【専門家監修】膝の痛みを解消するツボの押し方

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年齢を重ねるごとに気になってくる膝の痛み。ジャンプを伴うスポーツや、加齢によるものなど、その原因はさまざまです。膝に軽い痛みを感じたときに自宅でも応急処置ができたらいいですよね。

そこで今回は自宅でできる対処法、そのなかでもツボにフォーカスして学びたいと思います。東洋医学的処置法で、即効性が低いように思える鍼灸ですが、ポイントを押さえれば痛みをすぐに軽減することができます。教えてくれるのは東京都中野区の鍼灸院「哲学堂鍼灸院」院長の井上堅介さんです。

目次

膝の痛みはなぜ起こる?

ひどくなると、日常の生活にも支障をきたしてしまう膝の痛み。歩くことが辛くなり、お散歩やお買い物も楽しめずQOL(クオリティ オブ ライフ)も低下してしまいます。膝の痛みには様々な原因があり、それによって対処法、治療法が異なってきます。

まずは、痛みの原因について調べていきましょう。膝の痛みの原因について、哲学堂鍼灸院 井上院長に、西洋医学的視点、そして東洋医学的視点で解説していただきました。

変形性膝関節症

<西洋医学>
膝関節のクッションとなる内外の半月板が、年齢を重ねることで磨耗すると、擦り減ったり、さらに進むと無くなってしまいます。半月板がなくなると大腿骨と頸骨が直接こすれるようになり痛みを感じます。また、大腿骨と頸骨の表面をコーティングしている関節軟骨が削れると、骨本体も削れてしまい炎症を起こし痛みが発生します。

<東洋医学>
関節に栄養を届ける“津液”(しんえき=血以外の体液)や、筋肉や腱に栄養を届ける“血”(けつ=全身に栄養を届ける作用を持つ体液)の不足、骨を司る“腎”(じん=栄養の貯蔵庫)が弱っていることが原因で起こると考えられます。

半月板損傷

<西洋医学>
ジャンプなど、急激に膝に大きな負荷がかかると、半月板に亀裂が入ったり裂けます。そうなると膝の曲げ伸ばしをするときに引っかかるようになり、炎症が起き痛みを感じます。

<東洋医学>
軟骨組織(=半月板)の損傷なので、骨を司る“腎”が弱っている状態だと考えられます。

膝の靭帯損傷

<西洋医学>
膝関節には、大腿骨と頸骨をつないでいる、前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯、4つの靭帯があります。転んだり、ねじったりして膝に強い負荷がかかると4種類の靭帯のいずれかが伸びたり、切れたりし炎症を起こし痛みが発生します。なお、前後十字靭帯は切れても気付きにくく、放っておくと溶けてなくなってしまいます。

<東洋医学>
靭帯の健康的な活動をサポートしている“肝”(かん=血流量の調節や自律神経の働きを整える五臓のひとつ)が弱っていると考えられます。

タナ(棚)障害

<西洋医学>
日本人、特に若い人に多いと言われている痛みのひとつ。膝関節の内側にある“滑膜ヒダ”と呼ばれる部分が、スポーツや日常生活のなかで膝蓋骨と大腿骨に挟まれ、腫れて膨らみます。そうなると膝を曲げ伸ばしする際に、引っかかり炎症を起こしてしまいます。

<東洋医学>
滑膜や関節包が原因の痛みなので、靭帯損傷と同じく“肝”が弱くなったことで起こる痛みだと考えられます。

・リウマチ関節

<西洋医学>
免疫に異常が起こることで発生する関節の軟骨や骨が炎症すると考えられています。放っておくと、関節が変形する恐れもあります。腫れや激しい痛みを伴い、関節を動かさなくても痛みを感じるのが特徴です。

<東洋医学>
滑膜などに関係する“肝”と、骨に関係する“腎”が弱まっているところに、寒邪(かんじゃ=体が冷えている状態)や湿邪(しつじゃ=湿気により、体表、関節、筋肉が弱くなっている状態)、風邪(ふうじゃ=風が体にあたることによって、免疫力が落ちている状態)によって起こると考えられます。

病気の原因をポイントで探り出し、その原因に沿った投薬や治療、手術を行う西洋医学とは異なり、人間の体を全体で捉え治療を行う東洋医学。中国では何千年以上も前から伝統的に行われてきた医療です。

