《医師に聞く》関節痛の原因と対処法

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成人の骨は200個以上あり、それらの骨が360個以上あるとされる関節でつながれているといわれています。全身にある関節がスムーズに動くことで、私たちは活動することができています。

しかし、ひとたび、どこかの関節の動きが悪くなると、途端に痛みなどのトラブルが発生し、活動に支障が起きてしまいます。

代表的な関節痛の病気や日常生活の中で関節痛を予防する方法などについて、もんなか整形外科の佐藤芳貞院長に教えていただきました。

目次



関節痛になるとどうなるの?

関節痛は関節疾患の主症状のひとつです。腕や脚の関節だけではなく脊椎や骨盤の関節に起こることもあります。また、炎症を起こしている関節に熱と腫れがあったり、関節を覆う皮膚が赤くなったりすることも。痛みが関節を動かすときだけに起こることもあれば、安静にしているときにも痛むこともあり、さらに、関節痛の原因に応じて発疹、発熱など他の症状があらわれることもあります。
関節痛を引き起こす主な病気は「変形性関節症」と「関節リウマチ」です。

変形性関節症とは、関節の構成成分である軟骨がすり減ることで、関節の形態が著しく変形してしまう病気です。軟骨がすり減る以外にも関節内で多くの変化が生じるため、関節の痛みや腫れなどが現れます。加齢や使いすぎなどで関節が痛むと考えられています。代表的な変形性関節症は下記の2つです。

・変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
・変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
この他に、大腿骨壊死(だいたいこつえし)があります。

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変形性股関節症とはどんな病気?

股関節の役割

股関節は体の中心部にある大関節です。股関節には下肢をさまざまな方向に動かす役割があります。関節を動かす可動域が広く、脚を前後左右に動かすだけでなく、外側や内側に回すなど多くの動作に関連しています。

股関節のしくみ

股関節は、太ももを支える「大腿骨(だいたいこつ)」と、腰を下肢から支える「骨盤」がつながる部分です。大腿骨の先端部分の「大腿骨頭(だいたいこっとう)」は丸くボール状になっており、それを、おわんの形をした「寛骨臼(かんこつきゅう)」が包み込む構造です。

大腿骨頭と寛骨臼の表面は、クッションの役割を持つ「関節軟骨」に覆われています。関節軟骨は、コラーゲンなどからなる弾力のある組織で、潤滑機能を持つ関節液をたっぷり包んでいます。

股関節全体は「関節包(かんせつほう)」という袋状の組織に包まれており、内部は関節包の内側の「滑膜(かつまく)」から分泌される「関節液」に満たされています。関節軟骨は骨と骨が直接ぶつかるのを防ぐクッションの役割を果たしています。

このような股関節の組織が何らかの原因で損なわれることがあります。それが変形性股関節症です。

女性に多く2つのタイプに分かれる「変形性股関節症」

さまざまな原因によって起こる股関節の痛みのなかで、最も多いのが変形性股関節症です。男性よりも女性に多く、患者数は男性の5倍以上ともいわれています。年齢をかさねるに従い、関節軟骨がすり減ることが原因で、40~50代ごろより多く発症します。大きく一次性と二次性に分類されます。

一次性股関節症
股関節の形に異常がないのに発病するものです。加齢や激しいスポーツ、過度の肥満などの影響で関節軟骨が少しずつすり減ってしまうことが原因と考えられます。

二次性股関節症
もともと股関節の形に異常があり、それが原因で引き起こされるものです。寛骨臼(かんこつきゅう)が、十分に大腿骨頭を包み込んでいない「寛骨臼形成不全」が最も多い原因です。

もともと、正常な形の寛骨臼に比べて大腿骨頭を包み込む面積が狭い状態であるため、体重負荷を広く分散することができず、関節は徐々に傷つけられていきます。

やがて、関節唇が傷ついたり滑膜に炎症が起きて、脚の付け根や太ももが痛くなったり、左右の脚の長さに差が出て脚を引きずって歩いたり、痛みで歩行が困難になるといった症状があらわれます。日本人の8~9割がこのタイプで患者の9割は女性です。

変形性股関節症と診断された場合の対処法

治療は年齢、原因となる病態、進行状況により選択されます。初期であれば保存療法、進行している場合は手術が行われます。

保存療法
初期は痛みを緩和するために副作用の少ない消炎鎮痛剤を使いながら、運動療法を中心とした保存療法を行います。

手術
大きく分けて「骨切り術」と「人工股関節置換術」があります。

変形性膝関節症とはどんな病気?

