【医師監修】コンドロイチンって膝の痛みに効果があるの?

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座る、立つ、歩く、走る。
私たちが日常行うこの一連の動きすべてに関わっている、膝。数ある運動器官の中でも、特に負担が大きく、障がいを起こしやすいと部位の1つと言われています。

特に、年齢とともに増えるのが「変形性膝関節症」による膝の痛み。人生100年時代、自分の足で歩き続けるためにできることとは? 膝の痛みに詳しい、南新宿整形外科リハビリテーションクリニック院長の橋本三四郎先生に、痛みが起きる理由、コンドロイチンやグルコサミンの効果などを伺いました。

目次

膝の痛みが起こるのは、なぜ?

膝の痛みを伴う病気にはさまざまなものがありますが、40代以降に生じる慢性的な膝の痛みなかで最も多いのが「変形性膝関節症」。ひざの関節軟骨や骨がすり減ったり、変形したり、欠けたりすることによって、こわばりや痛み、腫れなどの障がいが出る病気です。

●膝の関節軟骨とは?

膝の関節部分では、太ももの大腿骨(だいたいこつ)、すねにある脛骨(けいこつ)、ひざのお皿である膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨が接しています。これらの骨が接する部分を覆っているのが、関節軟骨。関節軟骨の表面を骨がスムーズに滑ることで、足のさまざまな動作が可能になります。

また、半月板と呼ばれる軟骨様組織も、膝の曲げ伸ばしなどで受ける衝撃を緩和するクッションのような役割を担っています。

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●「変形性膝関節症」の痛みの原因は?

「変形性膝関節症」は、多くの場合、年齢とともに関節軟骨が弾力性を失って、すり減ってしまうことで起きます。ただし、関節軟骨には、神経も血管も通っていないので、それ自体が傷ついても痛みは生じません。では、なぜ膝の関節軟骨がすり減ると、痛みを生じるのでしょう。

関節軟骨がすり減りはじめると、次第に痛みや炎症が出てきますが、これはすり減った関節軟骨の破片が滑膜という組織を刺激して炎症を起こしたり、半月板の周りを傷つけたりするため。

さらに進行して、関節軟骨がすり減って骨にまでダメージが及ぶと、骨の異常を修復しようとする働きが過剰になって、骨にトゲ(骨棘:こっきょく)ができます。関節軟骨がほとんどなくなるほどすり減ると、骨と骨がぶつかり合うようになり、杖や手すりがないと歩けなくなるほど痛みが強くなる場合が多くあります。

最終的には関節軟骨が完全になくなり、骨が露出した状態に。こうなると人工関節の手術の検討が必要になるでしょう。

最初は膝の軽い違和感やこわばりから始まり、長時間かけてゆっくりと進行するのが「変形性膝関節症」の大きな特徴。関節軟骨と半月板は、一度大きくすり減ったり欠けたりすると、再生することはないとされています。

●どんな人が発症しやすい?

「変形性膝関節症」は、加齢とともに発症する人が増える傾向があります。先述したように、歳を重ねるにつれ、関節軟骨はすり減り、半月板も硬化していくためです。

また、関節軟骨や関節液の中にある「ヒアルロン酸」も加齢とともに減少し、関節のなめらかな動きに支障をきたすことも一因だと指摘されています。さらに、運動不足による筋力の低下、肥満による付加の増大、姿勢の悪さなども「変形性膝軟骨症」を招く要因とされています。

一方で、年齢に関わらず、靱帯損傷や半月板損傷などの怪我が原因で発症するケースもあります。

●「変形性膝関節症」以外の膝の痛みは?

