけでなく、脚を前後に出す、伸ばす、曲げる、閉じる、広げる、立つ、歩く、座るなど、実にさまざまな働きをする股関節。そのため何らかのトラブルが生じると、動きが悪くなったり、歩くときに痛みが出たりと、日常生活に多くの支障が出ます。

股関節の痛みが出やすいのは、こんな人

  • ・肥満
  • ・女性
  • ・中高年

など。

「50代あたりから痛みを訴える方が増えますが、40代も珍しくありません。また、もともと股関節の骨の形に問題のある『臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)』なども、股関節の痛みが出やすい原因のひとつです」(腰塚先生)

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股関節が不調になったときの症状

一言で「股関節が痛い」と言っても、さまざまな症状が見られます。代表的なのが、以下のような訴えです。

  • ・歩いているとき、座って足を組んでいるときなどに痛む
  • ・急に痛くなり、日を追うごとに痛みが増している
  • ・朝起きたときにだけ、こわばったり痛んだりする
  • ・階段の上り下りで痛い
  • ・夜、寝ているときにも痛い
  • ・脚の付け根が痛い
  • ・脚の長さが左右で違う
  • ・関節がスムーズに動かず、無理に動かすと痛い
  • ・歩いているときに足を引きずってしまう

など。

症状が進行すると、股関節がスムーズに動かなくなり可動域が狭くなります。靴下の脱ぎ履きや爪切りなどのちょっとした作業が困難になることも。また、痛みが強くなると、筋力低下や痛みから逃れようとするために、歩行時に脚を引きずることもあります。

股関節の痛みの原因とは

股関節に痛みが起こる原因は、病気によってさまざまです。関節炎や関節リウマチによって痛む場合は、炎症を起こしているためです。また、股関節の痛みは骨折で生じることも珍しくありません。大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)などで大きな痛みを伴うこともあります。

股関節が痛いとき、受診の目安とポイント

股関節に違和感や痛みが現れたとき、「そのうち治る」と思って放置し悪化させてしまうことが珍しくありません。

  • ・痛みが強い
  • ・軽い痛みでも1~2週間続いている
  • ・歩くことが困難

といった場合は、整形外科を受診しましょう。リハビリテーションができる設備が整い、理学療法士がきちんとサポートしてくれるシステムがある病院が理想的です。

「受診の際には、

  • ・一日のうち、いつ痛むことが多いか(朝、夕方など)
  • ・どのようなときに痛むのか(階段を上り下りしているとき、歩いているときなど)
  • ・痛い場所は具体的にどこか(股関節のみ、股関節と太ももまでなど)

といったことは問診で聞かれるので事前にメモしておき、医師へスムーズに伝えられるといいですね」と、腰塚先生はアドバイスします。

股関節の痛みに対する主な治療法

股関節の違和感や痛みなどに対する、代表的な治療法をご紹介します。

運動療法
股関節の周囲にある筋肉を強くして、股関節へかかる負荷を減らして痛みを緩和します。ストレッチや筋力トレーニングなど、理学療法士に指導を受けながら、その人に合わせたリハビリテーションを行うことがおすすめです。

薬物療法
飲み薬、湿布・塗り薬、座薬などによる消炎鎮痛薬を用いて、痛みや炎症を軽減させる方法です。

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手術
骨切り術や人工股関節置換術などがあります。骨切り術は、変形した股関節の形を整えて症状を改善させます。人工股関節置換術は、変形した骨を取り除いて人工関節に替えることで、痛みなどの消失をはかります。

「手術に抵抗がある方は多いのですが、関節の痛みを改善するのに成績がよい治療法です。むやみに怖がらず説明だけでもきちんと受けて、治療の選択肢のひとつとして考えてください」(腰塚先生)

温熱療法
赤外線照射装置や電動マッサージ器などで患部を温めて血流をよくし、炎症を軽減させます。また、温めることで筋肉や関節を動かしやすくなる効果も。運動療法に付随して行われます。

装具療法
サポーターや杖などを利用して、股関節にかかる負担を軽くし安定させます。装具は、その人の股関節の状態や骨格に合ったものを選びます。左右で脚の長さが異なる場合は、補高靴(ほこうくつ)を履いて高さを調節することも有効です。

股関節の代表的な病気を知っておきましょう

股関節の痛みがあるとき、放っておくと重要な病気につながることがあります。代表的な病気の知識を深めておきましょう。

変形性股関節症
股関節の病気として最も多く見られます。関節軟骨がすり減って、痛みなどの症状が出ます。加齢に伴って発症することが多いので、患者数は減ることがありません。