膝関節の役割

体の下半身にある「股関節」「膝関節」「足関節」の3つの関節は、歩く、立つ、座るなどの動きに関わるだけでなく、体重を支える機能を備えています。

その中でも膝関節は、状況に応じて曲げ伸ばしを行い、例えば歩くときは約60度、いすから立ち上がるときは約100度、正座では約140度と広い可動域があるため負担も大きくなります。

膝関節のしくみ

膝関節は太ももの骨である「大腿骨(だいたいことつ)」と、すねの骨である「脛骨(けいこつ)」、膝のお皿の「膝蓋骨(しつがいこつ)」の3つの骨と、それらをつなぐ「靭帯(じんたい)」で構成されています。

大腿骨は膝の上部、脛骨は膝の下部にあり、大腿骨の端の丸みを覆うように膝蓋骨が組み合わされています。この3つの骨の表面は弾力のあるやわらかな軟骨で覆われており、クッションの役目を果たしています。

また、大腿骨と脛骨の間にある半月板(はんげつばん)にも、関節に加わる衝撃を吸収するクッションの役目があります。膝は重い体重を支える荷重関節(かじゅうかんせつ)のひとつなのですが、非常に不安定なつくりをしているといわれています。

シニアの女性に多い変形性膝関節症

変形性関節症は軟骨がすり減る、あるいは軟骨がなくなって膝の形が変形し、痛みや腫れをきたす状態をいいます。病状が進行すると、軟骨がすり減ったり、骨が露出したりして関節の表面がデコボコになり、膝の滑らかな動きがさまたげられます。

また、起立や歩行に大きな影響が出るため生活にも支障が出ます。介護が必要になるリスクの高い病気です。日本では患者の多くは50歳代以上の中高年の女性です。男性では60歳以上に多く、男女ともに年齢が高くなるほど増えています。

変形性膝関節症と診断された場合の対処法

治療法は下記の3つ。

・痛みに対しての対症療法(痛み止めの内服、ステロイドやヒアルロン酸の関節内注入)

・残された膝関節の機能を生かすための手術(関節鏡による手術、膝周囲の骨切り術)

・膝関節を人工関節に置き換える手術
治療の経過により、筋力を保つためのリハビリテーションなども行います。

大腿骨壊死とはどんな病気?

原因不明に起こる「大腿骨頭壊死(だいたいこつえし)」という病気も変形性関節症のひとつです。股関節を構成する大腿骨頭の一部に血が通わなくなり、骨組織が死んでしまった状態をいいます。

「大腿骨壊死はステロイド性、アルコール性、突発性に分類されます。過去に病気のため一時期、大量にステロイド(副腎皮質ホルモン)を服用したことがあるとか、アルコールを継続的に大量摂取していたことが、病気になりやすい危険因子であると考えられています」(佐藤院長)。

基本的には股関節を温存することを第一に考えますが、症状や重症度に応じて人工の股関節に置き換える手術を行うこともあります。また、大腿骨の膝関節側の内顆部(ないそくぶ)にも骨壊死が起こります。

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早期治療が大切な“関節リウマチ”とは?

膠原病(こうげんびょう)の一種で、膠原病性疾患の中で最も患者数が多く、また、男性よりも女性に多く30〜50歳代が発症のピークと考えられています。

関節リウマチは、自分の細胞が攻撃されて起こる自己免疫疾患のひとつです。免疫の異常により、主に関節を構成している滑膜に持続的な炎症が生じます。

手の指や足の指などの関節に関節炎が起こることが多いのですが、膝などにあらわれることもあります。主に手足の関節が腫れたり痛んだりしますが、関節だけでなく目や肺などの全身に広がることもあります。

朝起きたときに関節がこわばり手を握れない、また、全身のけん怠感や疲労感を持つことも大きな特徴です。

病気の経過

関節リウマチを発症してからの経過は個人差があります。発症後、短期間で多くの関節の破壊が進む人もいれば、初期だけに症状があり1~2年で自然と病状が穏やかになる人もいます。

「関節リウマチは根本的な原因は解明されてはいませんが、症例が多いので治験が進み現在では、治療薬がたくさん開発されています。早期に診断して治療を開始できれば、多くの患者さんの病期の進行を最小限に食い止められるようになりました。手術をするケースも昔に比べてかなり減ってきています。関節リウマチは一生、付き合っていく病気ではありますが、薬である程度コントロールができます。そういう意味では高血圧や糖尿病と同じなので、体に痛みや違和感があるときは早めに受診することが大切です」と、佐藤院長は言います。

どういう人が関節痛になりやすいの?

筋力がなく肥満の人
体重が重く筋力がなければ関節に負荷がかかってしまうため、関節痛が起こりやすくなります。

佐藤院長は、「筋力がなく肥満の方には体重を減らすように指導する方法もありますが、ダイエットは意外と難しいので当院では筋トレをおすすめしています。たとえ太っていたとしても、筋力があれば関節がダメージを負うことはないからです。ダイエットよりも筋トレの方が長続きする人は多く、それに筋力が強化できれば活動性が上がるので自然とやせていきます」と、アドバイスしてくださいました。

シニア世代の女性
一般的に女性は男性に比べて筋力が弱く、さらに、閉経後の女性は女性ホルモンの減少により骨密度が低下傾向にある人が多くなります。関節自体がもろくなっていると関節の不安定性が増すため、関節痛が起きやすくなります。

