中高年の腰の痛み。発症要因とその対策とは?

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我慢できない腰の痛み、慢性的な腰痛、足の痺れ……。腰に負担がかかる仕事が多い現代社会では、このような症状を訴える人が急増していると言われています。腰痛を改善・予防するには、どんなことに気をつけて、どんな対処をしたらよいのでしょう。腰痛外来のある平沼整形外科クリニック、院長の平沼尚和医師にお話をうかがいました。

目次

 

腰のはたらきと仕組みについて

腰は身体の中心部にあり、私たちの身体の中でとても大切な部位です。人間は四つ足の動物時代から二足歩行の動物へと進化しました。二足動物の体幹を支える役目をしているのが脊椎、つまり背骨ですね。

背骨の土台になるのが腰椎。腰椎の周りはたくさんの筋肉があり、腰椎を支えています。立って歩かなければ、おそらくそんなには腰椎に負担はかからないはずです。腰に痛みが起こるようになったのは二足歩行になってから。腰痛の歴史は長いのです。

腰痛を正しく理解するには背骨の仕組みも理解する必要があります。私たちの身体はいくつかの骨が連なってできており、背骨は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨に分けられていて、骨盤に連結しています。自然に立った状態で横から見ると、背骨は前後に少しずつ彎曲(わんきょく)しています。

このように、背骨がS字にカーブしていることで身体を柔軟に動かしたり、運動による衝撃や筋肉への負担を緩和したりと、立っている姿勢のバランスを正常に保つことができるのです。そして私たちがふだん「腰」と呼んでいる部分は、背骨の下部から骨盤にかけて曲がったり伸びたりする部分を指します。

腰には主に「身体を支持する」、「運動の中心機能」、「脊髄という神経の束を保護する」という3つの役割があります。

3つの腰のはたらき

①身体を支持する
脊椎は身体の中心軸にあり、上半身を支えます。また、上半身にかかる力を骨盤を介して下肢に伝えます。

②運動の中心機能
腰の部分が硬いと私たちの身体は思うようには活動できません。脊椎の一つ一つの骨の動きは少なくても、前後左右への動きなど、腰を含めた脊椎全体としては運動機能があります。

③脊髄という神経の束を保護
脊椎には脊髄という神経の束が入っており、そこから末梢神経がさらに身体全体に分配され、運動や知覚を伝達しています。

腰の痛みがおこる原因

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腰は体重を支えなくてはいけない部位です。骨や筋肉が衰えると体重を支えきれなくなりますから腰に痛みが出るのです。中高年は特に腰の痛みが出やすいですね。

腰は前かがみになるだけでも、立った状態の時に比べて5〜6倍の負担がかかっています。そこに体重以外の負荷がかかってくると支えきれなくて痛みが出ます。

腰椎の後方に左右一対の関節があります。その椎間関節に負担がかかれば、これも痛みが出ます。椎間関節は後ろ側にあるので、腰をそらしたときに痛みます。この椎間関節や腰椎の前側の筋肉が疲労すると、足にしびれや痛みといった違和感が出ることがあります。

椎間板ヘルニアでも腰痛と脚の痛みしびれが出ますが、椎間関節や筋肉性の痛みでも腰痛と脚のしびれがでるので、鑑別が厄介です。

腰の痛みを起こす病気

腰の痛みを訴えて来院される方はたくさんいるのですが、実は病名がつくのはそのうちの1~2割です。そのほかは原因がわからない。病名を特定できないから「腰痛症」という名前がつくのです。

腰が痛いというのは肩こりと同様、自覚症状のある“訴え”なんです。神経でも骨でもなく他に原因がある。病名がつくものは以下が代表的なものです。腰の痛みを訴えられている場合は、まず以下の病気の症状がないかを調べます。

◆主な腰の病気とは?

