軟骨をつくる成分、グルコサミンって関節にいいの?

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関節のクッションとしての役割を果たす軟骨。その軟骨に関わる代表的な成分として、グルコサミンがよく知られています。年齢を重ねるごとに「関節の動きが鈍い」「関節が痛い」となるのは、グルコサミンの減少が原因のひとつかも。

そこで、あらゆる関節痛の治療に詳しい久我山整形外科ペインクリニック院長の佐々木政幸先生に、グルコサミンについて解説していただきました。グルコサミンの働きや上手な補い方などについて、詳しくレポートします。

目次


軟骨のおかげで、関節が自由に動かせる

肩、ひじ、股、膝などの骨と骨とをつないだ部分が関節です。関節を動かすことで、歩く、走る、跳ぶ、回るなどの日常生活で必要とされる動作が可能になります。そんな関節の表面を薄く覆っているのが軟骨です。

ご存じのように、骨はとても硬い組織です。硬い骨同士が直接結合すると骨がすり減ってしまうため、関節の表面を覆う軟骨がクッションとして働き、衝撃を吸収したり、関節の動きを滑らかにしたりしています。軟骨のおかげで痛みを感じることなく、自由自在に関節を動かすことができるのです。

そんな軟骨は、次のような成分で構成されています。

水分……軟骨の65~80%を占めているほど、たっぷりと含んでいます。

Ⅱ型コラーゲン……軟骨の強さや弾力を生み出すたんぱく質で、関節軟骨のほか、皮膚や骨などにも多く含まれています。関節軟骨では潤滑油の働きをするうえ、骨の形成にも深く関係があり、カルシウムが骨に定着するのを助けます。

プロテオグリカン……コンドロイチンやヒアルロン酸などで構成されています。プロテオグリカンがつくられるときに、必要な材料となるのがグルコサミンです。

軟骨成分として大注目されるプロテオグリカン

上記で紹介しているプロテオグリカンは、聞き慣れない成分かもしれません。とはいえ、グルコサミンやコンドロイチンとともに、近年、軟骨成分として非常に注目を集めています。脳、骨、筋肉、腱、血管などさまざまな組織をつくる成分ですが、特に関節軟骨には多く存在しています。

プロテオグリカンを構成するコンドロイチンやヒアルロン酸のおかげで、軟骨は水分を含んだスポンジのようになり、関節が受ける衝撃を吸収して和らげ、骨と骨の直接の摩擦を防いで動きをスムーズにしてくれます。

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グルコサミンは、プロテオグリカンの材料

プロテオグリカンがつくられる材料となるのがグルコサミンで、糖とアミノ酸が結びついたアミノ糖の一種です。コンドロイチンやヒアルロン酸の材料も、同様にグルコサミンです。

「グルコサミンは、軟骨を構成する主成分ではありませんが、主成分をつくる材料になる“陰の立て役者”という重要な役割を担っています」と、佐々木先生は話します。

グルコサミンは、どのような効能がある?

グルコサミンの働きでよく知られているのは抗炎症作用で、サプリメントなどでは痛み止め効果が期待されています。また、関節軟骨の修復・保護作用、血栓予防、抗動脈硬化作用などの報告もあります。

グルコサミンとコンドロイチンは親子関係

関節に関わる成分として、グルコサミンの他にコンドロイチンが有名です。コンドロイチンは、軟骨、靭帯、角膜、血管壁などに存在し、保水性と弾力性を与えます。

前述のように、グルコサミンはコンドロイチンの材料となるので、両者はいわば親子のような関係。相互作用で関節をつくり、その機能を守っているのです。

グルコサミンが減るとどうなる?

グルコサミンを含む軟骨成分は、年齢を重ねるとともに自然に減っていきます。加齢とともに軟骨もある程度すり減っていくうえ、軟骨成分が不足していけば、軟骨は十分に機能することができません。

そのような状態を放置してしまうと、関節の動きがスムーズにいかなくなったり、関節の痛みや炎症を引き起こしたりすることが。悪化すれば、関節に変形が生じて変形性関節症などの病気になることもあります。

軟骨組織は、加齢などですり減ったりケガなどで一度損傷を受けたりすると、自然に元の状態に戻ることはありません。切り傷や骨折などは適切な処置をすると治りますが、なぜ軟骨は自然治癒ができないのでしょう?

「軟骨組織には血管がありません。血液には、傷を治すのに必要な赤血球や血小板などのあらゆる細胞や、細胞を増やす栄養も含まれています。血管がない軟骨組織は血液の恩恵を受けることができず、自然治癒しないのです」と、佐々木先生は話します。

膝関節などのスムーズな動きを助けるヒアルロン酸

関節成分でグルコサミンやコンドロイチンとともに、よく知られているのがヒアルロン酸です。ヒアルロン酸は優れた保水力があり、化粧品や健康食品、医療品の原料としても広く活用されています。

関節には、ヒアルロン酸が特に多く存在しています。関節液や関節軟骨などに含まれ、関節の動きをスムーズにしたり(潤滑作用)、衝撃を吸収するクッションの役割をしたりしています。

