股関節の痛みにはストレッチが効く!?トレーナーが解説

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日常生活で「股関節」を意識することはあまりないかもしれませんが、実は人間の体の関節で、座る・立ち上がる・歩くといった動きの基本となるとても重要な部分を担うのが「股関節」です。

痛みがあるときは、できるだけ早くケアすることが必要ですが、その痛みを解消するのにおすすめなのが“ストレッチ”。股関節に関する知識や股関節をスムーズに動かすために効果的なストレッチの方法について、Dr.ストレッチの中村竜太トレーナーに教えていただきました。

目次

股関節が痛くなるのはなぜ?

股関節の役割は?

「股関節」ということばはよく耳にしますが、実際、股関節は体のどの部分にあり、どのような働きをするのでしょうか?

股関節は体の中で最も大きな関節です。“大腿骨(だいたいこつ)”の上部にある丸い”大腿骨頭(だいたいこっとう)“が、”骨盤寛骨臼(こつばんかんこくきゅう)“という骨盤のくぼみにはまり込む形で形成されています。

上半身と下肢をつなぎ、体重を支えながら周囲の筋肉によって、脚の前後左右、回旋といった動きがスムーズに行えるように動く関節です。立つ、歩く、走るといった動作をこなす関節のなかでも特に重要な部分です。

股関節を支えるおもな筋肉とその働き

股関節は複数の筋肉に支えられています。おもな筋肉は次の通りです。

【大殿筋(だいでんきん)】
殿部(お尻)まわりにある大きな筋肉。おもに股関節を伸ばしたり広げたりする働きがある。また、脚を後ろに振る、外にひねるといった動作にも関与する。

【中殿筋(ちゅうでんきん)】
殿部の中間部にあり、骨盤の骨と大腿骨を結ぶ筋肉。おもに、立ったり歩いたりするときに重要な役割を果たす。片足で立ったときにバランスを保つことができるのは、中殿筋がきちんと機能している証拠。

【小殿筋(しょうでんきん)】
中殿筋の深部に位置する筋肉。脚を後ろに振る、内外にひねるといった動作にも関与する。

【内転筋(ないてんきん)】
太ももの内側にあり、下半身のバランス調整を担う筋肉。おもに脚を内側にひねる働きがある。

【ハムストリングス】
太ももの裏側にある筋肉群の総称。膝をまげる、後方へ蹴るなどの働きがある。

【大腿四頭筋(だいたいしとうきん)】
太ももの前側の筋肉で、膝を伸ばす、上げる、歩く、走るなどの働きがある。

【腸腰筋(ちょうようきん)】
大腰筋(だいようきん)・小腰筋(しょうようきん)・腸骨筋(ようこつきん)の総称。大腿骨と腰椎(ようつい)と骨盤をつないでいる。股関節を屈曲させるときに働く筋肉群。

上記の筋肉のなかで、特に内転筋やハムストリングスといった股関節のまわりの筋肉が硬くなると、股関節の日常的な立つ、歩く、座るといった動作で起こる衝撃を吸収できなくなります。その結果、股関節の可動域(動かせる範囲)も狭くなり股関節が硬くなります。

股関節が硬くなると起こるデメリット

股関節が硬くなり、その状態が続くことで股関節に痛みが生じますが、この他にも起こりうるデメリットは実はたくさんあります。

【代償運動による腰痛・膝痛】
股関節が硬くなり動きが悪くなると、それを補うために他の部分が代償運動を始めます。特に腰や膝に負担がかかりやすくなるため、腰痛や膝痛を誘発しやすくなります。

それだけではなく、背骨や足首などの他の関節も代償運動で無理な動きをしようとするため、捻挫や肉離れといったけがを引き起こしやすくなります。

【骨盤がゆがみやすくなる】
骨盤がゆがむ原因にはさまざまなものがありますが、その多くは股関節が硬くなることにつながっているといわれています。特に女性の場合は骨盤の構造上、もともと内側に入りこんでいること。

また、妊娠・出産を経験し緩んだ股関節を元の状態に戻そうとする働きが加わり、その際、股関節まわりの筋肉が硬いと骨盤がゆがみやすくなるといわれています。

【下半身が太る・冷え】
股関節が硬くなると下半身のリンパや血流が悪くなり老廃物も流れにくくなることから新陳代謝が著しく低下します。そのため、脂肪燃焼がされにくくなり下半身が太りやすくなります。