椎間板ヘルニア
腰椎の椎間板に起こる障害で、椎間板の中身が脱出して神経を圧迫・刺激し、腰痛のほかに足のしびれなどを引き起こします。主に20〜30代といった比較的若い人に多くみられます。

デスクワークや運転、看護などの事務職や軽作業をする人がかかりやすいと言われています。寝ているときが一番楽で、中腰や前かがみになっているときが痛く、次第に腰痛のために椅子に座っていることができなくなります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう
比較的高齢の人に多い腰部疾患です。脊柱管は背骨、椎間板、椎間関節、黄色靭帯などで囲まれた脊髄神経が通るトンネルです。

老化により脊柱管が狭くなり、中の脊髄神経が圧迫を受け神経の血流が低下して、腰の痛み・足のしびれを起こし、長時間続けて歩けなくなります。薬物療法で症状を和らげますが、難しい場合は、手術で狭くなっている脊柱管をひろげ、脊髄神経の圧迫を取り除きます。

筋・筋膜性腰痛(きん・きんまくせいようつう)
いわゆる腰痛症の中でかなりの割合を占めるのが筋・筋膜性腰痛です。動き始めに痛みが出て、動いていると腰痛がやや軽くなります。また安静にしていると腰痛が軽減するという症状です。

腰背筋膜は腰部全体を覆っているので、痛みの部位も骨盤、仙骨、廃部とさまざま。筋肉疲労や姿勢異常が原因とされています。治療はリハビリや薬物療法が主体となります。

骨粗しょう症
年をとると骨の量が減り、骨は脆くなって折れやすくなります。この状態が骨粗しょう症で、高齢の女性に多く発症し、脊椎の圧迫骨折を起こすこともあります。老人性骨粗しょう症は体質や老化に伴う女性ホルモンの欠乏、運動不足、カルシウムの摂取不足などが原因です。

骨粗しょう症は脊椎だけでなく全身の骨に起こり、脊椎骨がつぶれて背中から腰にかけて円く曲がってしまいます。骨量は20歳代でピークになり、閉経後に急速に減少します。若い頃の無理なダイエットは、老後の骨粗しょう症に悩まされる原因となるので注意が必要です。

腰椎分離(ようついぶんり)・すべり症
激しいスポーツなどで脊椎の関節部分が分離すると、腰椎分離症となり、腰痛が起こります。また、分離症の上の腰椎が前方にすべり出たものを腰椎分離すべり症といい、腰椎がずれることによって脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて痛みが出ます。

腰椎分離症は運動を控える、仕事を減らす、安静にする、コルセット療法などの一般的な治療が有効ですが、腰椎分離すべり症では改善しない場合は手術となることもあります。

変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)
年をとると身体のあちこちで老化が始まります。椎間板の本体である髄核(ずいかく)の水分が少しずつなくなり、椎間板は上下に薄くなった状態となって弾力性が失われます。

椎間板のクッション性が失われることで椎間板を挟む上下の椎体に「骨棘(こつきょく)」という骨の出っ張りが現れます。この骨棘が神経を刺激・圧迫して痛みや痺れを引き起こす場合があり、その病態を変形性腰椎症と言います。

痛みが強い時は鎮痛剤の服用やけん引、温熱療法を行います。けん引療法は腰を引っ張る治療のことで、温熱療法はホットパックや赤外線、マイクロ波などで腰を温める治療法です。

腰の調子が悪くなったときの症状

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腰痛の起こり方には、何かの動作をきっかけとして起こる急性のものと、長く続く慢性のものがあり、それぞれ原因も治療方法も異なります。

急性の腰痛は、中腰で物を持ち上げようとしたとき、後ろを向いたとき、すべりそうになって踏ん張って堪えたとき、などの日常のちょっとした動作がきっかけとなって起こります。また、くしゃみや咳でも起こる場合があります。

このようなときに起こった腰痛はほとんどの場合、重症の腰痛ではないので、慌てず、痛みの出る動作を避けて生活を送ってください。数日〜1週間くらいで痛みは取れていくはずです。ただ、このタイプの腰痛は繰り返すことが多いので、念のため痛みがなくなった場合でも医師の診断を受けておくと安心です。

次に長期間続く慢性の腰痛の場合です。慢性の腰痛は、いつから始まったのかはっきりしないけれど、腰にじわじわとした重苦しい痛みが続くのが特徴です。

3ヶ月痛みが続いている場合は慢性腰痛症と呼ばれます。この場合、原因の多くは腰椎の加齢的変化に加えて、運動不足、不良姿勢、長時間同一姿勢などが挙げられます。慢性腰痛の場合は日常生活で腰に負担をかけないように心がけ、再発予防に努めることが大切です。

一般的な腰の痛みの症状は?