大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)
大腿骨頭は関節軟骨で覆われていますが、その下にある骨の組織が死んでしまう(壊死)病気。初期は無症状で痛みもありませんが、壊死した部分が体重の負荷がかかるなどしてつぶれると、多くの人が痛みや歩行障害を生じます。この病気の原因は明らかになっていません。

関節リウマチ
関節に慢性的な炎症が起き、やがて関節が破壊される全身性の病気です。一般的には、指などの小さい関節から症状が出始めますが、悪化すると股関節にも発症することがあります。免疫異常によって、体の中の正常な組織を攻撃してしまうことで起こり、原因はよくわかっていません。

化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)
本来無菌状態である関節に病原体が入り込み、痛みや腫れなどの症状を引き起こす感染症です。放っておくと数日で関節を破壊し、機能障害を残すこともあります。原因菌として、黄色ブドウ球菌がよく見られます。

変形性股関節症のこと、もっと知りたい

女性に多い病気で、40~50代の発症が目立ちます。痛みだけでなく、股関節が変形することもあります。
次の2種類にわかれるのが特徴です。

  • ・一次性変形性股関節症……関節軟骨がすり減って骨が変形します。原因はよくわかっていません。
  • ・二次性変形性股関節症……生まれつき、股関節脱臼(先天性股関節脱臼)がある場合や、股関節の発育が悪いこと(臼蓋形成不全)など、もともとの体質が原因となって発症します。

変形性股関節症の主な症状

初期

  • ・立ち上がるときに痛い
  • ・歩き始めに痛い
  • ・長時間歩くと痛い
  • ・おしりや太もも、ひざにこわばりを感じる

進行期

  • ・日常的に痛みがあり、歩きにくい
  • ・座っているときや就寝中でも痛い
  • ・痛みがひくまでに時間がかかる

末期

  • ・動かさなくても痛い
  • ・股関節の動きが硬くなる、悪くなる
  • ・筋力が落ち、脚が細くなる
  • ・左右の脚の長さが異なる

なるべく初期の段階で、整形外科を受診するように心がけましょう。

股関節の痛みがあるときは、積極的に杖を活用

股関節が痛いと体重をしっかりかけることができず、体の動きが不安定になります。そんなとき、体をバランスよくサポートしてくれるのが杖です。歩くたびに痛みがあるときや、痛みがひどいときなどに活用するよいでしょう。重心が左右にブレず、股関節が平行に保たれ歩く姿も安定します。転倒の予防にも役立ちます。

杖の使用に関して、「そんな年ではない」「見た目にどうしても抵抗がある」といった人も珍しくありません。しかし、最近ではファッション性の高い杖も多く販売されています。上手に杖を活用することで、外に出る機会が増えてリフレッシュもできます。

杖の選び方

杖は介護用品店などで販売されています。杖にはいくつか種類があります。人気があるのが次のようなタイプです。

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  • ・ソフトグリップ……グリップが柔らかいゴムでできているので、握りやすい
  • ・スリムネック……グリップの下が杖より細い構造。指と指の間に挟みやすく、疲れにくい
  • ・超軽量……アルミ製の軽量タイプや折りたためるものもあり、使いやすい

杖を体の横についたとき、軽く肘が曲がる程度がちょうどよい長さ。適切な長さで使うことが重要なので、受診先の理学療法士に見てもらうと安心です。

「自宅でも何らかの支えが必要な方、歩くのはそれほど困らないけれど外出時が不安といった方などは、杖を検討してください。『杖を使うと手がふさがって物が持てない』という方は、シルバーカーや横押しカーなどを活用すると便利です」(腰塚先生)

股関節の負担を減らすには体重コントロールを

体重が1kg増えると、体全体を支える股関節の負担が3~5kgアップします。なるべく太らないように心がけましょう。目安となるのはBMI(体格指数)で、25以上だと肥満なので注意が必要です。
BMI=体重(kg)÷身長2(m)

すでに肥満の人は適正体重へ近づけるようにしますが、極端なダイエットは栄養バランスの偏りが出るのでNG。1日3食を規則正しくとり、毎食腹八分目くらいに抑えて。特にたんぱく質を積極的にとり、筋肉の強化を意識します。

また、「やせて筋力が低下することを防ぐため、片足立ちなどの筋力トレーニングや、ストレッチなども並行して行うことが大切です」と、腰塚先生はアドバイスします。

運動には、自転車や水中ウォーキング

運動で筋力アップをはかることも、痛みの予防や緩和に重要です。「おすすめなのは、自転車や水中ウォーキング。どちらも股関節に負荷がかからない運動です」と、腰塚先生。自転車は、腰をサドルから浮かさないように気をつけてください。降りるときは、痛みの少ない方の脚から地面につけるようにします。

