医師が教える。プロテオグリカンとは?

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関節軟骨や美容成分の一種として、「プロテオグリカン」というキーワードを耳にしたことがある人は少なくないでしょう。とはいえ、実際にどのようなものか、どのような働きをするのかを知っている人は多くありません。

そこで、関節成分に詳しい松井クリニック院長の松井潔先生に、プロテオグリカンの詳細を解説していただきました。中高年が悩みがちな関節の痛みについてもアドバイスを伺っています。

目次


プロテオグリカンとはどんな成分?

「プロテオグリカン」は、たんぱく質に糖が結合した糖たんぱく質の一種です。

「プロテオ」……たんぱく質(プロテイン)
「グリカン」……多糖類
を意味することから名付けられました。プロテオグリカンは動物の皮膚や軟骨にたくさん存在し、体組織の維持のために重要な働きを担っています。人の場合、脳や骨、筋肉や血管などに存在し、特に関節の軟骨に多く見られます。

プロテオグリカンは糖たんぱく質の総称で、実は20以上の種類があります。代表的なものをご紹介します。

アグリカン……プロテオグリカンの中でも最も代表的で、軟骨組織に存在します。
パールカン……細胞と各組織との間にある基底膜に存在します。
バーシカン……主に皮膚の真皮層(表皮と皮下組織の間)に存在します。

かつては希少だったプロテオグリカン

「プロテオグリカン」というキーワードを、最近知った人は少なくないでしょう。以前は、牛の軟骨の非常に希少な部位からしか抽出する方法がなく、大変高価だったため積極的に活用されることがありませんでした。

ところが近年、サケの鼻にある軟骨からの比較的安価な抽出方法が確立されてからは、化粧品や健康食品など幅広く取り入れられるようになったのです。

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関節とプロテオグリカンの切っても切れない関係

プロテオグリカンは、関節の軟骨成分のひとつとしてもよく知られるようになりました。関節は、肩、股、膝などの骨と骨をつないでいます。私たちの体は、手足を含めて体中に関節があることで、歩く、走る、跳ぶ、回転するといった日常の当たり前の動作ができています。

そんな関節の表面をカバーしているのが軟骨です。関節にある軟骨は、手や足をスムーズに動かすうえ、かかる衝撃を吸収する役割があります。

軟骨は、主に次のような成分で構成されています。

  • ・水分……65~80%くらいを占めています。
  • ・Ⅱ型コラーゲン……弾力を生み出す働きがあり、軟骨のほか、皮膚や骨などにも多く含まれます。
  • ・プロテオグリカン……編み目状に張り巡らされたII型コラーゲンの間に存在し、極めて高い保水力と弾力性があります。


プロテオグリカンは、コンドロイチンやヒアルロン酸などから作られています。また、「関節軟骨にはグルコサミン」というイメージが強いですが、グルコサミンは、プロテオグリカンが作られるときに必要な材料です。

関節軟骨に、プロテオグリカンはどんな働きをする?

関節軟骨に対して、プロテオグリカンには次に挙げるような作用があります。

作用1 保水力
プロテオグリカンのおかげで軟骨は水分を豊富に含み、関節にかかる衝撃を受け止めて和らげます。骨と骨が直接こすり合って傷つくことを防ぎ、動きを滑らかにしてくれます。

作用2 再生力
軟骨を形成する細胞を増やし、軟骨の形成を促進させる働きがあります。この作用によって、軟骨を再生する効果も期待できます。

作用3 鎮痛力
軟骨の炎症を抑えて、関節痛を緩和する働きがあります。

グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンはどう違う?

軟骨成分には、グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンなど、「聞いたことはあるけれど、よく知らない」という成分がたくさんあります。その違いを知っておきましょう。

グルコサミン
体の骨や軟骨、腱・靭帯などに含まれています。軟骨の水分量を高めて弾力性を保ち、動きをスムーズにします。プロテオグリカンやヒアルロン酸が作られるための材料でもあり、また、軟骨成分の合成を促す働きもあります。

コンドロイチン
軟骨のほか、皮膚、血管など体のあらゆる細胞に存在し、細胞同士をつなぐネバネバした成分です。軟骨に水分を行き渡らせて保水効果が抜群。プロテオグリカンを生成し、消耗して傷ついた軟骨組織を再生します。

コラーゲン
軟骨のほか全身に存在し、細胞と組織をつなぎ弾力を与えます。関節軟骨では潤滑油の働きをします。骨の形成にも関係があり、カルシウムの定着をカバーする働きもあります。

プロテオグリカンが減るとどうなる?

