腰痛の治し方はストレス軽減もポイント?!医師に聞く対処法

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近年の腰痛に関するさまざまな研究により、新たな事実が明らかになっていると言われています。「何をやっても腰痛がよくならない」のは、これまでの腰痛の常識にとらわれすぎているからなのかもしれません。昭和大学江東豊洲病院 整形外科の星野雄志先生に、治療法のアプローチのひとつとして効果が期待される方法や腰痛治療に対する考え方などを伺いました。

目次

 

原因が特定できる“特殊な腰痛”は約15%

厚生労働省2015年国民生活基礎調査によると、腰痛の人は約2800万人いるという結果が報告されています。これは、およそ日本人の4人に1人が腰痛で悩んでいるということになります。高齢者だけでなく若年層にも多い腰痛は、もはや国民病とも言える体の愁訴のひとつです。

腰痛を生じる原因が特定できる疾患は「特異的腰痛」と呼ばれる“特殊な腰痛”で全体の15%程度です。残りの85%は「非特異的腰痛」と呼ばれる“普通の腰痛”で、椎間板や骨の形などに異常はなく背骨の変形もない、また、下半身に神経の感覚異常や筋力低下もない場合で、痛みの原因を特定できないものを言います。患者さんの訴えと医師による問診・診察の所見やX線、MRI(磁気共鳴画像装置)、CTなどの画像検査と一致しない科学的に証明できない腰痛のことです。

例えば、画像では異常が確認できないのに、患者さんは腰痛を訴えている。あるいは、画像では椎間板ヘルニアの痛みが出てもおかしくない状況にも関わらず、腰痛をまったく感じない患者さんがいるというようなケースです。

特殊な腰痛にはどんな病気があるの?

腰に痛みがある場合、考えられる主な病気は「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」、「脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)」、「骨粗しょう症」と、それに伴う「圧迫骨折」です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄など腰の神経の障害により起こる腰痛は、特殊な腰痛の15%のうち約10%を占めると言われています。症状や痛みの特徴は次の通りです。

【椎間板ヘルニア】
椎間板はゼリー状の髄核(ずいかく)と、髄核を守る線維輪(せんいりん)から形成されている。椎間板の弾力が衰えたり、強い圧力が加わったりすると繊維輪が破れ、その中にある髄核が飛び出すことがある。飛び出した髄核が神経を圧迫し痛みが出る。腰痛の他に、脚に痛みやしびれなど神経症状が現れる。ほとんどの場合、症状は左右のどちらか一方に現れる。若年層に多い病気。

椎間板ヘルニアは症状により治療法は異なる。神経症状もなく程度が軽い場合は、腰痛改善のために運動療法で痛みを起こさないようにする。痛みがある場合は、その程度により薬物療法や神経ブロック注射で痛みを抑える。痛みやしびれが強い場合は、神経を圧迫している部分を切除する手術も検討される。

【脊柱管狭窄】
加齢などにより、背骨やその周辺にある組織が変形したために、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫された状態。脊柱管狭窄は、「変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)」など、原因となる病気がさまざまある。

腰部脊柱管狭窄症では腰痛のほか、腰から脚にかけて痛みやしびれ、脱力感などが現われる。特徴的な症状に「間欠跛行(かんけつはこう)」がある。これは、歩いている途中で脚に痛みやしびれが起こり歩けなくなるが、少し休むとまた歩けるようになる症状のこと。

脊柱管狭窄は程度により手術も必要だが、基本的に保存療法を行う。薬物療法と運動療法で改善する場合もある。50歳代以降に多い。

【骨粗しょう症・圧迫骨折】
高齢になると加齢現象のひとつとして誰でも骨が弱くなってくるが、女性の方が骨量は少なく閉経により急激に減少するため、骨粗しょう症は閉経後の女性や高齢者に多く起こる。

