【中高年ランナー必見】ランニングで膝痛が起こる原因と対策

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健康目的や体力づくりをしたいなら、ランニングはうってつけのスポーツです。大阪マラソンや東京マラソンなど、大都市を走るマラソン大会が次々と開催されてブームも巻き起こっており、あらゆる人気ランニングスポットでは、幅広い年齢層のランナーが快適な汗を流しています。しかし一方では、膝の不具合や故障で痛みに悩む人も少なくありません。そこで、スポーツドクターであるいとう整形外科副院長の蔵本理枝子先生に、ランニングが引き起こす膝痛の原因と対策について伺いました。

目次

 

ランニングはメリットがたくさんある

中高年にとっては、手軽に取り組める有酸素運動として知られているランニング。シューズさえあれば、今日からでも始められる手軽さのほかにも、以下のようなたくさんの効果があります。

ランニングの主な効果

メタボを解消してくれる

中高年になると、体重は簡単には落ちてくれず、やせにくい体質になっています。そこで取り入れたいのが有酸素運動。中でもランニングは最適です。酸素を体内へたくさん取り込む有酸素運動は、糖質や脂肪をエネルギー源として効率よく燃焼させるため、ダイエットにも効果があり、おなか周りを中心にやせていきます。

肩こりや冷え性が改善される

ランニングは、心拍数を上げるとともに体温の上昇を促すことで、血行促進につながります。血流がよくなると筋肉のコリもほぐれるため、肩こりに悩んでいる人は改善が期待できます。血行不良による冷え性の人にも効果的。

ストレス解消に役立つ

中高年は、仕事や家庭、地域社会とのかかわりなど、あらゆる環境でストレスが多い世代です。適切に処理をしていかないと、うつ病など心や身体のさまざまな病気を引き起こす可能性があります。

ストレスを解消するなら、ランニングがピッタリ。自分のペースで無理なく走ることができ、快適な汗をかいてリフレッシュできます。走り続けることで瞑想状態のようになり、気持ちの整理にも役立つでしょう。

ランナーの弱点は圧倒的に膝だった

メリットが多い分、人気の高いランニングですが、スポーツ整形外科を担当する蔵本先生のもとには、たくさんの患者さんが訪れると言います。「症状を訴える部位は圧倒的に膝で、そのほか腰痛、足うら、足首と続きます。

たいてい、『膝の軟骨がすり減っているのでは?』と思いがちですが、レントゲンを撮ると異常が見られないことが珍しくありません。膝痛は加齢による軟骨のすり減りだけでなく、膝につながっている筋肉や靭帯、腱などが原因のことも多いのです」

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ランナーは、お尻の筋肉、太ももの裏側の筋肉、ふくらはぎなどを使って、推進力(前へ押し進める力)を出しています。反対に着地するときは、太もも前側の筋肉などでひざへの衝撃を吸収しています。このように膝関節は、走るための筋肉がたくさんつながっているので、痛みを発生させる部位もさまざまなのです。

ランニングが膝痛につながる理由とは

ランニングはひとりで自由に走っている分、“自己流”になりがちです。次に挙げたことが影響して、膝が痛くなることがあります。

正しいフォームで走っていない……膝を痛める人は足だけで走ってしまい、上半身をうまく使えていない人が珍しくありません。腕振りが上手にできていない、肩甲骨が使えていない、無駄な上下運動をしているといったことで正しいフォームができず、膝に負担をかけてしまいます。

「フォームは、自分ではわかりにくいものです。ランニング教室や、マラソン大会の前に行われるミニレクチャーなどに参加して、コーチにアドバイスを受けるとよいでしょう」(蔵本先生)

ランニングシューズを履いていない……「ウォーキングシューズやスニーカーなどで、ランニングしている人がたくさんいます。ランニングにはかかとの安定性がとても重要ですが、そのような靴によってはかかとのホールドが弱いので、着地のとき膝や足に痛みが出ることも。ヒールカップがしっかりしていて、クッション性の高いランニングシューズを履いてください」と蔵本先生は指摘します。底がすり減っていたり、サイズが合っていなかったりするシューズを履いている人も多いので、注意が必要です。

状態が悪い道や悪天候で走っている……初心者なら、平坦で距離表示のある公園などに設定されている周回コースや往復コースがおすすめです。近所にそのような場所がない場合は、なるべくなめらかな道を選び、フォームを崩すことなくテンポよく走れる環境を選びましょう。自宅や勤務先から行き来しやすいコースを選び、その日の気分によってコースを変えるのもよいでしょう。

また、雨上がりは滑りやすいので必要以上に脚の筋肉に負荷をかけて、膝にも負担です。なるべく天気のよい日を選んでランニングを。

走りすぎている……走りすぎて、膝を酷使することは避けてください。「毎日○時間」「○日走って○日休憩」など、走るペースの目安は人によって違います。無理なくランニングを続けるために、生活スタイルの中で、ランニングの時間がどの程度確保できるかを見極めることが大切です。「走った翌日に違和感や痛みがあれば、翌日はウォーキングに切り替えるなど工夫して身体をケアしてください」(蔵本先生)

「中高年世代は、若いころにスポーツをしていて仕事で中断し、『そろそろ体力づくりをしたい』と考えてランニングを始める人が多く見られます。筋力は落ち、股関節周りや太ももの前後、ふくらはぎの筋肉などの柔軟性も低下しているのですが、自覚がないまま若いころと同じ感覚で走り込んでしまい、膝を痛めるといったケースも少なくありません」と蔵本先生は注意を促します。

ランニングの膝痛には、どんな原因が隠れている?