「変形性膝関節症」の他にも、膝の痛みを生じる病気には以下のようなものがあります。いずれも突然、激しく痛むという点が「変形性膝関節症」とは異なります。

・スポーツ外傷
日常では行わないような激しい動きをした後に、痛みが出るのが特徴です。

・リウマチ性関節炎
関節の炎症を起こす自己免疫疾患の一種。指や手首、肘などの関節がこわばり、腫れやほてりが生じます。

・痛風
血中の尿酸濃度が高い高尿酸値血症が原因で起こる急性の関節炎。足の親指の付け根の関節が痛むことが多いですが、膝が痛む場合もあります。

・偽痛風
痛風に似た症状を起こす関節炎。尿酸ではなくピロリン酸カルシウムの結晶が関節内に沈着して、膝関節や手足、股関節などに激しい痛みを起こします。

・化膿性関節炎
膝の怪我や手術が原因で、黄色ブドウ球菌などの細菌が関節内に入り込んで炎症が起こり、化膿する病気。関節が腫れ、急激に強い痛みを感じ、悪寒や発熱、震えなどの症状が出ます。

・大腿骨顆部(かぶ)骨壊死
大腿骨の一部が陥没する膝の病気。発症時には膝に激痛が走りますが、発症直後のレントゲン検査では発見されない場合が多くあります。

コンドロイチンの役割って? グルコサミンとどう違う?

コンドロイチンやグルコサミンは、私たちの健康な膝関節を保つ上で欠かせない成分です。

膝の関節軟骨の約70%は水分(関節液)で占められています。そして、関節軟骨内では、保水力の高い「プロテオグリカン」という成分が太くて丈夫なコラーゲン繊維にからみつき、ひざ関節の弾力を保っています。

「プロテオグリカン」は、コア(核)となるたんぱく質に、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸などの成分が結びついたもの。体積の何倍もの水分を含んでいるスポンジのような存在です。膝を動かして圧力がかかると水分を押し出して圧力を分散し、圧力がなくなると元に戻る、ということを繰り返して日々の活発な動きに順応し、衝撃に耐えています。

●コンドロイチンとは?

コンドロイチンは、この「プロテオグリカン」の中に含まれる成分の1つ。糖が鎖のようにつながってできたムコ多糖類の一種で、ひざ関節の水分を保つ働きをします。

また、関節軟骨を分解する酵素の活動を妨げたり、「プロテオグリカン」やコラーゲンの生成を促したりする働きも。さらに、カルシウムの代謝や血中コレステロールの除去に関わり、骨粗しょう症や動脈硬化、高血圧を予防する働きがあることも知られています。

●グルコサミンとは?

一方、グルコサミンの大切な役割は、「プロテオグリカン」を生産すること。グルコサミンは、グルコースとグルタミンから構成されたアミノ糖です。分子量が低く、関節軟骨だけでなく、骨、血管、皮膚など全身の結合組織の「プロテオグリカン」を合成します。

また、好中球(血液中の白血球の約半分を占める細胞)に取り込まれたグルコサミンは、活性酸素産生などの炎症作用を抑制する働きも。血管内皮膚細胞に取り込まれたグルコサミンは動脈硬化を防ぐ働きがあることも知られています。皮膚細胞ではコラーゲン産生や水分保持にも役立っています。

コンドロイチンやグルコサミンの効果は? 副作用はある?

私たちは、日頃の食事から摂取したブドウ糖とアミノ酸からグルコサミンを合成し、そこからコンドロイチンを生産して、膝の健康を保っています。グルコサミンが体内に豊富にあれば、膝関節の「プロテオグリカン」やコンドロイチン、ヒアルロン酸も大量に生産され、より多くの水分を関節軟骨内に保ち、関節軟骨の退化を防ぐことができます。

しかし、歳を重ねるごとにグルコサミンの生産量は徐々に減っていきます。そこで、グルコサミンなどをサプリメントとして摂取して、「変形性膝関節症」の原因そのものに働きかけようという新たな療法が、ここ20年ほどで急速に普及しました。

もちろん、コンドロイチンやグルコサミンを服用したからといって、失われた膝の関節軟骨や半月板がニョキニョキと生えてくるようなことはありません。ただ、コンドロイチンやグルコサミンには、関節軟骨のすり減りや痛みを抑制する作用など、さまざまな効果が期待されています。

