膝の痛みを軽減!膝サポーターの使い方

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膝の痛みがあるときは、歩いたり膝を動かしたりすることを躊躇しがちです。そんなとき、「膝サポーターを上手に活用すると、膝の痛みを緩和できることがあります」と話すのは、リハビリテーションに力を入れ、膝サポーターの使い方にも詳しい平沼整形外科クリニックの平沼尚和先生です。

この記事では、膝の痛みに関する基礎知識や、サポーターの種類および正しい使い方などについて詳しく解説します。

目次

 

筋肉、靱帯、軟骨、さまざまなものに守られる膝関節

私たちの下半身には、以下のような3つの重要な関節があります。

  • ・股関節
  • ・膝関節
  • ・足関節

 
中でも重要なのが膝関節で、下半身の中でも中心的な役割を担っています。膝は可動域が広く、歩く、しゃがむ、走る、跳ぶ、回るなど、日常生活の細かい動作に対応しフル活動しています。さらに膝には、歩くときに体重の2~3倍、階段の上り下りをするときは約4倍の負荷がかかると言われています。

それだけの負担を支えるために、膝関節は体の中で最も大きな関節となっており、主に3種類の骨から形成されています。

  • ・太ももの骨(大腿骨・だいたいこつ)
  • ・すねの骨(頸骨・けいこつ)
  • ・膝のお皿(膝蓋骨・しつがいこつ)

 
すねの骨の上に太ももの骨が乗り、膝のお皿がその接続部分に位置して前面の衝撃から守っています。それぞれの骨は靱帯や周囲の筋肉によってしっかりと結びつけられ、前後左右にズレないように固定されています。

骨はとても硬いので、骨同士が直接接触すると骨を傷つけ合ってしまいます。それを避けるため、骨は厚さ3~4ミリの関節軟骨に覆われ、さらに骨と骨の間には半月板が挟まっており、膝にかかる衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。

関節軟骨は使うほどにすり減る

ただし、骨を守る関節軟骨には、使えば使うほどすり減ってしまう弱点があります。骨や皮膚は血管があるので再生できるのですが、軟骨にはもともと血管がないため、すり減った軟骨を修復する細胞や、細胞を増やすための栄養も供給されないので自然に治ることがありません。

特に50代あたりからは太ももの筋肉が衰えて、膝関節により負担がかかることが多くなります。肥満の人は、その分さらに負担が増すことに。

また、若いころから蓄積されたケガなどのダメージが加齢とともに現れることもあります。激しいスポーツや過重労働などで膝関節を酷使し続けると、慢性的に膝の痛みを感じるようになることが珍しくないのです。

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膝の痛みはなぜ起こる?

「関節軟骨がすり減って痛みが出てくる」といっても、軟骨には神経がないため軟骨自体が痛みを発生させているわけではありません。関節全体は、「関節包(かんせつほう)」という膜で覆われ、その内部は、透明で少し粘り気のある関節液で満たされています。

軟骨がすり減った細かな“削りカス”によって、関節包の内側にある「滑膜(かつまく)」に炎症が起こって痛みが生じると考えられています。

加齢による膝の痛みを伴う主な病気

関節軟骨がすり減る大きな原因のひとつは加齢です。加齢による膝の痛みを原因とする病気には、次のようなものがあります。

偽痛風(ぎつうふう)……発作の症状が痛風に似ていることから、この病名がつけられました。痛風は尿酸結晶による関節炎ですが、偽痛風は主にピロリン酸カルシウムの結晶による関節炎です。

発作は何の前兆もなく、関節または関節周囲が突然に赤く腫れ、動かせないほどの痛みがあります。発作は数日から1週間程度でおさまり、痛風より痛みは軽いです。

更年期障害による関節痛……最初は関節がポキポキと鳴る程度から始まり、肩・手指・膝などの関節痛やこわばりなどが現れます。加齢による女性ホルモンの減少や、関節を支えている軟骨や筋肉の衰え、さらに血液の循環が悪くなることが原因です。

明らかに更年期障害が原因とわかっている場合は、プラセンタの注射で痛みに対応したり、ほてりなどの症状に合わせて漢方薬を処方したりすることもあります。

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)……50歳以上で700万人、予備軍を含めると1000万人の患者がいるとも言いわれています。女性は男性の2~3倍多く見られます。

膝の痛みで最も多い「変形性膝関節症」を詳しく!

