【鍼灸師が教える】腰痛に効果的なツボをご紹介!

pixta_43984097_m

年齢、性別を問わず、誰もが悩まされることの多い腰痛。よくあることだから……と放置してしまうと、痛みで日常生活に支障が出てしまうことも。その原因についてきちんと理解し、症状が出てしまった場合に効果を発揮するツボを覚えておくと安心です。
今回は、腰痛を抱える患者さんと日々向き合う鍼灸整体師の軽部公治先生にお話をうかがいました。

目次

 

腰痛は2種類に大別される?

腰痛と一口に言っても、「特異的腰痛」と「非特異的腰痛」に大きく分けられます。
まずは自分の腰痛がどちらのタイプなのか、見極めることが重要です。

●特異的腰痛(腰痛全体の約15%)

慢性膵炎(まんせいすいえん)、腎盂炎(じんうえん)、腎結石、尿路結石、子宮内膜症、癌の骨転移など、重篤な疾病のある内臓や骨の位置に応じて、腰まわりに痛みが出るケースを特異的腰痛といいます(腰痛全体の約5%)。

安静にしていても激痛がある場合は、この特異的腰痛を疑ってすぐに病院へ行きましょう。急を要することも多々あります。
脊椎間狭窄症や椎間板ヘルニアなど、脊髄の病気を患っているケースも特異的腰痛に分類されます(全体の約10%)。
これらを合わせた約15%が特異的腰痛、つまり、現代医学で診断のつく腰痛です。

●非特異的腰痛(腰痛全体の約85%)

レントゲン、MRI、血液検査など、現代医療における検査では病名を特定することのできない腰痛を非特異的腰痛といいます(全体の約85%)。

ほとんどの腰痛がここに分類されるからこそ、日常生活に潜む原因を探ったり、ツボ押しの方法を覚えたりするなど、自分の体と向きあっていくことが大切になってきます。今回は、この非特異的腰痛にしぼって考えていきましょう。

そもそも腰痛はなぜ起こる?

病名を特定できないと非特異的腰痛も、その原因の大半は不良姿勢をとり続けることによって起きる「身体的負荷」と「心理的・社会的ストレス」の2つにある、と判明しています。
それぞれを細かく見ていきましょう。

●身体的負荷による腰痛

良くない姿勢を取り続けると、椎間関節(首からお尻にかけて33個ある椎骨をつなぐ関節)や仙腸関節(骨盤の仙骨と腸骨をつなぐ関節)の不具合、背筋や腰の筋肉の緊張・疲労が引き起こされて、腰痛につながります。
不良姿勢というと、長時間に及ぶ前屈みの作業やデスクワークが思い浮かびますが、日常生活における些細な習慣が当てはまることも。

たとえば……

  • ・いつも同じ側の肩にバッグをかけていませんか?
  • ・いつも同じ足に重心を置いて立っていませんか?
  • ・歯並びや噛み合わせに問題はありませんか?
  • ・日常的にきつい下着をつけていませんか?

 

こうしたちょっとした習慣が体に負荷をかけていることもあります。

もうひとつ、「内臓—体壁反射」といって、胃腸など消化器系の不調が腰痛の原因になることも。
腰痛を感じると同時に胃痛や下痢が起きていないかどうか、チェックしてみてください。

●心理的・社会的ストレスによる腰痛

ストレスを感じると、脳の働きである中脳辺縁系ドパミン・オピオイドシステムに異常が生じ、痛みを緩和する働きを持つ神経伝達物質であるドパミンやオキオイド質がうまく分泌されなくなります。

さらに、痛みを抑制する働きのある下行性疼痛(とうつう)調整系にも機能異常が起こり、痛みに対する過剰反応が起こります。このような状態から、自律神経系がバランスを欠いてしまい、前頭葉の代謝低下、扁桃体や海馬など記憶に関係する部分の過活動が起こります。

この部分が過活動になると、少しの刺激から過去の痛みの記憶が引き起こされるというさらなる悪循環が。血流が滞ることによって、腰痛の長期化も懸念されます。

このような悪循環を防ぐために、最新の腰痛治療では、ストレス緩和にも力を入れています。
とはいえ「腰痛=ストレス」と片付けてしまうのは危険なこと。身体的な問題がないかどうか、合わせてチェックすることが早期回復のカギになります。

腰痛の起源は?

