腰痛を感じたら症状をチェック。あなたの腰痛はどのタイプ?

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腰痛は、多くの人が一度は経験しているポピュラーな症状。とはいえ、ひとことで「腰痛」といっても症状から原因までさまざまあり、日常生活で改善できるものから受診が必要なものまで幅広いのが特徴です。

そんな腰痛に関して、「まずは、自分の腰痛がどのようなものかを知ることが大切です」と話すのは、腰痛治療のプロフェッショナルである松浦整形外科内科の井上留美子院長です。井上先生に、腰痛の原因や症状などの基礎知識を解説していただきました。

腰痛チェックリストも活用して、自分の腰痛と向き合ってみませんか。

目次

 

腰は5つの骨がつながってできている

背骨は身体を支える軸として中心的な部位で、医学的には「脊柱(せきちゅう)」と呼ばれています。脊柱は、椎骨(ついこつ)という骨が1個ずつつながってできており、緩やかなS字状のカーブを描いている構造。椎骨は関節と椎間板(ついかんばん)で連結され、椎間板は衝撃を吸収するクッションのように働きます。

脊柱の腰の部分が「腰椎(ようつい)」です。腰椎は、5つの椎骨が積み木のように重なってできており、腰椎を含めた脊柱全体を筋肉や靱帯が支えています。

腰にはさまざまな負担が集中する

腰は、二足歩行で生活する私たちの動作の中心となる部位です。頭や胴部の重さが腰に集中するうえ、身体を曲げる、反る、ねじるといった複雑な動きも担っています。中腰になれば、立っているときの3~4倍の圧力がかかると言われ、身体の中で最も負担のかかりやすいのが腰なのです。

腰に違和感や痛みがあることを「腰痛」と言いますが、「腰痛」は病名ではなく身体に現れる症状の総称です。日本人の80%が、一生に一度は腰痛を経験すると言われます。

主な腰痛の症状

  • ・腰に違和感がある
  • ・腰が重い
  • ・腰に痛みがある
  • ・ベッドから起き上がるときに痛い
  • ・腰からふくらはぎにかけて痛い、しびれがある
  • ・安静にしていても腰が痛い
  • ・腰が痛くなりそうで不安

など

井上先生は、次のように話します。「腰痛を持っている人は幅広い年齢層に見られ、整形外科外来を受診する患者さんは減ることがありません。症状もさまざまで、偏りがないのが特徴的です。そんな中で目立つのは、40~50代男性が無理に運動をして発症させてしまうケース。この年代の人は、体力の衰えを感じて急に運動を始めてしまうことが多いのです。若いころに比べて筋力や体力も落ちているのに、『昔、やっていたから大丈夫』と、いきなりランニングやサッカーなどを始めて、腰を傷めてしまいます。その他、デスクワークや長時間運転など、同じ姿勢が続く仕事をしている人も要注意です」

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腰痛の原因はひとつではない

多くの人が悩んでいる腰痛ですが、原因がわかっているものは全体の約15%程度と言われています。それ以外は、次のようなことが腰痛に影響を与え、複雑に絡み合っています。

  • ・二足歩行で行動することが可能となったために、腰に負担をかけるようになった
  • ・加齢とともに骨自体がもろくなるうえ、筋力が落ちている
  • ・かがんだり反ったり、長時間の同じ姿勢でいるなど、日常に繰り返す動作や姿勢の影響
  • ・寒い現場での労働、長時間の車の運転といった環境
  • ・腎・尿管結石、胃・十二指腸潰瘍、子宮内膜症、椎間板ヘルニアなどの病気

そのため、画像検査で異常があっても痛みがない、逆に異常がなくても腰痛がつらいなど、さまざまなケースが見られます。

腰痛の原因はわかっていないものも多い

上記のものを踏まえて、腰の痛みは2種類に分けられます。

■原因がわかっている「特異的腰痛」

レントゲンやMRI 画像などで原因となる部位がはっきり写っている腰痛。脊椎分離すべり症、椎間  板ヘルニア、脊柱管狭窄症(きょうさく)などがこれに当たります。安静にしても痛みが続く、発熱が続く、体重減少があるなどといった場合も。腰痛の15%がこのタイプ。