年齢を重ねるにつれて、プロテオグリカンを含めた軟骨成分はすべて自然に減っていきます。そうなると、軟骨のすり減りが顕著になるうえ弾力性も低下するので、骨と骨が直接こすれ合うことも。軟骨や関節の健康が著しく損なわれることで、膝や腰などの痛みとなって現われます。膝の痛みは女性に、腰の痛みは男性によく見られます。

膝の痛みによる代表的な病気「変形性膝関節症」

「膝の痛みを訴える患者さんの中で、中高年に多いのは圧倒的に変形性膝関節症です」と松井先生。変形性膝関節症は、加齢に伴って関節表面の軟骨が消耗し、膝関節に水がたまったり、動くときに痛みを感じたりする病気です。

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変形性膝関節症になりやすい人

  • ・高齢者
  • ・女性
  • ・肥満の人
  • ・O脚の人
  • ・膝に負担をかける仕事や生活をしている人
  • ・骨折などのケガをしたことがある人


主な症状

膝を動かしたときに痛い……立ち座り、階段の上り下り、歩行などで膝を動かすときに、痛みが起こります。

膝の曲げ伸ばしがつらい……膝をまっすぐに伸ばして立つ、しゃがむ、正座するといった曲げ伸ばしの際に痛みを感じます。

膝が腫れる……炎症によって過剰に作られた関節液が、膝関節の中にたまって腫れます。この状態を、いわゆる「水がたまる」と言います。

◆主な治療法

薬物療法……外用薬(湿布薬や軟膏)、内服薬(消炎鎮痛剤)、坐薬、関節内注射(ヒアルロン酸など)を症状に合わせて投与します。

リハビリテーション……筋力強化訓練、可動域訓練、歩行訓練、柔軟性を高める訓練などを、理学療法士の指導のもとに行います。

装具療法……サポーター、足底板(そくていばん)、杖などで対応します。使い方も、理学療法士や医師がアドバイスします。

手術……上記で症状の改善が見られない場合は、手術も視野に入れます。関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)、人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)、高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)などがあります。

◆太り過ぎていませんか?

変形性膝関節症では、特に肥満に気をつけなくてはいけません。体重が1kg増えると片足には最低で3kgの負荷がかかると言われています。膝が痛い人は、太り過ぎないようにしましょう。肥満度は、BMIでわかります。

BMI=体重kg÷(身長m×身長m)

BMIが25以上であれば肥満なので注意してください。筋トレや食事の見直しで管理しましょう。

腰の痛みによる代表的な病気「腰部脊柱管狭窄症」

「女性に多いのは変形性膝関節症ですが、男性は腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)です」と松井先生は話します。
この病気は、加齢などにより、腰のあたりの背骨が変形したり軟骨が突き出たりすることで、脊柱管の神経やその中を通っている血管が圧迫されて、腰痛や足のしびれなどを引き起こします。
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◆主な症状

  • ・腰痛
  • ・しばらく歩くと足に痛みやしびれを生じ、前屈みで少し休むとまた歩けるようになることを繰り返す(間欠跛行)
  • ・下肢の痛みやしびれ、だるさ
  • ・足の筋力低下
  • ・排尿障害


◆主な治療法

薬物療法……非ステロイド性鎮痛薬や筋弛緩薬などが投与されます。
理学療法……温熱療法や電気療法などが患者さんに合わせて選択されます。
運動療法……腹筋、背筋、骨盤周囲の筋肉のストレッチと筋力増強を、理学療法士の指導の下で行います。
ブロック療法……局所麻酔やステロイド注射で痛みや炎症を抑えます。
手術……神経の圧迫を除去する目的で行われます。

◆日常生活の注意点

腰に負担をかけないように、次に挙げる日常生活のちょっとした動作に気を配りましょう。

  • ・重い物を持つことや、重労働はなるべく控える
  • ・腰を冷やさない
  • ・長時間、体を反らすような姿勢はとらない
  • ・太り過ぎないようにする
  • ・歩くときは、少し前かがみで。杖や手押し車を使用するのも効果的。可能であれば自転車を利用する
  • ・長距離を歩くときは、休憩をはさみながら
  • ・寝るときは、横向きで少し丸くなるとベター。あお向けでしか寝られない人は、膝下にクッションなどを入れて膝を曲げて寝るとラク
  • ・かかとの高い靴は控える


膝と腰の痛みには筋力アップを!

膝や腰が痛いときは、筋力アップを目指すことが大切です。体の筋肉の7割は下半身にあると言われています。下半身の筋力を鍛えれば、膝や腰をサポートしてくれるでしょう。そこで松井先生のおすすめが「ゆっくりスクワット」です。

ゆっくりスクワット

  1. 1. 両脚を肩幅に開いて立ち、おしりを突き出す感じで2秒かけて腰を下げる
  2. 2. 2秒かけて腰を上げ、まっすぐに立つ
  3. 3. 1と2を1分間繰り返す

「20歳をピークに、1年に1%ずつ筋肉が落ちると言われています。70歳になると、20歳のときの50%しか筋肉がないのです。膝や腰を支えるために、筋力アップを目指しましょう」(松井先生)

プロテオグリカンが肌によいって本当?