ふだんから西洋医学に慣れ親しんでいる現代人にとっては、東洋医学は少し難解でもあります。井上院長は「靭帯損傷や半月板損傷など、外科的な処置が必要な痛みは整形外科での治療、または手術が必要です。

変形性膝関節症など、慢性的な痛みを伴う症状に針治療は効果的です」と言います。どんな痛みでもまずは整形外科を受診し、その原因を探ることが大切。原因が分かった時点で、その後どのような治療を行うか、東洋医学を取り入れるか決定するといいそうです。

整形外科で21年間、臨床の現場でのべ21万人の患者さんの痛みと向き合ってきた井上院長。西洋医学と東洋医学、両方の視点を持ち合わせているので説得力があります!

では、実際にどんな処置を行えばいいのでしょうか? 詳しく教えてもらいましょう。

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ツボを押して痛みは和らぐ?

いわゆる“ツボ”を刺激することで痛みを緩和することは可能なのでしょうか?

井上院長は「もちろん可能です! 特に慢性的な痛みは鍼治療を行うと効果的ですよ」と言います。井上院長の鍼灸院に通う人には、「ウソのように痛みが取れた」とおっしゃる方もいるのだとか。しかも、痛みは即効的に改善されるというから驚きです。

私たちがよく耳にする“ツボ”とは、経穴(けいけつ)と呼ばれる東洋医学の概念です。東洋医学では、体に気(き)と血(けつ)と呼ばれるエネルギーの主要な通り道が12本あり、これを経絡(けいらく)と呼びます。この経絡上に気血が出入りするポイントがあり、そこがツボ(経穴)というわけです。このツボ、人間の体には365個ほど、細かいポイントを含めると無数に存在するんだとか!? 

「経絡はいわば幹線道路、そこから無数に小さな道が広がっているイメージです。その道上にツボが存在しているわけですから、実は体の表面でツボじゃないところを探す方が難しいくらいなんですよ」と井上院長。体に張り巡らされた経絡が五臓六腑に繋がり、体に気と血を巡らせることで健やかな肉体になっていくわけです。

一方で、さまざまな要因で気・血・水がうまく循環しないと体に不調を感じます。こういった時に、経穴に刺激を与えることで気と血の流れを調整するのが東洋医学、鍼灸の考え方。民間療法的で、「ちょっと怪しい」と思われがちな鍼灸ですが、最近では専門機関による研究も進み、鍼治療は腰痛、首痛、変形性膝関節症や膝痛など慢性化しやすい痛みの緩和に効果がある可能性があると言われています。

実際、2014年にオーストラリアで行われた臨床実験では鍼治療は変形性関節痛を緩和する点で鍼治療をしなかった場合より常に有効だという研究結果が出ています(※1)。

もちろん、骨折や靭帯損傷による膝の痛みは、その部分の治療を行わないと抜本的に痛みは改善しません。しかし変形性膝関節症など慢性的な膝の痛みに、鍼灸は効果を発揮するのです。

実は取材中、井上院長のご好意で二箇所にツボを刺激する『イオン球』(※2)を2箇所に貼ってもらいました。手の側面と足のくるぶしに貼ってもらったのですが、回りづらかった首がすっと動くようになったのです!

『イオン球』を貼ってもらったのは首とはかなり離れた場所。しかし経絡で繋がっているので、首の動きに影響を与えているんだそう。貼った瞬間から違いを感じたので、西洋医学に引けを取らない即効性を実感できました。鍼灸は非常に有効性の高い治療法なのです。

※1:「統合医療」情報発信サイト|鍼治療
※2:イオン球

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膝に効果的なツボはどこ?

ツボを刺激することで、慢性的な膝の痛みが緩和することがわかりましたが、近くに鍼灸院がないとき、また鍼灸院に行くほどではない痛みのとき、自宅で簡単にツボを刺激できたらいいですよね。次に、症状別に効果的な膝のツボを教えてもらいました。

・変形性膝関節症

東洋医学では津液や血の不足、腎の弱まりが原因と考えられます。津液や血の活性化、そして腎を強くすることで痛みが軽減します。

①血海(けっかい):膝蓋骨の内側から指3本ほど上の部分
②三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本ほど上の部分
③太衝(たいしょう):足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる部分
これらは、補血(栄養を補うこと)と活血(栄養の流れを良くすること)の作用があるツボです。筋肉や腱に不足している“血”を補ってあげましょう。