■原因がわかっていない「非特異的腰痛」

原因を明確にすることができない腰痛。原因がわからないと過度の不安が出たり、必要以上の安静をしたりすることで腰痛を長引かせることもあります。腰痛の85%がこのタイプ。

長引く腰痛の原因のひとつにはストレスも

非特異的腰痛の原因として、注目されているのがストレスです。なかなか痛みがおさまらない慢性腰痛のほとんどは、多かれ少なかれストレスが影響して症状が長引いていると考えられています。特に次のような状況で腰痛が悪化するなら、ストレスの影響を疑います。

  • ・心配なことがある
  • ・常に強いストレスにさらされている
  • ・ちょっと触れただけでも激しく痛む
  • ・特定の場面になると痛みやすい
  • ・楽しいことや好きなことをしているときは痛みがおさまる
  • ・痛みが気になると悪化する
  • ・その日の気分や体調により痛みに変化がある
  • ・満足に休みがとれていない
  • ・休日には、痛みをあまり感じない
  • ・寝不足が続いている。または睡眠障害がある
  • ・長時間労働が続いている、働き過ぎている

など

「ストレスは心の問題なのに、なぜ腰痛を引き起こすの?」と思うかもしれません。それには、脳が深く関係しています。脳にある扁桃体は、聴覚や視覚など五感から入った刺激が「快・不快」を判断する部位です。痛みが長引くと、扁桃体が正常に働かなくなることが慢性腰痛に関わっているとも言われています。

ストレスケアが腰の痛みを大きく左右する

「ストレスによる慢性腰痛は、育児中のママも目立ちます。出産前後は体重の増減が激しいうえ、産前は大きいおなかを支え、産後は赤ちゃんの抱っこで腰を酷使します。そんな中、育児で睡眠不足になり、育児ストレスに悩まされて疲弊し、腰痛を引き起こすのです」(井上先生)

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腰痛の原因のひとつにストレスなどの心理的要因があると判断された場合は、薬物療法のほか、カウンセリングや認知行動療法が行われることがあります。整形外科だけでなく、心療内科や精神科、理学療法士なども交えたチーム医療が必要なことも。

井上先生は、次のように話します。「診察では、ストレスの正体がどのようなものかをじっくりと聞きます。『最近、環境に変化はありませんでしたか?』などと促すと、『そういえば、こんなことがありました』と次々に話が出てきて、育児ストレスまみれのママの中には泣き出す人も。それだけで、ずいぶん気持ちが軽くなって症状も落ち着きます」

今すぐやってみよう! 腰痛セルフチェック

腰に違和感や痛みがある人は、腰痛ときちんと向き合い適切な対処をすることが必要です。日常生活の中で、次に挙げたような項目に心当たりはありませんか? さっそく、セルフチェックをしてみましょう。

腰痛セルフチェック

  • □朝、洗面所で顔を洗うときに前屈みになると痛みを感じる
  • □靴下を履くときにつらい
  • □腰をひねると痛い
  • □背中を反ると痛い
  • □荷物を持ち上げるときに痛い
  • □長時間歩いていると痛くなる
  • □立っていると痛い
  • □動き始めたときに痛い
  • □長時間座っていると、腰が張ってくる、もしくはおしりが痛くなる
  • □寝ていても、腰がうずくことがある
  • □立ったり座ったりすると腰がつらい
  • □足にしびれを感じる

 

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ひとつでもチェックがついた人は注意が必要です。湿布などで対応しても改善しない場合は、整形外科を受診してください。一方、日常生活の動作で不便を感じたら、すぐに受診しましょう。

腰痛を伴う代表的な病気

「腰が痛い」という症状には、さまざまな病気があります。腰痛があると、「そのうち治るだろう」「まだ、がまんできるから大丈夫」などと考えがちですが、症状が悪化しないうちに早めに気づいて受診し、治療することが重要です。代表的な病気を紹介します。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