腰痛の原因が「身体的負荷」と「心理的・社会的ストレス」の2つにある、ということは歴史を遡ってみるとよく分かります。少し横道にずれますが、そもそも腰痛はいつの時代から、どのような理由で人類を苦しめるようになったのか、見てみましょう。

よく、「腰痛は二足歩行を始めた人類の宿命」だと言われますが、果たして二足歩行と腰痛は直結しているのでしょうか?
かつて、NHKの取材班は「人類は狩猟生活を行っていた頃から腰痛に苦しめられていたのだろうか?」という疑問を解決するために、現在も狩猟生活を営むアフリカのハザ族を調査しました。

その結果、誰ひとりとして腰痛の人はいない、ということが分かっています。つまり、二足歩行=腰痛ではないのです。

では、いつから腰痛が起こったのかというと、約1万年前に農耕が始まったときだと言われています。食糧を貯蓄できるようになり、飢える心配がなくなったことと引き換えに、大多数の人々は前屈みの姿勢での長時間労働を強いられるようになりました。その生活スタイルが腰痛を生み出したのです。その証拠に、農耕遺跡から出土した人骨を見ると、背中がひどく湾曲しています。

また、農耕が始まり貧富の差や合理主義が生まれたことによって、人々が前頭葉を使うようになり、ストレスというものがこの世に生まれたことも容易に想像できます。このストレスが腰痛の一因になったのは間違いない、と軽部先生は力説します。

ちなみに軽部先生の推測によると、日本人の腰痛が始まったのは大陸から稲作が伝わってきた約3000年前、弥生時代の北九州地方から。狩猟生活を営んでいた頃には決して大きくなかった人々の身体的負荷と心理的・社会的ストレスが、弥生時代から爆発的に増加した、というわけです。

そこには、パソコンや携帯電話の普及に合わせて、身体的にも精神的にも追い詰められてきた現代人の姿が重なります。

そもそもツボって何?

さて、原因が見えてきたところで、腰痛に効果的なツボ押しについて説明しましょう。
その前に、そもそも「ツボ」とは何なのでしょうか?

東洋医学的にいうと、人の体には血液や神経や“気”といったようなものが循環する「経絡(けいらく)」が張り巡らされています。これは、内臓や筋肉などの組織を繋ぐネットワーク。線路のようなものだと考えると捉えやすいでしょう。ツボとは、この線路上に点在する駅のようなもの。万能だといわれる有名なツボは、大きなターミナル駅だと想像してみてください。

痛みを引き起こす場所のことを西洋医学では「トリガーポイント」といいます。整形外科ではよくここに痛み止めの注射を打つので、ご存知の方も多いでしょう。このトリガーポイントと約7割のツボが一致している、というのも興味深いところです。

ツボ押しはなぜ効果があるのか?

ツボは、神経や血管が集まる“循環の起点”です。だから、ツボに刺激を与えると、効率よく血流や、老廃物を含むリンパの流れを良くすることができ、その結果、筋肉の凝りが緩和されるのです。
ピンポイントで痛みを改善したいときは、その“目的地”と繋がっている経絡上にあるツボを刺激するのがコツ。循環が改善されて、狙った痛みの軽減につながります。

先ほど、腰痛の原因のひとつとして胃腸などの不調があるという「内臓—体壁反射」について説明しましたが、逆に「体壁—内臓反射」という言葉もあります。つまり、ツボを刺激することによって、内臓の状態を改善できるのです。日頃から腰痛や肩凝り対策で鍼やマッサージに通っている人が「胃腸の調子が良い」と言うのは、この効果が出ているケースが多々あります。

また、ツボへの刺激と投薬治療の効果には大きな違いがあります。薬の効果が極めて鋭く局所的であるのに対して、ツボへの刺激の効果は「虚(きょ)しているものは補い、実しているものは瀉す(くだ)」、つまり、緩やかに自然な状態、プラスマイナスゼロの状態に近づけようとするところにあります。体のコンディションを調整してくれるのがツボへの刺激なのです。