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コンドロイチンとグルコサミンのサプリメントを用いた療法は、1995年にアメリカ・アリゾナ大学の医学博士ジェーソン・セオドサキス氏が著した『The Arthritis Cure』というベストセラー本がきっかけで世界的に有名になりました。

私は当時、アメリカ・サンディエゴの研究所で軟骨損傷と修復のメカニズムについて研究していたこともあり興味を持ち、日本にコンドロイチンとグルコサミンを紹介したという経緯があります。

その際に、コンドロイチングルコサミンを購入した216人の方々にアンケートを取ったところ、「グルコサミンとコンドロイチンを飲んで痛みが軽くなった」と答えた人が60%に達しました。
*出典:『グルコサミン研究』9、2913、P83-93

コンドロイチンとグルコサミンは、もともと私たちの体内で生成されている物質なので、副作用がほぼないというのも特徴の1つ。ほとんとの論文で数パーセントに胃腸障害の軽妙な副作用を認めるのみで、重篤な副作用の報告はありません。

また、グルコサミンはアミノ糖の一種ということで、以前は糖尿病の人の摂取は注意するように言われていました。しかし、グルコサミンの投与で血糖値が変動することはなく、糖尿病の悪化例はほとんど報告がありません。定期的にモニターしていれば問題ないと考えます。

サプリメントで摂る場合は、付き合い方に気をつけて

日本では、コンドロイチン(コンドロイチン硫酸)について、一部の純度の高いものは、「一般用医薬品」となっています。また、純度の低いコンドロイチンやグルコサミンは、健康食品(サプリメント)として流通しています。ただし、医薬品と認定されていないからといって、その作用自体が否定されるわけではありません。

●一般用医薬品とは?

医師による処方箋を必要としない医薬品。薬局やドラッグストアで販売されているもの。

●健康食品(サプリメント)とは?

健康の維持・増進に資する食品として販売されるもの。薬局やドラッグストアのほか、スーパーやコンビニエンスストアなどで気軽に入手できるのが特徴。

コンドロイチンやグルコサミンは、痛み止めの薬のように「飲んだらすぐ痛みがとれる」など、効果がすぐに出るものではありません。また、「変形性膝関節症」が進行して、手術の必要があるような症例にはあまり効果がみられない場合が多いと言えます。以下のようなことに気をつけて、効率的に摂るようにしましょう。

・1日の目標摂取量を毎日しっかり摂る
コンドロイチンやグルコサミンの作用をより確実にするには、1日の目安となる量を守りましょう。一般的に、1日あたりコンドロイチン1200mg、グルコサミン1500mgが目安です。コンドロイチンやグルコサミンは、ある程度の量を摂らないと効果が期待できません。私のクリニックに来られる患者さんには、効果がない場合は量を倍に増やすこともあります。

・ほかの配合成分も確認する
サプリメントで摂る場合は、コンドロイチンやグルコサミンの成分の他にも、生薬やハーブなどそのほかの成分を配合しているものあります。それらが身体に合わない場合もありますので、体調不良を感じたら医師の診察を受けましょう。

・甲殻類アレルギーの人は原料に注意する
グルコサミンの多くは、原材料としてカニやエビを使っていることが多いため、甲殻類アレルギーのある方は原料に注意が必要です。

・体調の変化を感じたら中止する
他の薬と同様に、使用中に体調の変化や何らかの異常を感じたら、すぐに摂取をやめて医療機関を受診しましょう。

これまで、コンドロイチンやグルコサミンが、膝痛や「変形性膝関節症」の軟骨変形を防ぐ効果については、肯定的な研究と否定的な研究の両方が発表されてきた経緯があります。

2016年、ようやくこれまでの研究の問題点を解決する重要な論文が発表されました。「変形性膝関節症」の患者の中でも、関節症の悪化因子である内側半月板逸脱群では、コンドロイチンとグルコサミンを摂取した群に優位な軟骨保護効果が見られました。