骨がもろくなっているため、ちょっとしたことで骨が折れやすく、自分では気がつかないうちに圧迫骨折を起こしていることがある。いつの間にか背骨が自然に徐々につぶれてきて背中が丸くなることもあり、身長が縮んだことで気づく人もいる。

以前は骨粗しょう症自体に痛みはないとされてきたが、最近の研究では骨粗しょう症自体も痛みを生じているのではないかと言われている。

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腰以外にも原因がある腰痛を伴う病気

前章の疾患は整形外科の診療範囲に含まれますが、実は腰痛を症状とする疾患には下記のような病気の可能性もあり特に注意が必要です。

【化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)】
椎体や椎間板に細菌感染が起こり強い痛みを引き起こす。肺炎や尿路感染からその細菌が血流にのって脊椎に感染すると考えられている。悪化すると椎体や椎間板にうみがたまり、背骨が壊れて神経の圧迫やまひを生じる可能性もある。

主な症状は背中から腰にかけて痛みが起きるが発熱が出ることもある。うみが周囲の筋肉内に達すると痛みのために足をまっすぐに伸ばして眠ることができず、膝を曲げて眠るのがこの病気の特徴。高齢者や糖尿病患者に多い。

発症により、高熱と激しい腰背部痛がともなう「急性型」、37度台の微熱のみで痛みがない「亜急性型」、発熱がなく、腰背部痛などの局所症状のみがみられる「潜行型」の3つに分類される。治療はコルセットの装着などで安静にすることと抗菌薬の投与。症状によっては手術を行う必要がある。

【内臓の病気】
「腎臓結石」や「尿管結石」、「腎盂腎炎」、「十二指腸潰瘍」、「子宮内膜症」、「子宮筋腫」や「胆のう炎」など内臓の病気により腰痛が起こることもある。

【がんや腫瘍】
「大腸がん」や「転移性脊椎腫瘍」、「馬尾(脊髄)腫瘍」などによる腰痛は、その部位で最初に発症することは少ないので早急に治療が必要。

【血管の病気】
「腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)」や「糖尿病」により腰周辺の血流が悪くなることがあり、これが腰痛の原因となる場合もある。

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“腰痛のセルフチェック”で腰の状態を確認!

多くの腰痛は普通の腰痛ですが、なかには放置すると危険な腰痛もあります。腰に痛みや違和感がある場合は、すぐに下記の「腰痛のセルフチェック」で調べてみましょう。

  • □ 1.転んだり尻もちをついたりした直後から痛みが出はじめ、日常生活に支障が出ている
  • □ 2.高齢の女性で布団から起き上がるときや立ち上がるときに、背中や腰に強い痛みを感じる
  • □ 3.イスに座っても横になっても腰が痛い。どの姿勢でも痛みが変わることがない。
  • □ 4.痛み止めの薬を1カ月近く服用しても腰の痛みが緩和されない
  • □ 5.痛みやしびれがはじめは腰やお尻周辺だったが徐々に膝下、足まで広がった
  • □ 6.つま先立ちやかかと立ちが困難で、脚に力が入りにくい
  • □ 7.肛門周囲が熱くなったりしびれたりする。尿が出にくい、頻尿、残尿感がある

 

「1と2のどちらかが当てはまる場合は、骨粗しょう症により背骨がつぶれる圧迫骨折が起きている可能性が考えられます。

3と4の一方が当てはまる場合は腫瘍やがん、感染といった病気が疑われるので、すぐに医療機関を受診してください。

5と6のどちらかが当てはまる場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄など腰の神経の障害が原因で症状が起きている可能性があります。この病気は進行することがあるので注意が必要です。

7に当てはまるような排尿や排便に障害が起きているときは、「膀胱直腸症(ぼうこうちょくちょうしょう)」が疑われ、その場合は緊急手術が必要です。

ただし、男性の場合は「前立腺肥大」の可能性もあります。上記のうち1つでも該当する場合は、レッドフラッグの「特殊な腰痛」であると考えられるので、医療機関の診察を受けてください」(星野先生)。