また、血液が体の末端までスムーズに流れなくなるため、体が冷えやすくなります。

【姿勢が悪くなる】
股関節が硬くなると、骨盤につながる背骨や下肢のバランスも崩れやすいです。それを放置しておくと、背骨から首、頭蓋骨、肩など広範囲にゆがみが生じ姿勢が悪くなります。

このように、股関節が硬くなることで、体のさまざまな部分に影響が及ぶのです。

ストレッチでインナーマッスルを伸ばす

人類は長い歴史のなかで、四足歩行の類人猿から二足歩行するように進化を遂げました。この大きな変化により、股関節には四足歩行のときよりも大きな負担がかかるようになりました。4本で支えていた体重を2本で支えなければならなくなったので、股関節には毎日かなりの負担が強いられているのです。

しかし、たとえ負担があったとしても、正しい位置でしっかり働ける状態であれば問題ないのですが、現代人は、生活が便利になったこともあり、多くの人が運動不足の傾向にあります。また、常にスマートフォンやパソコンなどを前かがみの座り姿勢で作業し続けることで、股関節まわりの筋肉が硬くなっている人が多いようです。

筋肉には2種類ある

もともと筋肉には、体の浅い層の部分にある“アウターマッスル”と呼ばれる表層筋と、深い層の部分にある“インナーマッスル”と呼ばれる深層筋があります。深層部で硬くなっている筋肉を柔らかくするには、アウターマッスルだけでなく、関節と関わりの深いインナーマッスルを伸ばすことが必要です。

そして、インナーマッスルを伸ばすのに有効なのが“ストレッチ”です。ストレッチで筋肉を伸ばすことで股関節まわりの筋肉の柔軟性を促し、股関節の可動域が広がります。

インナーマッスルは体の奥にあるため伸ばすのは難しいのでは?と思われがちですが、正しい方法でストレッチを行えば伸ばすことは可能で、股関節の痛みを解消するのにも効果的です。さらに、体の不調を改善しリラックス効果も期待できます。

股関節は加齢とともに股関節を支える筋肉量が減少し筋肉が弱まることで、だれもが動きが悪くなります。いつまでも股関節の柔軟性を保ち股関節痛を予防するためにも、今日からストレッチを始めましょう。

股関節のストレッチ①

ストレッチの種類

ストレッチはおもに筋肉の柔軟性を改善させることを目的に行います。ストレッチと言っても、大きく分けて5種類あります。

体を動かして行う「バリスティックストレッチ」、その仲間で反動をつけて行う「ダイナミックストレッチ」、ゆっくりと体を伸ばす「スタティックストレッチ」、専門的な技術と知識を必要とする「PNFストレッチ」、筋肉を冷やしながら行う「クライオストレッチ」です。

今回は、反動をつけずに筋肉をゆっくりと伸ばしていく「スタティックストレッチ」の中で、自分でできるセルフストレッチをご紹介します。

ストレッチを始める前の注意点

股関節の痛みが強い、軽い痛みでも続いている、歩行が難しいなどの症状がある場合は、股関節や大腿骨などの病気が関係していることがあります。そのような症状があるときは、ストレッチは中止して整形外科などを受診するようにしてください。無理にストレッチは行わないようにしましょう。

※Dr.ストレッチの店内では、下記の写真のようにベンチマットの上でストレッチを行いますが、自宅で股関節のセルフストレッチをするときは平らな床の上などで行いましょう。

ストレッチの心得

体の柔軟性は人によって違うので当然、柔らかい人も硬い人もいます。たとえ、写真のようにできなかったとしても無理に行う必要はありません。“筋肉を気持ちいいと思うところまで伸ばす”ことが重要で、そこまで伸ばすことで効果は十分に期待できます。

また、無理に伸ばすことで筋肉を傷めてしまうこともあるので注意が必要です。とはいえ、まったく痛みのないところで止めてしまうと効果が見込めないので、その加減がポイントです。痛いと思う少し手前でキープするように心がけるとよいでしょう。

股関節のストレッチ①

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1 両ひざを曲げて座り、両手は肩幅に広げ後ろについて、上体を安定させます

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2 両ひざを左にゆっくり倒して、そのまま10秒キープします。このとき、太ももの内側と太もも側面の脚の付け根あたりの筋肉が伸びていることを意識しましょう

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3 続いて右にゆっくりと両ひざを倒し、そのまま10秒キープします。このとき、太ももの内側と太もも側面の脚の付け根あたりの筋肉が伸びていることを意識しましょう