・腰が疲れやすい
・腰がだるい
・すぐ腰が痛くなる
・身体を動かすと腰が痛い

基本は腰全体の痛みを訴える方が多いですが、左が痛い、右が痛い、腰からお尻にかけて痛い、足の裏が痛い、しびれるなど症状はさまざまです。

腰がだるい、重いといった症状だけで来院される方は少なく、痛みが強くなってから来られる方が多いのですが、いずれにせよ状態が和らいでもまた再発する可能性があるので、違和感がある場合は、早めに医師に診てもらう方が安心だと思います。

腰の痛みの治療方法

ひとくちに腰痛といっても、発症のきっかけ、現在の症状、痛みの性質と程度、その原因、年齢、仕事や家庭の環境によってさまざまな腰痛疾患が含まれるため、治療法もいろいろ考えられます。

とはいえ、原因がわからない場合の腰痛症も、病名がつく腰痛症も、基本的には治療法は共通しています。医療機関で医師が行うのは、手術を行わない「保存療法」か「手術療法」です。これ以外にも、医師以外が行う鍼灸やマッサージ、カイロプラクティックなどの民間療法もあります。

腰痛の原因の中には脊椎の骨折や炎症、悪性腫瘍の転移など重大な病気が隠れていることもありますので、腰痛になった場合には、まず整形外科で診察と治療を受けることをおすすめします。

◆手術を行わない「保存療法」

①安静にする
急性の腰痛の場合は、腰への負担を軽くするために痛みの出ない範囲での活動が一番大切です。

②理学療法
自動的、または他動的に身体を動かすストレッチやマッサージのほか、電気や温熱などの物理的な力を人体に加えることにより、痛みを軽くし、かつ機能の回復をはかります。
骨盤けん引療法、腰痛体操などの運動療法、ホットパックなどの温熱療法などがあります。

③装具療法
症状によっては、各種のコルセットを着用し、腰部に安定をはかります。

④薬物療法
薬は痛み止めですね。鎮痛剤をはじめ、筋肉性の痛みであれば筋肉を緩める薬、筋弛緩剤などを処方します。

神経障害であればビタミンB12、血液の流れをよくするオパルモンやプロレナール、痛みをコントロールするリリカやオピオイドなどもありますが、副作用の危険性も伴うので、患者さんと相談してから処方します。

高齢になると持病がある方も多く、すでに10種類くらい毎日薬を飲んでいる方もいます。薬は胃を荒らしますから、そういった方には漢方をすすめます。腰痛には漢方薬はよく効きます。

⑤神経ブロック
椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など神経の圧迫や締め付けが原因の病気で行います。
これも薬物療法の一部ですが、薬でも効果がないときに手術の前段階として行う特殊な方法です。

また腰の筋肉が痛くなってきたときに、指で押して探っていくと痛い場所が見つかります。それをトリガーポイントと言うのですが、そこに局所麻酔を打つトリガーポイント注射もあります。

◆手術療法

理学療法、薬物療法などを行っても腰痛が改善しない場合は、最後の手段として手術を考慮します。脱出した椎間板を摘出したり、神経を圧迫している椎弓(ついきゅう)と呼ばれる椎骨の一部分を切除したり、不安定な腰椎を固定する手術などがあります。

腰の痛みを和らげる方法

日常生活の中で腰に痛みを感じたらまず痛みの出ない範囲で活動するようにしましょう。じっと寝て安静をとるのはよくありません。寝るときはもっとも楽な姿勢で布団などの上に横になりましょう。