変形性膝関節症は、関節軟骨がすり減ったり傷ついたりすることで硬い骨同士が直接こすれ合い、骨の変形や痛みを招く病気です。

変形性膝関節症になりやすいのはこんな人

女性……男性に比べて筋力が弱いうえ、更年期以降は骨がもろくなりやすく、膝に負担がかかります。

加齢……膝に負担をかけている期間が長く、軟骨の消耗も激しいため。

肥満……重い体重を支えている膝には、相当な負担がかかっています。

O脚……膝関節の内側にかかる負担が大きく、軟骨の減り方が大きく偏るため。

膝をケガしたことがある……長年の負荷の蓄積が、加齢とともに痛みとなって現れることがあります。

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平沼整形外科クリニックの外観

主な症状
変形性膝関節症の正確な進行度は、X線検査で関節に関わる骨の変形を診て判断します。一方で、自覚症状でも推測することができます。

初期:歩き始めやイスから立ち上がるときに、膝が痛む程度。階段の上り下りで痛みを感じます。また、ひざがこわばることもあります。

中期:膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩いているとき常に痛みを感じます。膝を完全に曲げることができません。水が溜まる・腫れるといったこともあります。

進行期:動かなくても痛みを感じます。膝を動かすたびに強い痛みが生じることも。歩くことがつらい、立ち上がることができない、正座ができないといった状態になります。

膝の痛みに関する主な治療法

変形性膝関節症を含めた膝の痛みの治療法は、一般的に「保存療法」で様子をみることから始めます。

主な保存療法

薬物療法……膝関節に起きた炎症を消炎鎮痛剤で抑えます。内服薬のほか、 湿布や軟膏などの外用薬、坐薬も併用して使う場合があります。痛みを抑える効果は期待できますが、変形を治すことはできません。

ヒアルロン酸注射……ヒアルロン酸は関節液に多く含まれており、関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割があります。変形性膝関節症になると、関節液の中に含まれるヒアルロン酸の濃度が低下することがわかっているので、膝関節に直接注射して補います。

運動療法……ストレッチや筋トレで、太ももなど膝関節周囲の筋肉を柔軟にして鍛える治療法です。 筋肉には関節への負担や衝撃を和らげ、膝を支える役割があるため、痛みの軽減や症状の進行を遅らせる効果が期待できます。整形外科の医師や理学療法士による指導を受け、症状に合った運動を毎日続けることが重要です。

装具療法……さまざまな装具を身につけることで、膝への負担を軽くしたり、膝への動揺を抑えたりして、軟骨などの変性が進むのを抑えます。装具には、サポーターや足底板(そくていばん)が多く用いられます。

膝の負担を減らし、痛みを緩和するための補助具として多く活用されているのがサポーターです。

「膝の痛みで受診した人には、まず薬物療法が提案されます。改善が見られないとヒアルロン酸注射や運動療法に移ります。そのような治療法と並行してサポーターの使用がすすめられます。サポーターを着けるタイミングは人それぞれで、『お風呂に入ると痛みが軽くなる』といった人には、早くから保温サポーターを提案することがあります」(平沼先生)

サポーターの種類は目的に合わせて

膝に違和感や痛みがあると、歩くことや外出することなどがおっくうになります。そんなとき、サポーターはとても便利で、使用する人が年々増えています。さまざまなタイプがあるので、症状によって使いわけましょう。

保温性サポーター

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筒状をしており、下から履いて膝を覆うタイプ。膝周囲を温めて血行を促し、痛みを和らげることが期待できます。 着脱もワンタッチで楽。ドラッグストアで購入でき、安価なので気楽に試すことができます。

「冷えると膝が痛い」「締めつける感じが苦手」という人向き。柔らかく伸縮性のあるコットン素材が主流です。

機能性サポーター

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ベルトで締めて自分で調整するタイプで、金属製の支柱つきもあります。自分で締めるため、固定の強弱を調整できることが特徴。ベルトで筋肉や骨の形に合わせて着用でき、不安定な膝をガッシリと支える固定力に優れ、膝にかかる衝撃や負担を和らげます。

「常に痛みがあって動くとつらい」「膝がガクガクしてきちんと固定させたい」といった人に向いています。

その他、素材の肌触り、速乾性、通気性、伸縮性などにおいて、サポーターにはさまざまな工夫が施されています。膝の安定感が増すため、関節の変形が強く膝にうまく力が入らない人にもおすすめです。

サポーターのもたらす3つの神効果

サポーターには、以下の3つの効果が期待できます。

効果1.膝を温める
膝を覆って温めることで、血液の循環がよくなります。そのため筋肉の緊張をほぐして痛みの改善へと導きます。

効果2.膝を安定させる
グラつきのある膝を適度に圧迫して、膝に安定感を与えます。

効果3.膝を支える
特に金属性の支柱のついたサポーターは固定性が高く、関節のグラツキを抑えしっかりと支えます。スムーズな動きを助けることもできます。

サポーターの賢い選び方

サポーターはドラッグストアやインターネット通販など、さまざまなところで取り扱いがあり、種類も豊富です。平沼先生は、「整形外科の医師か理学療法士に、症状に合ったサポーターを提案してもらいましょう」と話します。

保温性サポーターはドラッグストアなどで販売されているので、サンプルがあれば着け心地や扱いやすさを試してから購入できます。

機能性サポーターなら、インターネット通販で探してもOK。「ただし、きちんと計測してからサイズを選んで。イスに座って軽く膝を曲げ、膝頭の周囲に布製メジャーを回して測ります。長さに対応した『S・M・L』などのサイズをよく確認してください」(平沼先生)。

サイズが大きすぎると、ずり落ちて安定性に欠けます。小さすぎると締めつけ過ぎて、動きにくくなってしまうので注意しましょう。

できれば、『この商品を選びたいのですが、私の膝に合っていますか?』と購入前に、医師に確認すると安心です。インターネット通販が苦手なら、整形外科病院でも機能性サポーターを取り扱っている場合が多いので、かかりつけ医に確認してみては。