ところで、プロテオグリカンが働いているのは、関節軟骨だけではありません。肌にもよい効果をもたらすことがわかっています。プロテオグリカンは、皮膚の成長因子(EGF)と同様の作用があります。そのため、肌表面の新陳代謝を活発にして、表皮細胞の成長を促す効果が。

肌のハリを保ち、シミやシワを抑える効果も期待できます。また、プロテオグリカンには高い水分保持力があり、乾燥しがちな肌の保湿にも役立ちます。

プロテオグリカンを、食事から摂れればよいけれど……

加齢とともに、体の中のプロテオグリカンは減る一方です。そんなとき、「プロテオグリカンを、毎日の食事で補いたい」と思うかもしれません。

プロテオグリカンを含む食材には、魚や牛、鶏の軟骨などがありますが、熱を加えると壊れてしまうため、普段の食事で補うことは難しいと言われています。そこで、簡単に摂取できるのがサプリメントです。

サプリメントの賢い選び方。気をつけることは?

「関節の違和感や痛みに悩む患者さんたちから、『関節によさそうなサプリメントを試してよいですか?』と聞かれることはよくあります。治療の補助として試すのは特に問題ありません」と松井先生は話します。

サプリメントの選び方について、5つのポイントに気をつけましょう。

Point1 成分表示をチェックする
サプリメントが何からできているかは、原材料表記を見ればわかります。天然素材や合成素材があるので、できるだけ天然素材で作られているものを選びましょう。

また、食品添加物が気になる人は、保存料、塩分、砂糖、着色料、発色剤、防腐剤、香料なども確認して。

Point2 誇大広告や効果の怪しいものを避ける
「○万人に効果が!」「あの芸能人も使っている」などといった誇大広告をしている商品には、注意が必要です。

また、サプリメントは食品扱いなので、「病気が治る」などの表示は薬事法で禁止されています。そのような表現を用いて宣伝している商品も避けてください。

Point3 試したくなったら、事前に医師に相談を
「サプリメントを試してみたい」と医師に言いにくい人は珍しくありません。しかし、使用している薬の効果を妨げることもあるので、できるだけ事前に確認してください。

「このサプリメントを使ってみたいのですが」と、見当をつけた商品を提示してみれば、自分に合っているかアドバイスしてもらえます。

Point4 日本で作られている
サプリメントは、日本だけでなく海外の商品も多く出回っています。すべてが信用できるかといえば、残念ながらそうではない場合も。できるだけ日本で作られているものを選ぶと、より安心です。

Point5 製造者・販売者の名称や、問い合わせ先が明記されている
製造者や販売者の名称が記載されているか、必ず確認しましょう。また、「問い合わせ窓口」がきちんと明記されていると、不明点や確認したいことがあったときに連絡ができます。

サプリメントの正しい飲み方

水で飲む
コーヒーやお茶などはカフェインやタンニンが含まれており、吸収を妨げることがあります。水で飲むのが一番効果的です。

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目安量を守る
「たくさん飲めば、効果が倍増するかも」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。ラベルに記載されている目安量を守ることが基本です。ただし、体調などの様子で量を減らすことは問題ありません。

「サプリメントを試すときは、『こんなの効かないのでは』と思うより、『きっと改善するだろう』という前向きな気持ちを持つことが大切です」と松井先生はアドバイスします。

「“病は気から”と言いますが、気持ちの持ち方で症状が改善することもあります。それでも、3ヶ月くらい続けて何の効果も感じないのであれば、使用を中止した方がよいでしょう」

プロテオグリカンの副作用はある?

プロテオグリカンはサケの鼻から抽出されているので、サケアレルギーの人は注意が必要です。発疹などのアレルギー症状が出たら、すぐに使用を中止し医師に報告してください。

「プロテオグリカンに限らず、サプリメントは肝機能や腎機能を悪化させることもあります。血液検査ですぐに診断がつくので、倦怠感などが続くときは医師に相談することを忘れないで」(松井先生)

体は家電と一緒。定期メンテナンスを

膝や腰などの痛みがあると、多くの人はドラッグストアで湿布や薬などを買って試しています。

「それでも、2週間くらい続けて症状が落ち着かないときは整形外科を受診してください」と松井先生はアドバイスします。

また、病院ではなくマッサージへ行く人もいますが、重篤な病気が隠れている場合もあるので、いったん受診して診断がついてから、医師に相談してマッサージへ通うようにしましょう。

松井先生は、「ぜひ、かかりつけの整形外科を見つけて」と話します。

「私は患者さんに『体は家電と同じ』とよく話しています。両方とも、定期的なメンテナンスが必要です。加齢により関節成分が減ることで、体のふしぶしに痛みが出るのは避けて通れないことです。話やすくて、何でも相談に乗ってくれる整形外科の医師を見つけて、定期的に検診を受けると安心です」

「これからは症状が出たら対処するのではなく、事前の予防が重要になる時代」というのが、松井先生の持論です。

高齢になるほど、整形外科医と2人3脚で体を管理していくことが必要に。筋力トレーニング、食事、サプリメントなどで体と向き合うように心がけ、必要なときは無理をしないで受診することが大切です。

取材・文/内藤綾子

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取材協力・監修者プロフィール
松井潔(まついきよし)
松井クリニック院長
北里大学医学部卒業。横浜市民病院・北里大学病院・同救命救急センター・湘南鎌倉総合病院などに勤務し、プライマリーケアから高度難治医療まで、あらゆる診療科を学ぶ。平成12年松井クリニック開院。
https://www.matsui-clinic.net/

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