《専門家監修》膝の痛みには筋トレ!

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膝が痛くて「スムーズに歩けない」「立ち座りがつらい」といった悩みを抱える人は少なくありません。そんなときは、筋力トレーニングでできるだけ膝の動きをサポートすることが重要です。そこで、リハビリテーションに力を入れている久我山整形外科ペインクリニック院長の佐々木政幸先生に、自宅でできる筋トレについて指導していただきました。膝の痛みが現れる病気や治療法などもフカボリしているのでお見逃しなく!

目次

 

筋肉や骨に支えられている膝

膝は、太ももの骨とすねの骨、膝の皿の骨から成り立っています。これらの骨の関節は軟骨に覆われており、膝関節は体の中で最も大きな関節です。それを安定させるために、靱帯が骨と骨を前後左右からがっしりつなげています。

太ももとすねの骨の間には半月板という軟骨が入っていて、膝にかかる衝撃を分散・吸収するクッションの役目を果たしています。

このように膝は、骨、筋肉、関節、靱帯によって支えられているおかげで、歩く、座る、しゃがむ、跳ぶ、回る、階段の上り下りをするなどといった動作がスムーズにできるのです。

膝が痛くなるのはなぜ?

しかし、動くたびに膝には大きな負担がかかるうえ、関節や軟骨は年齢を重ねるとともに劣化します。そのため高齢者の多くが、膝に痛みを抱えています。劣化した軟骨は、自然にすり減っていきます。

すり減った破片が「関節包(関節を包む袋)」の内側を覆う「滑膜(かつまく)」の細胞を刺激して、関節包に炎症を起こし痛みが生じると考えられています。

また、加齢だけでなく、ランニングなどの過度な運動やサッカーなどの激しいスポーツ、登山などの脚を使うレジャーで膝に大きな負担がかかり、傷ついたり痛みが出たりすることもあるでしょう。

加齢とともに増える膝の病気

膝の痛みで一番多いのは、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。詳しく解説します。

変形性膝関節症

加齢や長年のひざにかかっている負荷によって、膝関節のクッションの役割をしている軟骨がすり減り、膝関節の炎症や変形が生じて痛みが現れる病気です。

自覚症状のない人を含めると、推定約2,500万人が罹患していると言われています。女性は50代半ば、男性は60代半ばから発症する人が目立ち、女性に多い傾向があります。高齢になるにつれて患者数は増えます。

症状
こわばりなどから始まり、最初は「膝に違和感がある」程度。膝に負担がかかると痛みを感じますが、一時的なもので時間がたてば治まります。しかし徐々に進行して変形が進むと、痛みをより強く感じます。

膝の曲げ伸ばしがスムーズにいかなくなり、正座をしたりしゃがみ込んだりすると痛みが。また、階段の上り下りもつらくなります。炎症が出て、膝に水がたまったようなむくみが出ることもあります。

末期になると、熟睡できないほど痛みが強く現れ、日常生活に支障が出るほどです。膝の変形もかなり進み、関節の変形が目立ちます。

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変形性膝関節症の原因は加齢やケガ

変形性膝関節症の原因は、膝に負担のかかる環境が複雑に絡み合っていることがほとんどです。原因をいくつか挙げてみました。

  • ・加齢
  • ・筋肉の衰え
  • ・スポーツなどでの長年の膝への負担
  • ・脚に合わない靴を履いている
  • ・関節にかかる骨折で関節軟骨を傷めた
  • ・靱帯損傷(じんたいそんしょう)
  • ・膝関節のねんざ
  • ・半月板損傷

など

治療法
初期は痛みがすぐに治まるため、痛みがあっても「年のせいだから仕方ない」「そのうち治るだろう」と思い、受診する人は多くありません。

しかし、変形性膝関節症は自然に治ることはなく、放置すれば痛みは悪化する一方です。

適切な治療を受けることで症状の進行を遅らせ、以前のような日常生活を送ることもできます。膝に違和感や痛みがあるときは、我慢せずに専門医の診察を受けましょう。

変形性膝関節症の一般的な治療法

治療法は、病気の進行に合わせて選ばれます。

運動療法
筋力をつけることとストレッチを組み合わせて、関節の可動域を広げることが痛みを軽減するのに重要です。

即効性はありませんが、簡単な運動を毎日繰り返すことで、筋力を取り戻すことができます。無理をしてかえって症状を悪化させる人もいるので、医師の指導を受けながら続けます。