背中を丸めて両ひざを抱えるようにして横向きに寝ると楽になります。仰向けに寝た方が楽な場合はひざの下に枕を置くか、足の下に座布団などを重ねて置くなど、股関節やひざの関節を曲げた状態にします。自分なりの楽な姿勢で寝てください。そして腰を温めることも大事です。

お湯にゆっくり浸かるのもいいですし、腹巻などで腰を温めるだけでも効果的です。市販の湿布もバカにはできません。冬場であれば温感タイプの湿布で温めながら鎮痛しましょう。

腰に負担をかけないための生活で気を付けること

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腰痛症の原因には、背筋や腹筋の筋力の低下、腰椎の老化、運動不足などが背景としてあります。多くは姿勢が悪いことが直接の原因になっていることが多いと言われています。腰に負担をかけないために、日常生活でできることはたくさんあります。

体重コントロール
お腹が出ていると立ち姿勢が反ってしまい腰に負担がかかるので、そういう意味では体重コントロールは大切です。背骨を支えている骨の周りの筋肉を背筋腹筋ともにバランスよく鍛えたいですね。

歩き方
歩き方というよりも、足にあっていない靴やヒールの高い靴などを履くと腰に負担がかかるので注意が必要です。

また、今までと違う歩き方をしても負担がかかりますし、準備運動をせずにいきなり走ったり早歩きをしたりしても腰の痛みが出る可能性があります。

姿勢
立っているときよりも、座っているときの姿勢に注意が必要です。

椅子の座面のお尻の方に枕やタオルを置き、その上にお尻を乗せて座ります。直角より少し前に下がるイメージです。この姿勢になる椅子も販売されているのですが、腰に負担をかけない座り方です。

ストレッチ・運動
中高年の方におすすめしているのがとても簡単なストレッチです。うつ伏せに寝て、お腹に枕を置き、頭を少し浮かせます。これだけで大丈夫です。

転びやすくなる原因は背筋の衰えですから、高齢者の筋トレには有効です。反対に、腹筋を鍛えるなら仰向けに寝ておへそを覗くだけでOKです。これをワンセットとして10回。

1日に2〜3セットやってもらいたいですね。あとは腰をひねるストレッチもおすすめです。腰から太ももにかけての筋肉を伸ばしてあげましょう。

腰湯
入浴は長めに身体を温めてください。心臓に負担がかからないよう、みぞおちくらいの高さまでのお湯に浸かり、40〜42℃くらいのあまり熱くならない温度で10〜15分温まりましょう。

食事
直接腰痛を引き起こす原因になるような食べ物はないと思います。逆にこれを食べると腰痛に効く!という訳ではありませんが、日本人が摂らなくてはいけない栄養素の中で一番摂れていないのがカルシウムです。

骨粗しょう症はカルシウム不足が原因ですから、不足している方は多めに摂取することをおすすめします。ただ、中高年になると腸管の吸収能力が低下するので、せっかく摂取したカルシウムがスルーして外に出て行ってしまうことも。

これは加齢によるもので防ぐことができないので、食事をバランスよく摂ることも大切ですけど、高齢になったらサプリメントを服用した方がいいですね。確実に吸収されますから。

いかがでしたか? 腰は身体を支える大切な部位ですから、生涯を通してケアしていきたいものです。とはいえ、骨や筋肉は加齢によって衰えてくるのは仕方のないことです。

日頃から腰に負担をかけるような仕事や家事をできるだけ避けて、無理をしないことも大切です。また、偏った食生活で肥満になってしまわないように、食事にも注意しましょう。

どんな病気にも言えることですが、バランスの良い食生活と適度な運動は一番の病気の予防です!

取材・文/横田可奈

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取材協力・監修者プロフィール
平沼尚和
平沼整形外科クリニック 院長
日本医科大学卒。日本医科大麻酔科、日本医科大学整形外科、協友会屏風ヶ浦病院整形外科を経て、2005年に平沼整形外科クリニックを開業。肩こり外来を開設し、原因がそれぞれに違う患者さんにあわせた治療を行っている。

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