おすすめは、症状が出たときに一時的に刺激するのはなく、日常的に刺激すること。そうすることで、不調を防ぎ「なんとなく調子が良い」という状態を維持することができます。

ツボへの刺激の方法

ツボの押し方について、それほど神経質になる必要はありません。基本は3秒くらいキープして、ゆっくり離します。強さは“イタ気持ちいい”くらいがちょうど良いでしょう。効果は、指でもツボ押し棒でも大差はありません。

ツボの位置を難しく考えすぎるよりも、気持ちよく続けていくことが大事です。鍼のようにピンポイントで刺激する場合はさておき、指の腹やツボ押し棒で押す場合はそもそも面積が広いので、十分な効果が期待できるでしょう。

自分でできるツボへの刺激としては、ツボ押しの他にお灸があります。
定説では、長期に渡って体質を改善するにはお灸、即効性を求めるならツボ押しや鍼が効果的だと言われていますが、厳密な区別はされていません。

腰痛に効果の高いツボはここ!【背面】

Print

  • 命門(めいもん)……ウエストライン上、背骨の真上。
  • 腎兪(じんゆ)……命門から指2本分外側。左右にあり。
  • 志室(ししつ)……腎兪から指2本分外側。左右にあり。
  • 大腸兪(だいちょうゆ)……腎兪の少し下。左右にあり
  • 環跳(かんちょう)……おしりの中央よりやや下。

 

背面のツボは、指で押しにくければテニスボールなどを床に置いて、その上に横たわって刺激をしても構いません。
腎兪と大腸兪は腰痛には欠かせないツボ。命門、腎兪、志室は腎臓に近いので、刺激することで冷えの改善など腎機能のUPも期待できます。

座骨神経痛が出ている場合は、環跳がおすすめ。尚、「座骨神経痛」とはよく聞く名称ですが、病名ではありません。椎間板ヘルニアや変形性腰椎症などによって、おしりから出る座骨神経に沿って痛みやしびれが出る症状を指しています。

腰痛に効果の高いツボはここ!【前面】

Print

  • ・天枢(てんす)……おへそから指3本分外側。
  • ・中睆(ちゅうかん)……おへそとみぞおちの間。
  • ・大巨(だいこ)……天枢から3〜4cm下。

 

これらは胃腸の状態を改善するツボですが、「内臓—体壁反射」で腰痛にもよく効きます。とくに天枢と中睆は効果が高いので、軽部先生は、胃腸の調子が悪い上に腰痛を訴える患者さんには、ここから鍼を打ちはじめることもあるといいます。

腰痛に効果の高いツボはここ!【手足】

ツボ-04

・腰腿点(ようたいてん)……人差し指と中指の間、薬指と小指の間、それぞれ骨と骨がぶつかるところ。

ぎっくり腰など、とくに急性の痛みに効果的だと言われている有名なツボ。ここはお灸でも高い効果が得られます。

%e8%85%b0%e8%85%bf%e7%82%b9%e3%81%ae%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%b8_%e5%8a%a0%e5%b7%a5

人の手は、「親指、人差し指、薬指、小指が4本足で、中指が背骨から頭」に該当する4本足の動物を投影していると言われています。腰腿点は、ちょうどこの動物の腰部に当たります。現代医学からはピンと来ないかもしれませんが、先人たちが長い時間をかけて蓄積してきた知恵だと言えるでしょう。

%e9%96%bb%ef%bd%b0%e7%b9%9d%e3%83%bb%e3%83%bb%e7%b9%a7%e5%92%8f%e5%88%a4%e8%9c%92%e5%8d%81%e8%8d%b3%e8%9b%be%e5%8c%86%e8%8e%a0%ef%bd%a4

・三陰交(さんいんこう)……内側くるぶしから指4本分上。
三陰交は、3本の経絡が交わっている万能ツボ。ここを刺激することで体内の巡りが良くなり、腰痛にも大きな効果が見られると言われています。婦人科系の病気や生理痛、冷え症の方も試してみてください。ここは、お灸もおすすめです。

