【医師監修】膝の内側の痛みの原因と対処法

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階段の上り下りで膝が痛い、怪我をしたわけでもないのに膝が腫れている……。こういった膝の痛みに悩む方は少なくないのではないでしょうか?年齢を重ねるとともに、クッションの役目をする膝の軟骨がすり減り、その負担に耐えられなくなることで膝の痛みが出るといいます。

長年整形外科医として、多くの患者さんの関節の痛みに向き合ってこられた井尻整形外科の井尻慎一郎院長に膝の内側の痛みとその原因、予防方法などについて伺いました。

目次

 

膝関節の痛みと原因 外側と内側

井尻:ケガをしたわけではないのに急に膝が腫れて痛みが出ることがよくあります。原因としては使いすぎや冷えなど色々ありますが、特に原因が思いつかないのに朝起きたら痛い、朝なんともなかったのに夕方から痛いということもしばしばあります。

これは気がつかないうちに、患部が急性の炎症を起こしているのです。こういった場合は原因をあまり追求せず、早く治療を始めた方が早く治ります。ギックリ腰などの腰の痛みは、原因が深い場所にあることが多いのに対して、膝や肩、首などの関節の痛みは浅いところにあります。

関節を車のエンジンのピストンや機械のギアの部分にたとえて考えれば、熱くなりすぎれば冷やす必要があります。しかし、冷え切ったままではギアの動きが悪いので、多少は温めた方がなめらかに動きます。同じように、関節も熱を持って痛みが強い時は冷やし、痛みが少ないときは軽く温めてみるとよいでしょう

膝関節は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と、膝から足首までの骨である脛骨(けいこつ)を繋ぐ関節です。膝関節の曲げ伸ばしによって、人は歩いたり走ったりすることができます。

歩いているとき、膝には体重の3~4倍、階段の上り下りの際には4~5倍の負担がかかると言われています。つまり、体重が1キロ増えると膝への負担は3~5キロ増えることになります。

こういった負荷や衝撃を吸収するため、膝の内外側には関節面の軟骨と半月板と呼ばれる軟骨があります。半月板によって大腿骨と脛骨の接触面積を広げ、負荷の分散と関節の安定性をはかっているのです。

また、膝の外側にはさまざまな筋肉から伸びる腱(筋肉と骨をつなぐ結合組織)とじん帯で固められています。筋肉が衰えると支えが弱くなり、半月板や関節軟骨を痛めやすくなります。特に膝の曲げ伸ばしには、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)やハムストリングといった太ももの筋肉が重要です。

これらの筋肉が弱くなると関節の動きが悪くなるほか、膝関節がグラグラしてズレが生じ、痛みの原因になります。

大まかに言って、膝関節の外側に起因するのは筋肉系統の痛みで、内側に起因するのは軟骨、半月板、靭帯とも言えるでしょう。

関節の外側の痛みと原因

井尻:関節の外側の筋肉系統の痛みであれば、ストレッチなど、自分の努力で回復させることも可能です。外側の痛みは特にスポーツをする人に多くみられます。筋肉や腱が疲労し、膝のさまざまな場所に痛みを覚えます。

この場合は激しい動きを制限し、朝晩にゆっくり膝の屈伸のストレッチなどを行うことで症状が和らぐ場合もあります。痛みが続く場合は、医師に相談しましょう。

関節の内側の痛みと原因

井尻:中高年以降の関節の痛み、特に膝関節に関しては、圧倒的に多い原因は変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。男性よりも女性の患者さんが多く、60代後半の女性の約半数、80代になると約8割が発症します。

女性に発症しやすい原因として、男性より筋力が弱く関節が緩いこと、膝関節の断面積が小さく軟骨にかかる圧力が強いこと、閉経後に骨粗しょう症になりやすいことなどが挙げられます。いずれももろい骨を弱い筋肉で支えていることが問題なのです。