走るとき、膝には1歩ごとに体重の約3倍以上の負荷がかかると言われています。ランニングを続けるときは、膝の痛みに注意する必要があります。代表的な原因をご紹介します。

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膝の外側の痛み……腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)

別名「ランナーズニー」と呼ばれる、ランニングによる膝障害の代表的な病気です。膝の屈伸運動を繰り返すことで、腸脛靱帯が大腿骨外顆(だいたいこつがいか)と摩擦して炎症を起こし、痛みが発生します。

膝の内側の痛み……鵞足炎(がそくえん)

膝の曲げ伸ばしを繰り返すことによって、太もものうら側にある筋肉の付着部で炎症を起こすために痛みが生じます。歩くときや階段の上り下り、イスから立ち上がるときなどに症状が現れることもあります。

膝の内側の痛み……変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

加齢や肥満、遺伝的素因、外傷や感染による後遺症などで膝の軟骨がすり減り、痛みが生じます。ランニングで膝を酷使すると、悪化する可能性があります。

膝のお皿周辺の痛み……膝伸展機構障害(ひざしんてんきこうしょうがい)

膝の前側で、お皿周辺に痛みが発生する障害です。膝蓋骨と大腿骨の配列やバランスの異常からのストレスが原因と考えられています。膝蓋骨が脱臼もしくは亜脱臼するもの、位置や形態の異常、関節の変形、膝蓋骨周辺の腱炎などさまざまです。

運動直後に膝が腫れて痛みがあるときは、患部をしっかりとアイシングすることがおすすめです。氷のうや氷水をビニール袋などに入れて、15分程度痛い部分に当てて冷やします。痛みが続くようなら、なるべく早く整形外科を受診しましょう。

膝の痛みで受診するときの目安

ランニングで膝の痛みがあるときは、整形外科を受診することがすすめられます。受診の目安は、次のようなときです。

  • ・左右の膝を比較して、明らかに腫れている
  • ・じっとしていても痛い
  • ・日常生活で痛い
  • ・2週間以上痛みが続いている
  • ・痛みで快適に走れない

 

受診する病院は、「スポーツに理解のある医師がいる病院が適切です」と蔵本先生は話します。「理解のない整形外科を受診すると、消炎鎮痛剤を処方されて、『しばらく休んでください』と言われてしまうことがあります。でも、痛みの原因を取り除かなければ再び痛みを繰り返すだけです。

場合によっては走ることを中断しなければいけないこともありますが、原因を伝えて、『こうすれば走れるようになります』とアドバイスをするのが医師の役目。患者さんには痛みの原因を理解してもらい、筋力のバランスが原因なら弱い部分の筋トレを指導する、柔軟性が低下していればストレッチの方法を伝えるといったことを、アドバイスできる医師を選びましょう」

ランニングをするときの注意点

蔵本先生は、膝の痛みを予防しながら安全に走るための注意点について、次のことを挙げています。

準備運動はしっかりと行う

初心者は、いきなり走り出さない方がよいでしょう。準備運動で筋肉を温めて柔軟性を高め、関節の可動域を広げると、スポーツ障害の予防につながります。「屈伸」「伸脚」「アキレス腱伸ばし」などを、ゆっくりと行います。

上半身が硬いとランニング中に腕の振りがスムーズにできず、呼吸が苦しくなることがあります。両肩を前から後ろに円を描くように、ゆっくり回しましょう。体がほぐれたと感じたら5分程度のウォーキングや軽いジョギングでウォームアップをしてからランニングをスタートするとよいでしょう。

こまめな水分補給を忘れずに

年齢を重ねるにつれて、のどの渇きを感じにくくなります。中高年になると、水分が失われても自覚できず、水分補給が遅れがちに。必ず帽子をかぶり、脱水にならないように水分補給を忘れないでください。

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「のどが渇いた」と思ったときはすでに水分不足なので、渇く前にこまめに飲むことがポイントです。特にこれから気温が暑くなるので熱中症に要注意。めまい、立ちくらみ、倦怠感、脱力感、頭痛や吐き気などの症状が出たら、すぐに日陰で休むことが大切です。また、塩気の強い飴を食べるなど、塩分補給にも配慮しましょう。

痛みの不安があるときは温めて

「ランニング中に痛みが出そう」と不安がある人は、走る前に膝を温めておくと安心です。使い捨てカイロ、ホットパック、温感クリームなどを上手に活用して。

中高年ランナーにおすすめのストレッチ

痛みのないランニングを続けるために、下半身の柔軟性を高めるストレッチを蔵本先生に教えていただきました。ぜひ、習慣づけておきましょう。

【股関節周囲・腸脛靭帯ストレッチ】
1.両足をそろえて立ち、右脚とクロスするように、左脚を後ろに大きく引き、足の甲を床につける
2.両手を右脚の膝に乗せる。右膝を曲げて左脚に体重をかけながら、左脚の太ももの外側が伸びていることを意識する。15~20秒ほどキープ