高齢者は保温性サポーターがおすすめの理由

サポーターは、高齢になるにつれて使用する人が増えます。高齢者には、固定力の強い機能性サポーターがおすすめのように見えますが、「実は保温性サポーターが合っていることが多い」と平沼先生は指摘します。

「高齢者は、機能性サポーターのベルトがうまく着けられないのです。サポーターを着けるときは、少しかがんで膝を動かす必要がありますが、その姿勢がつらい。また、手指に力がうまく入らずベルトを締める力が十分でなかったり、着ける手順などの理解力に乏しい場合があったりと、さまざまな困難があります。機能性サポーターを着けてくれる家族のサポートがない人には、ワンタッチで簡単な保温性サポーターを提案することが多いです」

サポーターの上手な着用法

膝サポーターは、正しく着けることで効果を十分に発揮できます。次のような手順で丁寧に着用しましょう。

STEP1膝の汗をきちんと拭く
膝に汗がついていると汗かぶれの原因にもなるので、タオルで汗を拭きます。サポーターのズレ防止にも役立ちます。

STEP2上下を確認する
サポーターの上下をよく確認しましょう。間違って逆さまに無理矢理着ける人がときどきいますが、十分な効果が得られません。

STEP3サポーターを着ける
床に座るなど、安定した場所で装着します。膝のお皿を下から支えるように着けることがポイント。ベルトタイプは締め付けの強弱を調整して。

STEP4立ち座りどちらの姿勢でもフィットするように微調整を
立っているときや座っているときにも膝が支えられるくらいに、締め付け具合を微調整します。

サポーターを使うときの注意点

サポーターは歩くときだけ着用し、寝るときには外します。平沼先生によると、間違った使い方で多いのは「締め付け過ぎ」だそうです。

「『しっかり締めなければいけない』と思うことから、締め付けが強すぎる人が少なくありません。そうすると、膝から下の血流が悪くなってむくんだりしびれたりすることがあります。そんなときはいったん着用はやめて、医師や理学療法士に正しい着用法を確認してください」

特に気をつけたいのが「腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)」です。金属製の支柱がついた機能性サポーターで締め付けすぎると、膝の腓骨神経が強く圧迫されて足の甲にしびれを感じます。進行して麻痺すると、足首を思うように曲げることができず、歩くときに足を引きずるようになり転倒しやすくなります。

また、洗い方にも気をつけましょう。毎日使用するものなので、手洗いをするか、洗濯ネットに入れて丁寧に洗ってください。無造作に洗っていると傷みが早くなります。

「サポーターを着けると筋肉がやせる」ってウソ? ホント?

サポーターを着用する上で、「膝をしっかりサポートしてくれるのはよいけれど、その分、筋肉が働かずやせてしまうのでは」という声がよく聞かれます。平沼先生によると、「そんなことはありません」とのこと。

「変形性膝関節症を含めて、膝が痛い人は十分に膝を動かせないために1週間くらいで自然に筋肉がやせてしまいます。決してサポーターのせいではありません。ですから、サポーターの使用を自己判断でやめないでください。痛みが半減するあたりから使用をやめることが目安ですが、時期は医師と相談して決めましょう」

サポーター以外の装具療法

サポーターは装具療法のひとつですが、他にも、足底板(そくていばん)、杖などが用いられています。

足底板……初期から中期の変形性膝関節症に用いられる、足の裏につける装具。足の外側を少し高くすることでO脚を矯正し、歩行時に膝の内側にかかる膝への負担を軽くできます。サポーター付きや中敷きタイプなどいろいろあり、健康用品売り場や靴売り場で取り扱っています。

矯正できる角度に限界があることや、靴の中で足底板が滑ってズレやすいといったデメリットもあるので、試着して確認を。

杖……歩くときに体を支え、転倒防止にも役立ちます。立ち上がるときの動作もスムーズです。杖に関して「そんな年ではない」「見た目が悪い」など抵抗を持つ人がいますが、最近はファッション性の高い杖も多く出回っています。上手に杖を活用すれば、外出する機会が増えて運動量もアップします。

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膝の痛みはサポーターで緩和することに役立ちますが、それだけで改善されることはありません。「膝が痛い」と感じたら我慢せずに、整形外科を受診し適切な治療と並行してサポーターのアドバイスを受けてください。

「痛みが初期の段階であればサポーターで対応できますが、中期以降で膝の動揺性がひどくなってくると、サポート効果も十分ではなくなります。早めの対応で、運動療法などを上手に組み合わせて取り組んでいけば、痛みのない膝に戻せる人がたくさんいます」(平沼先生)

取材・文/内藤綾子

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取材協力・監修者プロフィール
平沼尚和
平沼整形外科クリニック 院長
日本医科大学卒。日本医科大麻酔科、日本医科大学整形外科、協友会屏風ヶ浦病院整形外科を経て、2005年に平沼整形外科クリニックを開業。痛みの治療を得意とし、最新のリハビリ機器をそろえて患者に合った治療を行う。

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