そのような機能を応用した関節痛の治療法に、ヒアルロン酸の関節内注射があります。「ヒアルロン酸には炎症を和らげたり、膝の痛みを軽減したりする効果があるので、関節の痛みにはポピュラーな治療法です。一般的には、1週間に1回のペースで5回続け、その後の症状によって2~4週間に1回続けます」(佐々木先生)

軟骨がすり減って起こる代表的な病気「変形性関節症」

グルコサミンを含めた軟骨成分が減少し、長年の負荷ですり減って傷ついた関節に痛みや腫れが生じると、「変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)」になることがあります。代表的なのが、変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)と変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。

変形性股関節症

加齢などが原因で関節軟骨がすり減り、股関節に痛みなどの症状が出ます。悪化すると股関節が変形することもあります。変形性股関節症は、次の2種類にわかれます。

一次性変形性股関節症……加齢、激しいスポーツ、重い物を持ち上げるといった過酷な仕事などが原因となって発症します。

二次性変形性股関節症……先天性の股関節脱臼(先天性股関節脱臼)や、股関節の発育が悪い臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)、あるいは外傷などが原因となって発症します。

症状
初期……立ち上がり、歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。少し時間がたつと痛みがおさまってきます。

進行期……歩いているときや何らかの動作をしているときに、痛みを強く感じます。靴下を履く、足の爪を切る、正座やしゃがむといった動作が困難に。

末期……脚の付け根が伸びなくなり、膝頭が外側を向くようになります。左右の脚の長さもそろわなくなります。

日常生活の注意点

  • ・肥満の人はダイエットを心がける
  • ・正座は避ける
  • ・衝撃を吸収するクッション性のある靴で歩く
  • ・荷物はなるべく軽くして歩き、両手にわけて持つ
  • ・家具は和式より洋式にして、イスに座る生活へ
  • ・急な坂道や階段はできるだけ避ける
  • ・寝るときは布団よりもベッドを使う
  • ・浴室には手すりを設置。シャワーイスも活用する
  • ・よく着る衣類は、腰より上の引き出しに収納

など

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変形性膝関節症

加齢、外傷、肥満などの影響から、膝の関節軟骨がすり減る、なくなるといったことで膝の形が変形し、痛みや腫れが現れます。関節が痛むため、関節リウマチと間違えられやすい病気です。

症状
初期……立ち上がり、歩き始めなど動作をスタートするときに痛みを感じ、少し時間がたつと痛みがとれます。

中期……痛みがより強くなり、膝の曲げ伸ばしが難しくなります。正座やしゃがみ込むときに痛みを感じるようになり、階段の上り下りもつらくなるでしょう。炎症の程度によっては膝に水(関節液)がたまることにより、むくみが出てきます。

末期……正座や階段の上り下りがつらくなり、安静にしているときでも痛みが持続。膝の内側の軟骨が消失して脚はO脚に変形します。膝を十分に伸ばすことができず歩くことが困難に。

日常生活の注意点

  • ・肥満の人はダイエットを心がける
  • ・正座は避ける
  • ・膝を冷やさない
  • ・歩くときは、杖、手すり、シルバーカーなどを活用
  • ・ヒールの高い靴は履かない
  • ・家具は和式より洋式にして、イスに座る生活へ
  • ・急に痛むときは冷やすが、慢性化したら温めて血流を促す

など

「どちらの病気も女性に多く見られます。更年期を境に太りやすくなったり、筋力が弱かったりすることで、股関節や膝に負荷がかかりやすいのです。中高年の女性は特に気をつけてください」と佐々木先生は注意を促します。

健康な関節のために、適度な運動を心がけて

関節の健康を維持したり、痛みを緩和したりするためには適度な運動が大切です。運動不足になると、関節周辺の筋力の低下や体重増加を招き、関節への負担が増加して痛みなどのトラブルを引き起こすことがあります。

「ウォーキング、水中ウォーキング、自転車こぎなどが有効です」と、佐々木先生。「運動が苦手なら散歩でもかまいません。楽しいと思うものを続けて、習慣化することが大切です」

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グルコサミンを食品から摂ることはできる?

適度な運動を行いながら、食事にも気をつけることを忘れないでください。肥満は関節に負担をかけ、変形性関節症の引き金にもなります。

食事は1日3回規則正しく食べ、栄養は偏らずにまんべんなく摂りましょう。食事内容を見直すときは、カロリーの高い脂質や糖質を抑えます。揚げ物や脂身の多い肉は脂質の摂りすぎになるので控えます。ごはんや麺類などの炭水化物も少なめにしましょう。

また、早食いのクセがあると、満腹を感じる前に食べ終えてしまうので、つい食べ過ぎになります。ゆっくりと、よくかむことを心がけて。何かをしながら食べる“ながら食い”や、食事を抜いて食べる“まとめ食い”も、食べ過ぎの原因になるのでよくありません。

肥満度は、BMIで計算することができます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)2
BMIが25を超えたら肥満なので注意してください。

また、関節の病気を予防するには骨の強化も大切なので、骨にあるたんぱく質を活性化し、骨の形成を促すビタミンKを意識して摂ることがおすすめです。納豆に非常に多く、こまつ菜やほうれん草などの緑黄色野菜にもたくさん含まれています。

「グルコサミンを多く含む食材を摂れば、軟骨をサポートできるのでは?」と思う人もいるかもしれません。カニの甲羅やエビの殻、ウナギ、干しエビ、オクラ、イカの軟骨、きのこ類などが該当します。「ただし、これらをたくさん食べたとしても、グルコサミンは分子が大きいため体内へ吸収されにくく、食事で補うことは難しいと言われています」と佐々木先生は話します。

グルコサミンを配合したサプリメント、効果が知りたい!