変形性膝関節症以外には、リウマチ性膝関節炎(関節リウマチ)や痛風性膝関節炎、偽痛風(ぎつうふう)性膝関節炎、大腿骨内顆骨壊死症(だいたいこつないかこつえししょう)などがあります。関節リウマチや大腿骨内顆骨壊死症になるのは100人に1人くらいなので、そんなに心配することはありません。

変形性膝関節症の症状とその原因

変形性膝関節症は、膝関節が、年齢や使いすぎ、そのほか外傷や感染などの原因により変性した状態のことです。最初に軟骨が磨り減り、進行すると骨まで変形します。

初期は動きはじめの痛みが特徴的で、長く座っていて立ちあがるときや、階段の下り、歩きはじめに多く、動いているとましになることが多いようです。進行すると歩行中もずっと痛みを感じるようになり、関節の曲げ伸ばしに制限が生じたり、夜寝ていて痛みを感じたりするようになります。

リウマチ性膝関節炎(関節リウマチ)の症状とその原因

一般に手足の関節などが腫れたり痛んだりする病気をリウマチ性疾患と言います。なかでも身体のあちこちの関節に炎症が起こり、次第に関節が変形してくる病気を関節リウマチと言います。

関節リウマチの特徴的な症状は、関節の腫れ、朝のこわばり、左右対称の関節で起きることで、最初は1つの関節から発症することもありますが、多くは3つ以上の関節が腫れたり痛んだりします。

関節リウマチは、免疫機構に異常が生じて自分の身体の成分を外敵と勘違いして反応する自己免疫疾患の1つですが、詳しい原因はまだわかっていません。

痛風性関節炎の症状とその原因

食べ物の中にあるプリン体が体内で代謝されて尿酸ができるのですが、痛風はその尿酸の結晶が手や足の関節などさまざまな組織に沈着していろいろな症状をきたす病気です。女性より男性の方が圧倒的に痛風になりやすいのですが、これは女性ホルモンに尿酸の排泄を促す効果があるためと言われています。

日本では明治以前にはなかった病気で、食生活が動物性たんぱく質摂取や飲酒の増加など西洋風になるにしたがって増えてきました。

痛風性膝関節炎は、この痛風発作が膝関節に起こり、強い痛みと腫れが出ます。膝の曲げ伸ばしをするとさらに痛みが増します。関節液から尿酸結晶が見つかれば診断が確定します。痛風の状態を放置すると腎臓に障害をきたすこともあるので、尿酸値を下げる薬を服用します。

偽痛風性膝関節炎の症状とその原因

60歳以上の女性に多く、怪我もしていないのに急に膝関節が腫れて熱感をともない、激痛をきたす病気です。関節液にピロリン酸カルシウムの結晶があれば診断がつきます。関節注射や痛み止めなどで比較的早く痛みや腫れが引きます。

大腿骨内顆骨壊死症の症状とその原因

大腿骨内顆骨壊死症の多くは原因不明で、発症する大腿骨内側顆部関節面(だいたいこつないそくかぶかんせつめん)に骨壊死が生じる病気です。

腎移植後や全身性エリテマトーデス(全身の皮膚、血管、関節、内臓がおかされる慢性・炎症性の自己免疫疾患)でステロイドの大量投与を受けたときにも時々発症します。かなり激しい疼痛(とうつう)を伴うことが多く、夜間に痛みが増強する傾向があります。

保存療法(手術以外)による治療方法

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保存療法による治療方法ですが、まずは肥満傾向の方は少しでも体重を減らすことです。せめて増やさないことが大切です。2本足で歩く動物は人間だけです。

体重を支える膝関節も2つしかありません。しかも寿命がどんどん延びているので、どうしても膝の関節はすり減りやすくなります。走ったり、飛んだり、重いものを持たない、冷やさない、ケガをしない、運動しすぎないことも大切です。

保存療法による変形性膝関節症の治療方法

痛みが強いときは消炎鎮痛剤の経口薬、湿布、塗り薬、坐薬などを使います。さらに痛みが続くときには関節の痛み止め、腫れ止めの注射(ステロイドホルモン:あまり頻回に関節内注射をすると軟骨に障害が出ることがあります)や特に最近ではヒアルロン酸の潤滑液を関節腔内に注射します。サポーターなどの装具も適宜使用すると効果的です。