加齢により、椎骨の変形や軟部組織が肥厚することで脊柱管が狭くなり、脊髄や神経を圧迫して痛みが発生します。歩行時に足全体が重くなったり、しびれを伴ったりすることが多く見られます。悪化すると、少し歩いただけで下肢にしびれや痛みが出て歩けなくなり、しばらく休むと消えるという間欠跛行(かんけつはこう)が特徴です。

圧迫骨折(あっぱくこっせつ)

閉経後の女性に多いケガ。大部分は骨粗しょう症により、骨がもろくなり背骨が押しつぶされるように骨折します。重いものを持ち上げる、くしゃみをする、尻もちをつくなどのタイミングで起こることが多いです。徐々に骨折が進行してしまい、圧迫骨折に気づかない「いつの間にか骨折」も珍しくありません。

ぎっくり腰

デスクワークや車の運転、子どもを抱っこする、何かを取ろうとした瞬間など、無理な姿勢や動作のあとに起こりやすいです。

椎間板(ついかんばん)ヘルニア

椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫したり、炎症を起こしたりすることで痛みが生じます。腰痛に加えて下半身の痛みやしびれ、足が上手く動かせなくなる運動麻痺、感覚麻痺などが起こります。

変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)

加齢による変化により、背骨に骨のトゲができたり、背骨の関節がすり減ったりすることが影響して、腰痛や下肢痛を生じます。腰に負担のかかりやすい職業の人や、バスケットやラグビーなど、背骨に負担のかかりやすいスポーツをしていた人も発症しやすいと言われています。

腰痛の裏に隠れた意外な病気とは?

腰痛があれば「背骨や腰に原因がある」と思いがちですが、内臓の病気を伴っていることもあります。次に挙げる病気に注意しましょう。

解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)

大動脈の壁に裂け目ができ、その隙間に血液が入り込んで大きな裂け目となり、血管が膨れあがってこぶ状になります。動脈壁が解離する瞬間に、腰に激痛が走ります。臓器に血流障害が起こり、一刻も早い処置を施さないと命の危険が。

尿管結石(にょうかんけっせき)

結石が尿管などに詰まり、わき腹や背中に激痛を起こします。結石が移動して腰や陰部に痛みが生じることもあります。

子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)

本来、子宮の中にあるはずの子宮内膜組織が、子宮の壁や卵巣などの子宮外に散らばってしまう病気。腰や足を支配する神経が骨盤とつながっているため、月経時に腰痛を引き起こします。

上記のほか、胆嚢、十二指腸、すい臓などの臓器に炎症を伴う病気でも、腰痛が現れることがあります。

腰痛を改善する日常生活の注意点

腰痛は、日常生活のちょっとした心がけで改善できるケースがたくさんあります。次に挙げたポイントを目安に、腰に優しい日常生活を送りましょう。

  • ・ベッドから起き上がるときは、いったん横向きになってから
  • ・背筋を伸ばし、猫背にならないようにする
  • ・イスには深く腰かける。背中にクッションを入れて、骨盤を立てるとよい
  • ・よい姿勢を意識しながら、腕を自然にふり、ひざを伸ばして歩く。歩きやすい靴を選んで
  • ・荷物は小分けにして両手で持ち、身体を左右バランスよく使う
  • ・買い物は、できるだけショッピングカートを利用する
  • ・荷物を持ち上げるときは、床に片膝を立ててから
  • ・毎日の入浴でゆっくり腰を温める
  • ・おしりが沈み過ぎる柔らかいマットレスや、逆に適度に沈まない硬すぎるマットレスはNG。寝るときは横向きがベター

 