4 これを互いに2回繰り返します

股関節のストレッチ②

【ハムストリングスを柔軟にするストレッチ】

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1 脚を伸ばして座ります。このとき背筋はまっすぐ伸ばします

3-2
2 右脚を左脚のももの上に乗せます

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3 両手で伸ばした脚先をつかみにいき、そのまま10秒キープします。このとき、前脚の太ももの裏側の筋肉と曲げている脚側のお尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう

4 反対側の脚も同じように行います。

5 これを互いに2回繰り返します

股関節のストレッチ③

【骨盤の前後のバランスを正すストレッチ】

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1 片膝立ちの状態になります。このとき背筋をまっすぐ伸ばし、左脚が90℃になるように前に出しま
す。脚の付け根と太ももの前の筋肉が伸びていることを意識しましょう

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2 上半身を前に倒して両肘を床にゆっくりと近づけていきます。このとき左脚の膝が正面を向くようにします。この状態を10秒キープします。このとき、前脚の太ももの裏側にある筋肉と後ろ足のおなかまわりの筋肉が、伸びていることを意識しましょう

3 右脚も同じように行います

4 これを互いに2回繰り返します

股関節のストレッチ④

【寝ながらできるストレッチ】
股関節にできるだけ負担をかけないように、寝ながらできるストレッチです。

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1 仰向けに寝て両腕はリラックスさせ、軽く開いてベンチにつけます

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2 上半身は天井を向いたまま、右脚を左脚のひざの上に乗せます。右脚が90℃になるようにしながら左手で右脚のひざを押さえます。このとき、お尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう

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3 左脚を曲げて右手でつかみ、かかとをお尻の方に近づけるようにします。このとき、おなかの両側の筋肉が伸びていることを意識しましょう
この状態を10秒キープします

4 反対側の脚も同じように行います

5 これを互いに2回繰り返します

この他にも、寝た状態で骨盤を上下させることで股関節をほぐすストレッチがあります。

1 仰向けに寝て、膝を曲げないようにまっすぐに伸ばします
2 片方の骨盤を下にずらします。このまま5秒キープします
3 反対側の骨盤も下にずらします。このまま5秒キープします
4 これを互いに2回繰り返します

股関節が痛くなるまえに、ストレッチで予防

【股関節痛を予防するストレッチ①】

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1 片ひざ立ちの状態になります。このとき、背筋をまっすぐ伸ばし左脚が90℃になるように前に出します。脚の付け根と太ももの前の筋肉が伸びていることを意識しましょう

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2 右ひざを曲げてつま先を左手でつかみます。このとき、背筋をまっすぐに伸ばします

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3 上半身を左脚の外側にひねり、この状態を10秒キープします。このとき、後ろ脚の太ももの前側とおなかの両側の筋肉が伸びていることを意識しましょう

4 反対側の脚も同じように行います

5 これを互いに2回繰り返します

【股関節痛を予防するストレッチ②】

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1 仰向けに寝て両脚をそろえてひざを曲げます。両腕はリラックスさせ、軽く開いてベンチにつけて上体を安定させます

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2 上半身は天井を向いたまま両膝をつけたまま左へ倒していき、腰をゆっくりとひねります。このとき骨盤からまわすイメージを持つと大きくひねることができます

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3 右手を斜め上の方向に伸ばします。このとき、おなかの両側・胸の上部・お尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう

4 反対側も同じように行います

5 これを互いに2回繰り返します

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股関節をストレッチポールで柔らかくする

人間の背骨はまっすぐではなくゆるいS字カーブを描いています。重い頭蓋骨を支え、体を自由に動かすことができるようにするために、背骨はS字カーブ状になっています。ところが、日常生活で前屈みの姿勢を取る、足を組んで座わるといった動作を繰り返すことによって、背骨のS字カーブは崩れてしまいます。

このS字カーブのゆがみなどを矯正する健康器具として開発されたのがストレッチポール。プロアスリートやトレーナーもその効果に注目し、ストレッチやトレーニングに採用されている“ストレッチポール”を使ったストレッチをご紹介します。

【股関節を柔らかくするストレッチ】

8-1
1 ストレッチポール(以下、ポール)を縦に置きます。ポールの端にお尻を乗せ両手を床につけます。そのまま両手で体を支えながら、ポールに背中を沿わせるようにして仰向けに寝ます

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2 両足を左右に倒して、足の裏を重ね合わせます。この状態を10秒キープします。このとき、両脚の太ももの内側の筋肉が伸びていることを意識しましょう