サプリメントは、食事で摂りきれない栄養素を補うことを目的につくられた栄養補助食品です。カプセル、顆粒、タブレット、ドリンクなどさまざまなタイプがあり、忙しい人でも自分のタイミングで手軽に摂れるため、とても便利。グルコサミンについても、さまざまなサプリメントがあります。

「患者さんから、サプリメントの相談はよくあります。『試してみるのはかまいません。痛みが楽になったら続けてよいし、1ヶ月たっても症状が変わらないのならやめた方がいいですよ』と伝えています」と、佐々木先生はアドバイスします。

知っておきたいサプリメントの選び方と副作用

サプリメントはドラッグストアや通販などでたくさん市場に出回っていますが、どれを選んでよいか迷いがちです。次の項目をクリアしているサプリメントを選ぶように心がけてください。

  • ・製造者や販売者などの名称や、原材料名の表示がきちんと明記されている
  • ・栄養成分やその他の成分量が表示されている
  • ・お客様相談窓口などの連絡先が明記されている
  • ・安全性や品質についてきちんと説明されている
  • ・適切な摂取の仕方や摂取する量、注意点などが明記されている
  • ・「必ず治る!」「有名人が推奨」などの誇大広告をしていない
  • ・科学的な根拠に基づいた働きが明記されている
  • ・法外に高額・安価ではない
  • ・日本でつくられている

「興味のあるサプリメントがあったら、かかりつけ医に『このサプリメントを飲んでみたいのですが』とできるだけ相談してください。グルコサミンの一部のサプリメントには、ワルファリンなど血液をサラサラにする薬の作用を強くしてしまうものがあります。医師に薬との相互作用を確認してもらうと安心です」(佐々木先生)。

また、グルコサミンはアミノ糖の一種なので、糖尿病や血糖値が気になっている人は、摂取を控えた方がよいでしょう。妊娠中や授乳中の人は、摂取する前にかかりつけ医に相談することを忘れないでください。

グルコサミンのサプリメントを利用する際に、副作用として気をつけたいのがアレルギーです。

サプリメントに利用されるグルコサミンは、エビやカニの甲殻を原料としていることが多いため、甲殻アレルギーのある人が摂取した場合には、かゆみや湿疹などのアレルギー症状を起こす可能性があります。原材料の表記をよく確認し、気になる症状が現れたらすぐに使用を中止しましょう。

「サプリメントを飲めば大丈夫」という前向きな気持ちで

痛みが慢性的に続くようになると、気持ちも落ち込みがちになります。

「関節が痛むと、『もう年だから』『私はもうダメだ』と言って気力までなくしてしまう人がいます。どのような病気でも、一番大切なのは、『治す』『治りたい』という意識です。“病は気から”といいますが、本当にその通り。痛みは、『体に異常が起こっている』というシグナルであるため、脳はその痛みを忘れないように記憶します。すると、病気が治って痛みの原因になる刺激がなくても、『もう年だから』などと思っていては、痛みを感じてしまうことがあるのです。病気を治しても、後ろ向きの気持ちを変えないと本当の健康は戻ってきません」(佐々木先生)

佐々木先生は、「この運動をすれば、関節の痛みが和らぐ」「この治療をすれば、関節の痛みが改善される」など、何をするにしても前向きにトライすることを提案しています。

「サプリメントも、効能には個人差があり、すべての人に改善が見られるわけではありません。とはいえ、試すなら『このサプリメントを飲めば大丈夫』と思いながら効果を見極めてみてください。グルコサミンの成分以外に、その前向きな気持ちで痛みの感じ方が違ってくる可能性もあります」

グルコサミンを含む軟骨成分は自然に増えることはありませんが、だからといって、すべての人が関節のすり減りに悩み、痛みを抱えているわけではありません。サプリメントで補ったり、適度な運動で筋力を鍛えたりする中で、健康な関節を維持できることもあります。

「高齢になるほど、痛みをがまんしがちです。日常的に関節の痛みが出たら自分でできるケアに取り組み、早めに整形外科を受診してください。症状が軽いほど治療の効果も早く出ます」(佐々木先生)

取材・文/内藤綾子

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取材協力・監修者プロフィール
佐々木政幸(ささきまさゆき)先生
久我山整形外科ペインクリニック院長
慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局後、慶應義塾大学病院や関連病院に勤務。2010年に現クリニックを開院。NPO法人「腰痛・膝痛チーム医療研究所」副理事長。市民講座の講師や、テレビコメント医師としても活動中。

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