股関節をサポートするために、自宅でできるストレッチ

ストレッチは、筋肉を引き伸ばして体の柔軟性を高めてくれます。習慣づけられる簡単なストレッチをご紹介します。

膝を抱えるストレッチ

  • 1.床で仰向けになる
  • 2.両膝を抱えて、5秒間キープする

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10回を1セットとして、1日2~3セット行うとよいでしょう。股関節の可動域を広げるのに役立ちます。この他、あぐらをかくのもおすすめです。

股関節への負担を減らす日常生活の注意点

小さな工夫の積み重ねで、股関節になるべく負担をかけない生活にできます。次のことを心がけてみましょう。

外出時には

  • ・重いものを持って歩かない
  • ・買い物はカートを利用
  • ・階段の上り下りなどは手すりを使って

自宅では

  • ・イスやテーブルを活用して、洋式の生活スタイルに
  • ・よく使う調理器具は、立ったまま取れる高さにしまう
  • ・ソファーは適度な高さのあるものを。深く沈み込まず、姿勢よく座れるものを選ぶ
  • ・寝るときは布団よりもベッドに
  • ・よく着る衣服は腰より上の引き出しに
  • ・浴槽に手すりを設置
  • ・できるだけ床に座らないように、家のあちこちにイスを置く
  • ・掃除は、しゃがんで雑巾で拭くスタイルを避け、掃除機やワイパーなどで立って行う
  • ・浴室に、シャワーチェアーなど高さのあるイスを設置
  • ・フローリングや浴室は転倒予防の滑り止めマットを敷く
  • ・庭で作業するときは、両膝をついたり、イスに腰かけたりしながら行うように工夫を

など。

「外出したくない」人へゆっくり歩きの提案

「股関節が痛くて外へ出かけたくない」という人は珍しくありません。しかし、家に引きこもってばかりいると、筋力が弱くなり、さらに歩くのがつらくなります。無理のない範囲で、散歩を習慣づけるとよいでしょう。

歩くときに心がけたいのは、速いペースでせかせか歩かないこと。ゆっくりと歩き、10~15分したらベンチなどで休憩してから再び歩くといったペースに。荷物を軽くして両手に持ったり、坂道や階段はなるべく避けたりすることも大切です。

股関節を大切にする靴選びのポイント

日常で何げなく歩いているだけでも、脚の踏み出しや地面に着地したときの衝撃などで股関節には大きな負荷がかかっています。そのため、適切な靴を選んで股関節をサポートすることも大切です。

ポイント1 親指や小指が圧迫されない幅がある
股関節の病気があると、足が変形することが珍しくありません。悪化することを防ぐために、親指や小指が圧迫されず、すべての指に幅の余裕があるものがよいでしょう。

ポイント2 ひもや面ファスナーで幅を調節できる
ひもや面ファスナーがついていると便利。自分の足の幅にフィットした調整ができます。

ポイント3 靴底に適度なクッション性がある
靴底は、衝撃をきちんと吸収する厚さがあるものがベター。硬すぎず、柔らかすぎず、適度なクッション性があると、股関節の負担を軽減させてくれます。

ポイント4 かかと部分は硬く・低く
かかとをしっかりとホールドしてくれる硬さがあり、ヒールは低くて広いものが安全です。

股関節のセルフチェック

腰塚先生による、股関節のセルフチェックが次の4つです。ひとつでもチェックがついたら、整形外科で検査を受けることがすすめられます。痛みを感じると、「そのうち治る」と放っておく人も少なくありませんが、症状が落ち着かず悪化してしまうことも。早めに対応すれば、早い改善が期待できます。

  • □脚の付け根に痛みを感じる
  • □脚の長さが左右で違う
  • □関節がスムーズに動かない
  • □歩くときに脚を引きずる

「年齢を重ねるに伴い、股関節の痛みに悩んでいる方は少なくありません。とはいえ、すでに解説している通り、治療法は確立しています。

股関節のセルフチェックに該当する項目がある、そこまでの症状がなくても『なんだかいつもと違う』といった違和感があるなら、早めに受診してください。受診すれば、あらゆる治療の選択肢があることがわかります。その中から、主治医と相談して治療法を決めていくとよいでしょう」と腰塚先生は話します。

最近では、自分の血液や幹細胞を利用した再生医療で関節の痛みを改善する治療法も研究されています。あらゆる方法で痛みと向き合って改善をはかり、軽快に歩いて仕事や趣味に邁進できる毎日を目指しましょう。

取材・文/内藤綾子

取材・監修者プロフィール
腰塚 裕(こしづかゆう)先生
アットホーム表参道クリニック院長
群馬大学卒業後、東京大学整形外科に入局。虎の門病院、国立国際医療センター、大学関連病院などで勤務したのち、2009年に「アットホーム表参道クリニック」を開設。「お役立ちコラム」が人気。

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