心理的・社会的要因で腰痛が長引くこともある

近年の研究で、腰痛の一部には「心理的・社会的要因」が大きく関係していることが判明してきました。心理的要因とは不安やストレス、抑うつなどの“心の問題”。

社会的要因とは人間関係や仕事上の問題、経済的な問題などの“社会状況・環境の問題”を言います。腰は気持ちや考え方に左右されやすい部位なので、炎症が治まっているのに痛みが改善されないという場合、体のケアとともに、心のケアが必要になることもあります。

心の負担の程度をチェック!

下記の質問に答えて心理的な負担の程度をチェックしてみましょう。

  • 1 私のような腰痛の人が活動的に動くのは安全とは言えない
  • 2 ここ2週間を振り返ったとき、心配事で悩むことが多かった
  • 3 私の腰痛は良くならないと思う
  • 4 以前は楽しめたことが最近は楽しいと思わなくなった
  • 5 最近(2週間以内)、腰痛がとてもわずらわしいと感じた

 

5項目のうち4項目該当する場合は、心理的な負荷がかかっていると考えられます。これまでの腰痛治療だけでは改善が難しいので、整形外科で腰痛治療を行うと同時に心療内科(当院では精神科)などで専門的な治療を受けることが望ましいでしょう。

「腰の痛みが3カ月以上続く状態が“慢性腰痛”。これには2つのタイプがあり、腰に異常がないのに痛みが続くケースと、腰の炎症が治ったのに痛みが続くケースです。

心理的・社会的な要因による影響はイエローフラッグで腰痛が慢性化しやすいと言われています。慢性腰痛の問題点は悪循環が起きやすいこと。心理的・社会的な要因の有無を確認しないまま、腰痛の出た体の方の治療だけを繰り返していると、効果が出ないため治療への不満が増し、ストレスや不安感が増えるという悪循環が起こります」(星野先生)。

ドクターがズバリ解説する、腰痛の対処法

「特定の原因が見つからない」というと驚く人も多いと思いますが、腰には骨や関節がたくさんあるので、腰痛の原因をひとつに絞ることは難しく、さまざまな要因が重なっている場合もあります。たとえ原因が特定できなかったとしても腰痛は治療できます。星野先生に教えていただいた腰痛に効果的な対処法は次の通りです。

  • 1 「腰」のために毎日適度な運動を行う
  • 2 できるかぎり普通の生活を続ける
  • 3 ストレスを小さくする

 

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“腰”のために毎日適度な運動を行う

腰痛では、背骨の椎間板、骨と骨をつなげている靭帯や背骨を支える筋肉に炎症が起きています。炎症が起きている部分に運動を加えると、その炎症が治まってくることがさまざまな研究で解明され、2000年以降、病院でも運動は有効な治療法として取り入れられています。

「腰痛の場合は、泳げる人にはプールでの運動を薦めています。直線コースを歩くだけでもいいのですが、私が一番お薦めしているのが、小さいビート板を使った運動です。ビート板を股に挟んでゆっくりクロールで泳ぎます。ビート板を股に挟むことで両脚を大きく動かすことができなくなるため、体幹がぶれているとまっすぐ泳ぐことができずに曲がります。

体幹がぶれていることがわかるということは、それだけ体幹を意識できたということ。この運動を続けることで、腰を安定させるために必要な筋肉を鍛えられます。しかも、通常の運動の1.5~2倍の効果が期待できます」(星野先生)。

「泳げない、運動が苦手という人には20分の散歩を薦めています。それだけだとなかなか継続できないので、その内容を毎日、日記に書いて1カ月続けるように指導しています。

患者さんのなかには『買い物で20分歩きました』という人がいますが、それは、腰のための運動ではないのでNGです。“腰”のために時間をつくることが大事。それは、例えば子どもに対する教育と同じで、料理しながら勉強教えたとしても子どもは教えてもらったと思いませんよね。横について教えてあげて初めて教えてもらったと思う。腰もそれと同じというように患者さんには話をしています。