3 これを2~3回繰り返します

【お尻と背中まわりの筋肉を鍛えるストレッチ①】

9-1
1 ストレッチポールを横に置きます。真ん中にお尻を乗せ両ひざを立てて仰向けになります

9-2
2 左脚を右脚のひざの上に乗せます。このとき、左脚は90℃になるようにします。このとき、背中の筋肉が伸びていることを意識しましょう

9-3
3 上半身は天井を向いたまま、左脚をストレッチポールに近づけ右手でひざを抑えます。この状態を10秒キープします。このとき、背骨の両側の筋肉が伸びていることを意識しましょう

4 右脚も同じように行います

5 これを互いに2回繰り返します

【お尻と背中まわりの筋肉を鍛えるストレッチ②】

10-1
1 ストレッチポールを横向きに置き、腹ばいの状態で両ひじを立てます。このとき、お尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう

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2 手を伸ばしながらストレッチポールを斜め前に転がしていきます。このとき、背骨の筋肉が伸びていることを意識しましょう

ストレッチの効果を実感できるのはいつ頃?

ストレッチは、使い続けた体をリセットするために行うのがおもな目的ですが、この他にも、朝起きて水分補給をした後に行うと気分良く一日を過ごすことができます。また、寝る前にストレッチを取り入れることで、リラックス効果も高まるので質の高い睡眠を促すことにもつながるでしょう。

ストレッチは継続することが大切です。何事も習慣化するには時間がかかりますが、日常のちょっとした空き時間にストレッチを行い、3カ月程度続けていくと効果を実感できるのではないでしょうか。

ストレッチを継続することが大切な理由は?

実は、ストレッチを毎日行うのが理想というのには理由があります。それは、体が硬い人の脳は、体が硬いことを正常だと記憶しているというのです。そのため、ストレッチをして伸ばせる許容範囲を超えると違和感や痛みを出して、それ以上伸ばさないように警告してくるのです。

毎日ストレッチを行うことで、脳の中で筋肉が伸ばせる許容範囲が更新されます。少しでもいいので毎日続けることが理想なのです。

ストレッチを長続きさせるコツは、回数や時間を決めずに、「いつでも時間があるときにやろう」というスタンスを持つことがポイントです。

もし、「毎日、股関節のセルフストレッチをしているのに、あまり効果が実感できない」という場合は、ストレッチの形だけをまねしているだけで、十分に体がほぐれていないという場合があります。ストレッチは必ず正しい姿勢で、どの部分を曲げてどこを伸ばしているのかを意識しながら行いましょう。

使い過ぎや使っていない筋肉を伸ばすのはとても気持ちがいいものです。意識しなくても体が疲れたときに、体を伸ばして“伸び”をする行為は誰でもしているのではないでしょうか。それは、筋肉を伸ばすことが気持ちいいということを本能的に知っているからです。

たとえ、どんなに体が硬くても、高齢であってもストレッチを続けることで筋肉は柔らかくなります。ストレッチは器具や専用のマットがなくても気軽にできるのがメリットでもあります。

無理のない範囲で、毎日の生活に取り入れるように心がけることで、股関節痛の改善や予防にもつながります。上記のストレッチを参考に、ぜひトライしてみてください。

股関節は骨盤と大腿骨をつなぐ関節です。上半身と下肢をつなぐ部分にあたるので、股関節に痛みがあると、お尻や腰、膝などに負担が生じ影響が出ます。

股関節がひどく痛む、継続的に痛みを感じる場合は何らかの病気が原因ということもあるので必ず受診を。股関節のちょっとした痛みは、股関節を支える筋肉が硬くなっているために起こります。

股関節痛の改善や予防にはストレッチが効果的です。ストレッチをすることで股関節が柔らかくなり基本的な動作がスムーズになるだけでなく、リンパの流れや血流も促進されるので肥満や冷え性の改善など、健康面と美容面の両方に効果が期待できます。

正しい姿勢でゆっくりと、ほぐしている部分を意識しながら毎日続けることが大切です。

取材・文/高橋晴美

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取材・監修者プロフィール
中村竜太
Dr.ストレッチ テクニカルトレーナー
世界三大ミスコン「ミスワールド」大会のサポートトレーナーや、オリンピック種目「3人制バスケ」などアスリートのサポートトレーナーとして活躍。サロンやエステの講義活動も行う。資格はNASM-PES FMS
ストレッチ専門店「Dr.ストレッチ」 https://doctorstretch.com/
メディカルグローアップアカデミー  https://mgac.jp/

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