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3.左右の脚を変えて、同様に行う

【大腿四頭筋のストレッチ】
1.両足をそろえて立ち、右膝を後ろへ曲げて足首を持つ。太モモの前を十分に反らすことを意識する
2.右足のかかとをおしりに近づけて、15~20秒ほどキープ

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3.左右の脚を変えて、同様に行う

日常生活で注意するのは姿勢

「膝の痛みがなく快適に走りたいなら、上記のストレッチと並行して、日常生活の姿勢を見直すことがとても大切です」と蔵本先生は強調します。「パソコンやスマートフォンなどを見る時間が長い人や、デスクワークなどをしている人は特に、姿勢が猫背になりがちです。

そのような人は上半身が柔軟に動かないため下半身とうまく連動せず、腰や膝にも余計な負担をかけてしまいます。座るときは下腹部に力を入れて骨盤を立て、左右の肩甲骨を寄せるように意識するとよいでしょう。腰痛予防になり、ランニングフォームの改善にも役立ちます。見た目にも若くなりますよ」

ランニングシューズの選び方

ランニングでは、靴選びで足や膝にかかる負担が格段に違います。足にかかる衝撃を吸収し足の機能をサポートしてくれる、ランニング専用のシューズを選びましょう。サイズや形の合わないシューズを履いたまま走ると、靴擦れを起こします。それだけでなく、足や足首周囲を痛めたり、膝に必要以上の負担をかけたりすることがあるうえ転倒も心配です。

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ランニングシューズは、メーカーによって足のサイズと自分のサイズのフィット感が違うことがあります。売り場では足のサイズをきちんと測り、気に入ったランニングシューズが見つかったら、必ず両足を試着して少し歩いて足の感覚を確かめて。足の横幅、甲の高さに違和感がないかを確かめることも重要です。

ランニングで膝痛をサポートするアイテム

膝痛を予防してランニングを楽しむためには、ランニングシューズ以外のアイテム選びも重要です。

ランニングウエア……「ランニングをするときの服装は、何でもよい」と思っている人はいるかもしれません。しかし、汗を吸いやすく乾きやすい素材でできたランニングウエアなら、滝のように汗をかいてもベタつき感がなく、気持ちよく走れます。また、ランニングタイツも便利です。履くだけでテーピングと同じ効果があり、両脚の障害を予防・緩和してくれるうえ、膝の痛み予防にも役立ちます。

サポーター……膝を安定させ、ランニング中の膝への負担を軽減させて痛みを和らげます。慢性的な痛みがある人におすすめ。

テーピング……ランナーの中には、「テーピングをしないと痛みが増すような気がする」「テーピングのおかげで初フルマラソンを走り切れた」と効果を実感している人がたくさんいます。テーピングをすることで安心感を得られるなら、利用してみてもよいでしょう。

ランニングを楽しく続けるために

ランニングはひとりで気軽に取り組めることがメリットですが、ときには単調に感じてしまうことがあります。そこで次のような方法を取り入れながら、楽しく長く続けてみませんか。

マラソン大会に参加する

インターネットなどで調べると、毎週のように全国でマラソン大会が開催されていることがわかります。マラソンといっても長距離ばかりでなく、短距離や年齢別にエントリーできる大会もあります。定期的なマラソン大会の出場を目標にすると、モチベーションが上がります。

ランニング友だちを作る

ランニングを一緒に楽しめる、もしくは成果を報告し合える友だちがいると楽しさが増します。いつも同じランニングコースで同じ時間帯に走ると、何度か顔を合わせる人がいるはず。すすんで挨拶してきっかけづくりをするのもひとつの方法です。ランニングサークルやクラブに参加する、SNSで仲間を見つけるのもよいですね。

ランニングを記録する

走り終えたら、時間と距離を記録して「見える化」すると、モチベーションがアップします。パソコンの表計算ソフトを活用するほか、ノートに書き込むのでもOK。走った成果を月別や年別で集計すると、来月や来年の目標が立てやすく、「がんばろう」と思えます。

ランニングは、身体の弱い部位に気づくきっかけをくれます。膝が痛いときは、「弱っているのでいたわる必要があります」というサインです。「膝が痛いからランニングをやめる」のではなく、痛みの原因を探し、ストレッチや筋トレなどで適切な身体づくりをしながら、楽しいランニングライフを続けてください。

取材・文/内藤綾子

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取材・監修者プロフィール
蔵本理枝子(くらもとりえこ)
いとう整形外科副院長
整形外科医として病院やクリニックに勤務。そのかたわら、運動器(骨、筋肉、関節など) の痛み一般、スポーツに関わる痛みで悩む人々へ向けて「リエチ先生」の愛称でさまざまなメディアで情報を発信中。
いとう整形外科

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