装具補助具を活用
杖やサポーター、足底板などを使って関節への負担を軽減させます。関節の負担を軽くし、変形の進行を遅らせることにも役立つので、遠出や運動をする際にはおすすめです。通常は、運動療法と合わせることで進行を防ぐ効果を狙います。

薬物治療
薬で、膝の痛みを緩和します。鎮痛剤の内服やヒアルロン酸注射、ステロイド注射が一般的で、関節の動きを滑らかにする、炎症を緩和させるといったことに役立ちます。

再生医療
保険外の治療になりますが、PRP(多血血小板療法)や幹細胞移植といった方法により、軟骨の再生を期待する治療です。まだ新しい治療で保険対象ではなく、数十万~百万円以上かかります。

手術
上記の治療で症状改善ができなかった場合には、選択肢のひとつになります。骨を削って変形を矯正する、人工膝関節に置換するなどいくつかの方法があります。

「変形膝関節症は、立ち座りや歩行に大きな影響を与えるため、QOL(生活の質)が著しく損なわれます。治療と並行して、体重コントロールをして肥満を防いだり、膝周囲の筋力を鍛えたりして、膝への負担を軽減させることを日ごろから心がけてください」(佐々木先生)

スポーツによる膝の障害

膝の痛みが現れるケースとして、スポーツによる関節の損傷が挙げられます。よく見られるのが膝靱帯損傷(ひざじんたいそんしょう)です。

膝靱帯損傷

関節を安定させる靱帯が、強い衝撃や大きな負荷がかかり損傷することです。靱帯は側副靱帯(そくふくじんたい)と十字靱帯(じゅうじじんたい)に分かれており、それらがバランスをとりながら関節を支えています。

一部が損傷したり断裂したりすると、一方に強く引っ張られて膝関節が不安定になってしまい、違和感や痛みを生じます。

症状は、損傷した靱帯やその程度によって変わります。

靭帯部分断裂……少し傷ついた程度であれば、一時的な痛みが出る程度なので、日常生活に大きな不自由は感じません。無理をしなければ、次第に痛みも引いていくでしょう。

靱帯完全断裂……靱帯が完全に切れてしまった状態なので、激しい痛みがあります。階段の上り下りなどもつらく、日常生活に支障が出ます。膝関節の不安定感もあり、骨がずれるような感覚や、歩行中に膝が抜けることも。

膝靱帯損傷の主な原因

靱帯の損傷は加齢や膝への負担の蓄積で起こることより、スポーツや交通事故などの突発的な事柄によって引き起こされることが圧倒的に多いです。靱帯の損傷が起きる原因には、接触型と非接触型があります。

接触型……スポーツのプレイ中や交通事故などで人や物とぶつかり、膝に強い衝撃を受けて靱帯を損傷してしまうもの。

非接触型……走った状態からの急停止、回転・方向転換、ジャンプの着地による強い衝撃などで、運動中に無理な力が働いたもの。膝に大きなひねりを加えることが原因です。

症状が軽度であれば、ギプスやサポーターで膝を支え、安静にすれば改善されることが多いです。

一方、靭帯完全断裂など重症の場合には、当初はギプスや装具での固定、その後に筋力トレーニングを行いますが、症状や活動性の高い人、例えばプロスポーツ選手などは手術をすることもあります。

加齢とスポーツなどによる障害

半月板は加齢に伴って劣化するので、40歳以上ではちょっとしたケガでも半月板損傷が起こりやすくなります。また、スポーツで膝のひねりや衝撃で引き起こされることも珍しくありません。

半月板損傷

半月板は、膝関節の中にあるC型をした軟骨の板。膝関節において衝撃を和らげるクッションの役割と、膝を安定させる働きがあります。半月板の損傷は、膝への強い衝撃や大きな負担、靱帯損傷の合併症などが原因です。代表的な症状を挙げます。

  • ・膝が腫れる
  • ・膝の内側もしくは外側に痛みがある
  • ・膝をまっすぐ伸ばすことができない
  • ・膝に水がたまる
  • ・正座やあぐらがつらい
  • ・膝を曲げ伸ばしするときに、ひっかかるような違和感がある
  • ・急に膝が動かなくなる“ロッキング”という状態になる