過去に外傷を負った経験がある人
「若いころにケガをした経験がある人。例えば靭帯を切ってしまった場合、手術をしても残念ながら健康なときとまったく同じ状態には靭帯を再建できません。負傷した部分には、ある程度の不安定性が出てしまいます」と、佐藤院長は話します。

入浴

関節痛を起こさないようにするには、日常生活のなかでどのような点に注意すればよいのでしょうか?
下記の6つの予防法を紹介します。

関節痛予防1~体は冷やさないようにする

体を冷やすと筋肉の動きが悪くなるので、血行を促すために体は冷やさないように意識して生活をすることが大切です。体を温める方法としては、お風呂にゆっくりつかること。また、寒い時期には使い捨てカイロを活用する、服装も保温性のあるインナーを着用して体を冷やさないようにしましょう。

関節痛予防2~生活スタイルを見直す

生活様式は畳に座る和式の生活よりも、いすを使った洋式の生活を選ぶ方がよいでしょう。床に座って使うちゃぶ台などよりも、いすに座るテーブルに変えることで立ち上がるときの負担が減ります。また、床に座って正座やあぐらをかいて座るよりも、いすやソファに座った方が股関節への負担が軽くなります。

畳に布団を敷く生活は、布団の上げ下げや起き上がるときに股関節や膝に負担になるので、ベッドに変えた方が楽です。

関節痛予防3~O脚や内股歩きを改善!

「O脚や内股歩きは股関節や足首に負担がかかる歩き方です。たとえ今は痛みがなくても、その状態を続けることで軟骨は確実にすり減っていくので、加齢とともに痛みが出てくる可能性が高くなります。その場合には靴の中に“測定版(そくていばん)”を入れるとよいでしょう。体重が膝の内側に偏るのを防ぐことができるので、O脚や内股歩きの矯正に役立ちます」(佐藤院長)。

関節痛予防4~ストレッチで関節を伸ばす

「ストレッチで体をいろいろな方向にできるだけ伸ばすようにしてください。伸ばすことで筋肉がやわらかくなり、関節の可動域も広がります。伸ばす方向が大切なのですが、例えば手をグーにしたときギュッと力強く握ることができますが、手をパーにして伸ばしてみると、あまり強く伸ばすことはができません。私たちの体は、屈筋腱の方が強く伸筋腱の方が弱くできています。ストレッチをするときは、特に屈曲ではなく伸展する方向に伸ばすことがポイントです」(佐藤院長)。

関節痛予防5~足を休ませる時間をつくる

足の裏には小指からかかとをつなぐ「外側縦アーチ」と、親指とかかとをつなぐ「内側縦アーチ」と、親指と小指をつなぐ「横アーチ」があります。

この3本のアーチが程よく弓状になっていることが、足を健康に保つ理想的な状態です。ところが、特に女性はハイヒールなど、かかとが高く先が細くなった靴を長時間、履き続けることが多いため、どうしてもアーチが崩れやすくなります。

「1日の中で、ハイヒールや足を締めつけるような硬い素材の靴から、かかとが低くやわらかい素材の靴に履き替えて足を休ませる時間をつくることも必要です」(佐藤院長)。

関節痛予防6~インソールでクッション性を高める

「人間の足、膝、骨盤には外からの衝撃を吸収するクッションの役割が備わっています。その機能を最大限に生かすには、靴の中にインソールを入れてクッション性を高めるという方法があります。それだけで、足首・膝・股関節への負担を減らすことにつながり、新しい靴を買うよりも経済的なので、当院ではその方法をおすすめしています」(佐藤院長)。

最後に佐藤院長が、「患者さんの中には、膝や腰などに強い痛みを感じるようになってから受診される方が多くいます。病状が進行すればそれだけ完治するまでに時間がかかってしまうので、体に違和感があるときは、できるだけ早い段階で医者に行って診察を受けてください。そして、わからないことがあれば質問をして、ご自身の病状をしっかり把握するようにしてほしいと思います」と、話してくださいました。

関節痛を引き起こす主な病気に「変形性股関節症」「変形性膝関節症」「関節リウマチ」があります。3つとも中高年の女性に多く発症しています。痛みが軽度であれば保存療法で対応できますが、痛みが継続したり、骨が変形したりすると外科治療が必要です。

現時点では「関節リウマチ」の原因は解明されていませんが、早期に診断して治療を開始できれば、病期の進行を最小限に食い止められるようになりました。

シニア世代になっても関節痛と無縁でいられるように、予防法をチェックして改善点がないか確認しましょう。そして、少しでも体に違和感があるときは早めに受診することが大切です。

取材・文/高橋晴美



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取材協力・監修者プロフィール
佐藤芳貞
もんなか整形外科院長
1963年生まれ、東京都出身。埼玉医科大学出身。昭和大学兼任講師。患者さん目線の医療を心がけ、整形外科を中心に気楽に話ができる、なんでも相談できるいわゆる「町医者」を目指し毎日、患者さんと向き合っている。
もんなか整形外科:http://www.monnaka.jp/

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