それともう一つ、質にはこだわらないということも大事です。何かのために時間をとるように伝えると、使う道具などにこだわり、それを用意してからではないと始められない人が多いのですが、まず、時間を確保することから始めましょう」(星野先生)。

できるかぎり普通の生活を続ける

「腰痛の予防や改善するための姿勢や歩き方を覚えて実践するという方法もありますが、実際、それを毎日続けようとすると、ストレスを感じる人もいるのではないでしょうか。姿勢や歩き方を気にするあまりストレスを感じるよりも、多少痛みを感じる程度であれば、できるだけ普通の生活をしてください。

腰痛があることを認めて自分の痛みに寄り添いましょう。慢性腰痛の場合、痛みがあるから安静にするというのはむしろ逆効果。無理をしない範囲で家事や仕事を続けましょう。

そして、もし痛みを感じたときは、いつ、どこで、どのような姿勢のときに痛みを感じたのかをインプットしておいて、病院に行ったときにその情報を医者に伝えてください」(星野先生)。

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ストレスを小さくする

「腰痛を治す方法のひとつとして、“ストレスコーピング”という新しい概念があります。ストレスコーピング(stress coping)とは、ストレスを軽減・除去するための対処法を表すことばです。

人は普段ストレスを感じたとき、無意識のうちに自分に有効と思えるストレス発散やリラックス法でストレスの対処を行っています。しかし、こうした方法では対処しきれない場合に有効なのがストレスコーピングです。

ストレスをすべて取り除くことは難しいので、それよりも、少しでも楽しいことを実行してストレスを発散させるという方法です。心理的・社会的要因を取り去るというのではなく、“楽しいことを考えてストレスを小さくしてあげる”という考え方もひとつのアプローチとしてあるのではないかと、私は考えています」(星野先生)。

楽しいと思えることは一人一人異なるので下記は一例。

  • ・15分間だけ片付けをする
  • ・新婚当初の妻(夫)の顔を思い出す
  • ・犬の肉球の匂いをかぐ
  • ・歯を磨く
  • ・ズズズーッと音をたててラーメンの麺をすする
  • ・夜空をボーッと見上げる
  • ・無料コンサートに行く

 

何度も腰痛を繰り返す、一度腰痛になるとなかなか治らない人は物事をネガティブに捉えがちで、ストレスを感じやすい傾向にあるのではないでしょうか。視点を少し変えて、ストレスコーピングを生活の中に取り入れてみるのもひとつの方法です。

腰痛を生じる原因が特定できる疾患は「特異的腰痛」と呼ばれる“特殊な腰痛”で全体の15%程度。残りの85%は「非特異的腰痛」と呼ばれる“普通の腰痛”です。腰痛の一部には「心理的・社会的要因」が大きく関係しているため、炎症が治まっているのに痛みが改善されないとか、何度でも腰痛を繰り返すような場合は、体のケアとともに心のケアが必要になることもあります。

腰痛の治療に効果的な方法は3つ。1.毎日20分の散歩など、腰のために適度な運動を行うこと。2.腰痛があることを認め、できるかぎり普通の生活を続けること。3.“ストレスコーピング”という、楽しいことを考えてストレスを小さくするという方法を取り入れる。以上の方法を参考に実践してみてはいかがでしょうか。

取材・文/高橋晴美

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取材・監修者プロフィール
星野 雄志
昭和大学江東豊洲病院 整形外科 講師
専門分野は脊椎脊髄外科。日整会専門医、日整会認定脊椎脊髄病医、運動器リハビリテーション医、脊椎脊髄外科指導医。1997年 昭和大学整形外科、2003年 NTT東日本関東病院整形外科出張などを経て現在に至る。
昭和大学江東豊洲病院

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