など

軽症であれば、テーピングや装具でサポートし、リハビリテーションを行います。湿布や鎮痛剤の内服、ヒアルロン酸注射やステロイド注射で対応することもあります。

半月板損傷は、損傷部位や断裂の仕方にもよりますが、悪化すると激しい痛みとともに膝が動かなくなる症状が特徴的で、これを「ロッキング現象」と言います。ゆっくりと曲がる方向へ慣らしているうちに膝は動きますが、痛みがひどい場合は救急車を呼ぶ必要があることも。

痛みが長引いている場合や、ロッキング症状になった場合は、半月板を切除する手術も視野に入れます。

膝の痛みを緩和する筋トレを習慣づけよう

膝の周囲の主な筋肉は、太ももの前側「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」、太ももの裏側「ハムストリングス」、お尻を覆う「大臀筋(だいでんきん)」、骨盤の横にある「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」などです。これらの筋肉が膝関節を動かし、安定させています。

筋力が弱いと、膝の曲げ伸ばしなどがスムーズにできないなど安定性を保つことが難しくなり、痛みを引き起こす原因に。痛みがあると膝を動かしにくくなり、さらに筋力が低下するという悪循環も起きてしまいます。

膝周辺の筋肉を鍛えると、筋肉が膝関節を支えるようになるため、膝関節自体が安定し、グラつきも減ることから、痛みの軽減が期待できます。それに伴い、痛みのせいで制限されていた日常生活の動作がスムーズになるでしょう。

また、膝関節は、左右に動いてこすれやすい特徴を持っています。そのため、筋肉を鍛えれば骨同士がこすれることも防ぎ、痛みを和らげることができます。

ここからは、自宅で簡単にできるストレッチと筋トレをご紹介します。簡単なメニューなので、継続して行ってください。

心がけておきたい筋トレルール

筋トレは安全に行わなくてはいけません。いくつかルールを挙げたので、覚えておきましょう。

・朝起きてすぐは、体がまだ硬いので避ける
・1日3~4回を目安に、小分けに行うのがベター
・無理はしない
・筋トレ後に膝に違和感が出てきたら、医師に相談を

まずは準備運動を兼ねたストレッチから

筋トレを始める前に、準備運動を兼ねたストレッチを行いましょう。ストレッチは固まった筋肉をほぐして柔軟性を高め、筋トレの効果をアップさせます。

太ももの裏側や内側、アキレス腱をほぐすなど種類がたくさんあるので、インターネットで検索したりかかりつけ医にアドバイスを受けたりするなどして、自分に合ったストレッチメニューを試してみてください。ここでは代表的なストレッチをひとつ紹介します。

太ももの裏側を伸ばすストレッチ

1.イスに浅く座り、片足を前に伸ばす
2.両手を、前に伸ばした太ももの上に置く
3.背筋を伸ばしたまま、脚に向かって上体を傾けて30秒キープ

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4.脚を替えて1~3を繰り返す

上体は無理に倒さなくてOK。背筋を伸ばしておなかから前に出すだけでもかまいません。

自宅で簡単にできる筋トレメニュー

膝周辺の筋肉を鍛えるのに役立つ筋トレです。気軽にスタート!

太ももの前側を鍛えるトレーニング1
1.イスに浅く座り、イスのふちにつかまる
2.片方の膝を曲げて床につける。もう片方は膝をまっすぐに伸ばして、足首は直角に曲げる
3.伸ばした脚をゆっくりと上げて、5~10秒キープ。脚は上げられるところまででOK

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4.上げた脚をゆっくりと下ろす。反対側の脚も同様に
5.2~4を5セット行う

太ももの前側を鍛えるトレーニング2
1.床に座って、後ろに手をつく。
2.太ももの間にクッション(ボールなどでもOK)をはさむ
3.左右の太ももでゆっくりとクッションに力を加え、5秒間押しつぶす

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4.太ももの力を抜き、クッションを外して少し休憩する
5.2~4を5セット行う

太ももの外側を鍛えるトレーニング
1.床に寝て、横向きになる
2.上の脚を伸ばしたまま、股を開くようにゆっくり上げる。間隔は20㎝くらいが目安

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3.5秒キープしたら、ゆっくり下ろす。反対の脚も同様に
4.1~3を5セット行う