食事で気をつけたい体重コントロール

腰は体重を支える中心部位なので、負担をかけないように太り過ぎに気をつけなくてはいけません。体重コントロールのひとつの目安として、BMI(肥満度)があります。

計算式
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

BMIが25以上だと「肥満」と判定されるので、超えないことがひとつの目安になります。

「ただし、数字にこだわりすぎて、『なんとしても25未満にしなくてはいけない』と過激なダイエットをしたり、ストレスを抱えたりするのもよくありません。無理にやせてしまうと、筋肉もやせてしまい腰を十分に支えられなくなることもあるからです。身体を軽く動かせて、体調も良好になる“快適な状態”のときが、その人にとっての理想的な体重という考え方もあります。自分の感覚を目安にしてもよいでしょう」と井上先生は指摘します。

「痛いから安静に」と思ってしまいがちだけれど

腰痛があると、

身体を動かすのがつらくなる

運動しなくなる

筋肉がやせて、柔軟性もなくなる

身体を動かすのが余計つらくなる

といった悪循環になります。以前は、「腰痛があるなら安静にしましょう」と言われていました。しかし、最近ではその考えは変わってきています。痛みがひどいときは安静にしてもよいですが、ある程度軽減したら、積極的に身体を動かすことがすすめられています。

井上先生おすすめ! 腰痛予防のストレッチ

硬くなった筋肉を動かすことで血液の流れが促進され、酸素と栄養が行き渡ります。ここでは、井上先生が診療の現場で患者さんたちに指導しているストレッチをご紹介します。

ハムストリングのストレッチ

1. 背筋を伸ばし、イスに深く腰かける(イスは背もたれがあると、より安全)
2. 右足を上げ、足の裏で両手を組む
3. 息を吐きながら、右足を前方に尽き出して膝裏を伸ばして5秒キープ

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4. 息を吸吸いながら1まで戻す
5. 左右交互に3回ずつ行う

足裏が十分に伸ばせない人は、手で足首を持つ、足裏にタオルをひっかけるといった方法でも大丈夫です。

できない人は、これでもOK!
イスに座りながら行うのが難しい場合は、床にあお向けになる方法で。足を床に垂直に上げ、タオルを足裏にひっかけて膝裏を伸ばします。

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井上先生おすすめ! 腰痛予防の筋トレ

上記のストレッチに続いて、井上先生が患者さんたちにすすめている筋トレです。背骨を安定させるのに役立ちます。

ダイアグナル

1. 床へ四つんばいになる。手は肩幅、足は腰幅に間隔をあける
2. 右手は肩の高さに、左足は後ろへと上げ、手と足が床と平行になるようにする。5秒キープしたあと元に戻り、反対側も同様に。左右交互に30回行う。

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身体がグラつかないように注意します。どうしても身体が安定しない人は、片手だけ、片足だけを上げる段階から始めてもよいでしょう。

「まずはこれで、インナーマッスルを鍛えることが第一です。その後、ウォーキングや水中ウォーキングなどの有酸素運動を行いましょう。ウォーキングは1日6000歩を目安に、 体力向上には8000歩以上が必要とされています。できれば大股・早歩きができると理想的です。『どうしても今日はしんどい』というときは無理をしないで、踏み台昇降や腹式呼吸の練習をするだけでもかまいません」と井上先生はアドバイスします。

治療して症状が改善したら、そこからがスタート

井上先生によると、腰痛で受診したのち、症状が改善すると以前の生活に戻ってしまう人がいると言います。

「腰痛は、加齢とともに骨が変形したり筋力が衰えたりするので、年々リスクが上がります。治療して終わりではなく、痛みのない生活を維持するスタートラインに立っていることを自覚しましょう。食生活を見直し、ストレッチや運動を欠かさず、きちんとした身体づくりを習慣づけてください。自覚を持てば、腰痛とは縁遠い毎日を送ることができますよ」と井上先生はエールを送ります。

取材・文/内藤綾子

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取材・監修者プロフィール
井上留美子(いのうえるみこ)
松浦整形外科内科院長
聖マリアンナ医科大学卒業。長男出産後に父親のクリニック「松浦整形外科」の院長となる。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。整形外科ヨガ事務局代表。
松浦整形外科

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