また、「変形性膝関節症」の予備軍である肥満女性に対して行った研究では、グルコサミンが「変形性関節症」のリスクを軽減させたことが分かったのです。

上記の研究では、最低でも2年〜2.5年間続けて摂取した人たちに優位な効果が見られました。つまりコンドロイチンやグルコサミンは、長期にわたって摂取することが重要だということ。そして、長期間摂取しても副作用が少ないのは大きなメリットだと考えます。

1週間で痛みが軽減したという人もいれば、6カ月待ってようやく実感できたという人もいます。まずは3カ月間ほど続けてみる。それでも痛みや関節機能が改善されない場合は、運動療法や薬物療法などを組み合わせる治療法に切り替えると良いでしょう。

予防的な摂取や、膝の軽い違和感や膝痛で受診したものの特に治療が必要なかった場合などにも向いていると考えます。

関節の痛みがある人におすすめの食材はある?

残念ながら、「これを食べれば、膝の痛みが消える」といった食材はありません。

ただ、膝の痛みは、早期であればあるほど、運動療法・薬物療法などの保存的治療を続けながら、食事や運動、姿勢などの生活習慣に気を配ることで改善するケースが増えていきます。以下のようなことに気をつけながら、栄養バランスの良い食生活を心がけるようにしましょう。

・カロリーの取り過ぎに注意
肥満によって膝への付加が大きくなると、「変形性膝関節症」になるリスクが高まります。膝には、階段を降りるときには体重の3.5倍もの付加がかかるとされ、体重が3kg増えるだけで膝への付加は10.5kgも増えることになるのです。

カロリーの取り過ぎに注意して、体重が増えすぎないように配慮しましょう。すでに肥満ぎみの人は、体重を減らすことで「変形性膝関節症」の予防や症状を和らげることができます。

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・たんぱく質もしっかり摂る
肥満予防のためやコレステロールが気になるために毎食のたんぱく質の摂取量を減らし、栄養失調になっている患者さんが特に高齢の方に目立ちます。膝の関節軟骨を構成するコラーゲンは、たんぱく質の一種です。肉や魚、卵などを積極的に摂るようにしましょう。

・1日3食をゆっくり食べて
ダイエット中だからといって食事を抜くと、基礎代謝が悪くなり、かえって太りやすくなることも。また、脳が満腹感を得るのは、食べはじめてから20〜30分後と言われています。1日3食を、ゆっくり、よく噛んで食べること。腹一杯で苦しくなる前に、空腹感が消えたところで食べるのをやめましょう。

40代以降の特に女性が発症することが多いと言われている「変形性膝関節症」。
人生100年時代と言われる今、予防を意識した食生活や運動習慣を考えておくことは、とても重要す。適度な運動を行って筋肉の衰えを予防しながら、バランスの良い食生活を心がけること。肥満に気を配りながら、コンドロイチンやグルコサミンなど、加齢とともに減少する成分をサプリメントなどで摂ることも予防のための一助となるでしょう。

そして、膝に痛みを感じた場合は、「たかが膝痛」「我慢すればなんとかなる」ではなく、早めの受診・治療を行うことも大切。「変形性膝関節症」は、早期診断と治療が大切な疾患だと言われています。「何かおかしいな」と感じたら、信頼のできる医療機関を選んで受診することをおすすめします。

取材・文/武田明子

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取材・監修者プロフィール
橋本三四郎(はしもとさんしろう)
南新宿整形外科リハビリテーションクリニック院長
産業医科大学卒業。久留米大学整形外科、カルフォルニア大学サンディエゴ校への留学、スクリプス研究所での勤務を経て帰国。2001年に「ハシモトクリニック」(2012年に現名称)開院。著書に『ひざに「!」を感じたら読む本』(幻冬舎)など。
南新宿整形外科リハビリテーションクリニック

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