下半身全体を鍛えるスクワット
1.脚を腰の幅くらいに開いて立ち、壁にもたれかかる
2.背中を壁につけたまま、ゆっくりと膝を曲げ、腰を落とす
3.30°くらい曲げたところで5~10秒キープ

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4.1~3を3セット行う

「ストレッチと筋トレは、どちらも反動をつけずにゆっくりと行うのがポイントです。ひとつひとつを個別に行うのが難しい場合は、ラジオ体操を習慣づけてみては。ラジオ体操は、筋肉をほぐして鍛えることもできる、ストレッチと筋トレを兼ね備えた体操です」(佐々木先生)

膝の痛みを予防する運動

膝の痛みが取れてきたら、無理をしない範囲で適度な運動をすることがすすめられます。中高年層には、高血圧、糖尿病、肥満などの改善にも役立ちます。ただし、運動をするときはかかりつけ医に確認してから始めるようにしましょう。

ウォーキング……誰でも簡単に始められるので、運動初心者に向いています。自分のペースで無理なく歩くことで脚の筋肉を鍛え、体力を増進させます。新陳代謝を高めるので、体重コントロールにもピッタリ。

歩くときは脚を引きずったりしないで、つま先で蹴り出してかかとから着地します。少し汗ばむ程度のスピードを保ち、息切れしてきたら休憩を。

自転車こぎ……サイクリングで気持ちよく走ったり、スポーツジムでエアロバイクに乗ったりするのもOK。歩くのに比べて膝に体重がかかる負担が少ないです。サドルが高すぎたり低すぎたりすると膝に負担なので要注意。

水中ウォーキング……水中は浮力があるので膝への負担が軽く、水の抵抗力で短時間でも筋力を鍛えることができます。水の中では勢いをつけず、自分のペースで歩くことがポイント。まっすぐ前を見て姿勢を正し、手で水をかくように進みます。

膝を守りたいなら、まずは体重管理から

歩いているときや移動するとき、片方の膝には体重の3~4倍の負荷がかかっていると言われています。体重50kgの人なら150~200kgの負荷がかかり、さらに、階段の上り下りで膝の負荷は体重の4~5倍に!

「体重が重いほど、膝にかかる負担も大きい。肥満の人は、膝の関節軟骨のすり減りが倍増しO脚もひどくなります。膝の痛みに悩んでいる人は、体重管理がとても重要です」と、佐々木先生は注意を促します。

肥満度は、BMIで計算することができます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)2

BMIが25に近い人や25以上の人は、積極的な体重コントロールが必要です。ただし、やみくもに「食べない」といったダイエットはいけません。カロリーの高い脂質や糖質を抑え、ごはんや麺類などの炭水化物も少し控えめに。

気をつけたいのは、たんぱく質不足です。たんぱく質が足りないと、筋肉が減って筋力が低下します。低脂肪で高たんぱくの魚、鶏肉、大豆製品などを選ぶとよいでしょう。

今回紹介した筋トレは、手軽に試すことができる簡単なものをセレクトしました。「もう少し筋トレメニューを増やしたい」「自分に合った筋トレをしたい」などと思ったら、リハビリテーション機器がそろっている整形外科を受診することも賢い方法です。

リハビリテーションの専門家である理学療法士に指導を受ければ、より効率よく筋力アップをはかれるに違いありません。

「膝に痛みがあると、動くことや外出することなどがおっくうになり、気持ちも落ち込みがちになります。膝の健康を守ることは、そのまま生活の質を高めることにつながります。膝の痛みは、治療を受けることの他に、自分でケアすることも大切。正しい筋トレを習慣づけて、イキイキした毎日を取り戻した人はたくさんいらっしゃいます。無理をせずに続けて、困ったことがあったらいつでも専門医に相談してください」と、佐々木先生はエールを送ります。

取材・文/内藤綾子

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取材協力・監修者プロフィール
佐々木政幸(ささきまさゆき)先生
久我山整形外科ペインクリニック院長
慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局後、慶應義塾大学病院や関連病院に勤務。2010年に現クリニックを開院。NPO法人「腰痛・膝痛チーム医療研究所」副理事長。市民講座の講師や、テレビコメント医師としても活動中。

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