保存療法によるリウマチ性膝関節炎(関節リウマチ)の治療方法

抗リウマチ薬や生物学的製剤という薬剤を投与しますが、それでも痛みのコントロールが困難な場合には、人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)などの手術をします。

保存療法による痛風・偽痛風性膝関節炎の治療方法

関節液が溜まっていれば穿刺(せんし)します。ステロイドホルモンを注入する場合もあります。痛風なら食生活の改善と痛風の薬を飲みます。偽痛風に効果のある薬はありませんが、痛風と異なり、あまり心配ない病気です。

保存療法による大腿骨内顆骨壊死症の治療方法

初期の場合は、膝のサポーターや靴に入れる外側が高い足底装具、杖による部分免荷などの治療が行われます。壊死が軽度の場合は、徐々に壊死部が治癒してくることも十分にあります。治療の原則は変形性膝関節症とほぼ同じです。

手術による治療方法

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井尻:膝関節の痛みは基本的には保存療法ですが、痛みがどうしても改善しない場合には手術が必要になることがあります。しかしながら、整形外科医によっては症例数を増やして成績を上げる目的で、必要がないかもしれないのに手術をしたがる先生もいるので注意が必要です。

また、医師によって手術のスキルも違うのですが、一般の人には内部の情報は分からないので、かかりつけの主治医のアドバイスをもらうのがベターです。自分は本当に手術が必要なのかどうか、迷った場合には「先生の奥さんやお母さんが同じ状況なら手術をすすめますか?」と問いかけてみてください。

また、手術に関しては2~3の病院の先生に意見を求めるのもおすすめします。人工関節置換術などは素晴らしい技術ですが、どんな手術がいいかという選択肢の前に、まずは保存療法を努力することが大切です。

手術による変形性膝関節症の治療方法

保存治療で痛みが軽減せず、関節の変形が強く、日常生活に支障があるときは手術を検討します。手術には関節鏡手術、骨切り(こつきり)手術、人工関節置換術などがありますが、最近の人工関節は術成績も優れており、確実に痛みがとれるので、変形が高度で痛みの強い方にはおすすめです。

人工関節置換術より以前からあった、O脚をX脚に変える骨切り術が、最近バージョンアップされてリバイバルしています。膝関節の内側だけが変形している場合には人工物を入れない骨切り術も良い方法です。

手術による大腿骨内顆骨壊死症の治療方法

関節面の陥没などが強く、内反変形などを伴い、痛みのコントロールが難しいときは、内反変形を矯正する高位脛骨骨切り手術(こういけいこつこつきりしゅじゅつ)などが行われます。変形が進んで変形性膝関節症の病態になると、人工関節置換術も行われます。

具体的な手術の方法

変形性膝関節症で痛みがどうしても改善しない場合に検討する手術として、人工膝関節置換術と高位脛骨骨切り術があります。膝関節の内外側ともに変形が強い場合は人工関節置換術が、内側だけが傷んでいる場合は骨切り術が適応です。

しかし、具体的な手術の方法は医者によって違いがあるので一概には言えません。実際に手術をすることになったら手術前にきちんと確認して納得してから手術をすすめましょう。

人工膝関節置換術とは?

変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工膝関節に入れ替える手術です。これにより痛みが軽減され、歩行しやすくなります。手術は全身麻酔で行い、約8〜12㎝皮膚を切開して骨が損傷している面を取り除きます。そのあとに骨の代わりの人工関節を固定します。手術時間はだいたい1〜2時間程度です。

高位脛骨骨切り術

膝関節の近くで脛骨を切り、脚の形をO脚からX脚に矯正する手術です。O脚で傷んでいる内側の関節面で体重を受けていたのを、まだ傷んでいない外側の関節面で体重を受けるようにして痛みを取り除きます。手術時間はだいたい1〜1時間半です。