Print

  • ・委中(いちゅう)……膝裏の中心。
  • ・崑崙(こんろん)……外くるぶしとアキレス腱の間。
  • ・中封(ちゅうほう)……足の甲の上、真ん中より少し外側のくぼみ。

 

崑崙と委中、そして背中にある腎兪は「太陽膀胱経」という経絡上にあります。この経絡は足先から腰を通って、首、頭へと至る道筋。「こんな足先のツボがなぜ腰に効くのか?」と不思議に思いますが、経絡のルートを考えると理にかなっていることが分かります。

この太陽膀胱経は、最近話題の筋膜とも一部のルートが一致していることが判明しています。
また、足の真裏の踵と、内踝の下から少し足先に向けたあたりも腰痛のツボとして知られています。

ちなみに、崑崙と委中については興味深い逸話があります。1991年にアルプスの氷河から保存状態の良い5000年前の人体のミイラ、アイスマンが発見されました。このアイスマンが複数の入れ墨を入れていたのですが、崑崙や委中と一致する位置にも入れ墨があったのだとか。

さらに、その体を調べたところ、重度のヘルニアだったことが発覚したのです。鍼灸の起源は2000〜3000年前の中国だと言われていますが、もしかしたら5000年前のヨーロッパにもツボという概念はあったのかもしれません。

誰でも簡単にできる、ストレス緩和のテクニック

腰痛の2大要因のひとつが、心理的・社会的ストレスであることは先ほど説明しました。いまは、誰もが脳の前頭葉を使い過ぎている、つまり、アクセルを入れっぱなしの状態なので“なんとなく不調”な人がたくさんいます。

SNSで他人の生活を目にする機会が激増したからでしょうか、すでにたくさんのものを得ているのに、持っていないものにばかり目を向けてしまうことは、誰しも思い当たるところがあるのではないでしょうか?

過ぎた向上心は、不調のもと。小さな幸せに目を向けたり、心からリラックスできる余暇の時間を作ったりするなど、自分の心のあり方を見直してみることも大切です。

最後に、誰にでもできるストレス緩和のテクニックを2つお伝えしましょう。

・深呼吸
吸う呼吸は交感神経を活発に、吐く呼吸は副交感神経を優位にします。心身をリラックスさせるには、副交感神経を優位にすることが重要。ストレスがたまっているな、緊張しているな、と感じたら、鼻から短めに吸って、口からゆっくり吐いてみましょう。

・ストレスに効くツボ「百会(ひゃくえ)」を刺激
頭頂部にある百会は、万能ツボ。ストレスを感じたら、指の腹で頭頂部をぐっと押すだけ。ストレス緩和の他、頭痛、めまい、不眠、胃腸の不調にも効果を発揮します。

誰もが一度は経験するつらい腰痛。そのほとんどが病名のつかない非特異的腰痛に分類され、原因には身体的負荷と心理的・社会的ストレスが挙げられます。痛みを最小限に抑えるために覚えておきたいのは「ツボ」。

体中に張り巡らされた経絡上に存在するツボを刺激すると、血液やリンパの循環が良くなり、痛みが軽減されます。ツボの厳密な位置を気にするよりも、気持ちよく続けることが大事。

鍼と違って、指やツボ押し棒は圧迫面の面積が広いので、大体の場所を刺激するだけでも効果が期待できます。ストレス緩和につながるツボや呼吸法も覚えておいて、ストレスを最低限に保つことで腰痛を抑えることも大切です。

取材・文/棚澤明子

%e5%85%88%e7%94%9f%e5%86%99%e7%9c%9f_%e6%ad%a3%e6%96%b9%e5%bd%a2

取材・監修者プロフィール
軽部公治(かるべきみはる)
用賀HARU治療院院長
日本鍼灸理療専門学校・花田学園卒業。鍼灸師、あんま・マッサージ・指圧師の国家資格、整体師・カイロプラクターなどの民間資格取得。整形外科勤務を経て、2014年に用賀HARU治療院開業。鍼灸を軸に独自の治療を展開。
用賀HARU治療院

profile2

pixta_43984097_m

この記事が気に入ったら
いいね!しよう