術後の痛みやリハビリ、入院期間について

人工膝関節置換術

入院期間は1〜4週間程度です。手術後の痛みはかなり軽減します。術後2日目くらいから松葉杖などを使ったリハビリをスタートします。人工関節の耐久性は約10年〜15年と言われていましたが、器具や手術手技が向上し、一生持つことも普通になってきました。

退院後はジョギングや激しいスポーツを避けて、関節に負担がかかるような重い荷物は持たないように心がけるなどケアが必要です。

高位脛骨骨切り術

入院期間は3〜4週間程度です。術後早期からの歩行も可能で、術後1週間くらいから徐々に膝に体重をかけ始め、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を行います。術後は人工膝関節置換術と比べて制限は少なく、スポーツや正座をしても大丈夫だと言われています。

ただ、骨を切った部分がしっかりと癒合するまでには3〜4ヶ月以上かかるので、その間は主治医の指示に従い、無理をしないことが重要です。

予防方法について

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膝の痛みの原因の多くが変形性膝関節症だとお話ししましたが、変形性膝関節症の一番の予防は体重コントロールです。太りすぎている人はまず体重を減らすことです。

肥満は膝や股関節に負担をかけるだけでなく、さまざまな成人病の原因にもなります。その上で、正座やしゃがむ姿勢などを長時間続けることを避ける、重いものを持ち歩かない、無理な運動をしないといった日常での生活習慣を見直すようにしましょう。

日常生活の注意

  • ・肥満を改善する
  • ・正坐やしゃがむ姿勢などを長時間続けない
  • ・重いものを持ち歩かない
  • ・無理な運動をしない
  • ・段差を降りるときは慌てずゆっくりと降りる
  • ・階段などに手すりをつける
  • ・杖を使用する
  • ・トイレを洋式にする
  • ・ハイヒールはやめてローヒールにする
  • ・症状のある関節にサポーターをつける

 

膝の痛みを予防する運動

井尻:肥満を改善するといっても、そんな簡単にダイエットは成功しないですよね。カロリー制限が一番大切ですが、さらに運動で僕が一番おすすめしているのはウォーキングです。このウォーキングですが、よく毎日1万歩あるくべき!と言われますが、実はそんなことはないんです。

1万歩無理して歩くのではなく、自分のペースで歩けばいい。3,000〜8,000歩を20〜40分くらいかけて歩くだけでいいんです。それを毎日ではなく週に3回程度、雨の日は休むくらいの気持ちで続けてください。

もう一つは太ももの前にあり、膝関節の安定に一番重要な大腿四頭筋を強くする体操です。ぜひ朝昼晩に1セットずつ行ってください。

大腿四頭筋を強くする体操

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膝を伸ばす際に動く、大腿四頭筋を鍛えることで膝の可動域を維持します。

背筋を伸ばして椅子に浅く座り、片脚を上げます。膝をグッと伸ばしたところで太ももの前側の筋肉がグッと働いていることを意識しながら5〜10秒保ちます。逆側の脚も同様に行いましょう。これを両脚で5回ずつ繰り返して1セット。朝昼晩に1セットずつ行います。

いかがでしたか?膝の関節の内側の痛みは、その多くが変形性膝関節症だと井尻先生は仰います。中高年に一番多い症状だと言われますが、これは根気よく治療することによって改善することができます。

治療がすぐに効果に結びつかないからといって諦めてはいけません。主治医に従って治療を続けることが大切です。アンチエイジングではなくスローエイジング。老化を止めることはできませんが、速度を落とすことはできます。

それには体重を増やさないなど、日々の生活習慣が鍵!運動をしっかりして、人間の身体を支えている大切な膝をしっかりケアしましょうね。

取材・文/横田可奈

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取材協力・監修者プロフィール
井尻慎一郎
医学博士。井尻整形外科院長
大阪医科大学卒業。京都大学医学部大学院修了。神戸市立中央市民病院整形外科医長。平成12年3月に神戸市垂水区に「井尻整形外科」開院。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医、日本リウマチ学会専門医、兵庫県整形外科医会理事。

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