④陰陵泉(いんりょうせん):膝の内側のくぼみから指4本ほど下の部分
⑤委中(いちゅう):膝の裏の真ん中
⑥足三里(あしさんり):膝の外側のくぼみから指4本ほど下の部分
これらは水分代謝を活性化する作用があるツボです。このツボを刺激することで“津液”の流れがよくなります。

⑦陰谷(いんこく):膝の内側で膝を曲げたときにできる大きなしわの端部分
⑧太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
これらは骨を司る“腎”を強くする作用があります。このツボを刺激すれば、骨が強くなると考えられています。

・半月板損傷

軟骨組織の損傷なので、東洋医学的には“腎”の弱体化が考えられます。腎を補い強化するツボと、患部である半月板近くのツボが有効です。

①陰谷(いんこく):膝の内側で膝を曲げたときにできる大きなしわの端部分
②太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
変形性膝関節症の⑦⑧と同じです。

③曲泉(きょくせん):膝の内側、太い骨の際の部分
④犢鼻(とくび):膝を曲げるとできる外側のくぼみ
これらのツボは半月板の近くにあるので、患部に直接働きかけます。

・靭帯損傷

靭帯の健康的な動きをサポートする“肝”を補い強化することで、靭帯の回復を促します。

①太衝(たいしょう):足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる部分
②曲泉(きょくせん):膝の内側、太い骨の際の部分
“肝”を補う効果があります。体内の循環を促進させます。

③犢鼻(とくび):膝を曲げるとできる外側のくぼみ
④内外膝眼(しつがん):膝を曲げたときにできるくぼみの、内側と外側
⑤足三里(あしさんり):膝の外側のくぼみから指4本ほど下の部分
前十字靭帯付近のツボです。直接患部に働きかけます。

⑥委中(いちゅう):膝の裏の真ん中
後十字靭帯付近のツボです。直接患部に働きかけます。

⑦陰谷(いんこく):膝の内側で膝を曲げたときにできる大きなしわの端部分
⑧曲泉(きょくせん):膝の内側、太い骨の際の部分
内側側副靭帯付近のツボです。直接患部に働きかけます。

⑨陽陵泉(ようりょうせん):膝の外側に飛び出ている骨の指1本ほど下の部分
⑩足三里(あしさんり):膝の外側のくぼみから指4本ほど下の部分
外側側副靭帯付近のツボです。直接患部に働きかけます。

・タナ障害

滑膜や関節包が原因なので、“肝”を強化することで回復を促します。

①太衝(たいしょう):足の甲で、親指と人差し指の骨が交わる部分
②曲泉(きょくせん):膝の内側、太い骨の際の部分
靭帯損傷の①②と同じです。

③太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
④陰谷(いんこく):膝の内側で膝を曲げたときにできる大きなしわの端部分
“腎”を補う効果があるツボです。エネルギーを蓄える力を促進させます。

⑤血海(けっかい):膝蓋骨の内側から指3本ほど上の部分
⑥三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本ほど上の部分
補血と活血作用のあるツボです。血(血液と栄養分)を補い、活性化させます。

⑦陰陵泉(いんりょうせん):膝の内側のくぼみから指4本ほど下の部分
⑧委中(いちゅう):膝の裏の真ん中
⑨足三里(あしさんり):膝の外側のくぼみから指4本ほど下の部分
膝の湿邪を取り除く作用があるツボです。湿気による不調を改善します。

これらのツボを押したり、余裕があればお灸をすえるのも効果的。東洋医学の世界は奥深く、難しいく思われがちです。しかしツボの発見となったのは、痛い場所を押したら痛みが軽減したのがきっかけ。

だからこそ、押すと痛い場所を押してあげたり、自分の弱い部分を見つけて、その症状を改善してくれるツボだけでも覚えておきましょう。違和感を感じたら、押したり、擦ったりするだけでも良い影響がありますよ!

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膝の痛みに効果的なトレーニングは?

でもやっぱり、ツボを覚えるのは大変そう…。本当にツボの場所が合っているのか不安。そもそも膝を痛めないようにするにはどうしたらいいの? そうお考えの方も多いのではないでしょうか。そこで、簡単に行えるトレーニングや、日常的に注意したいポイントなどを教えてもらいました。

・体を冷さない、循環を良くする

体が冷えてしまうと、気や血の巡りが滞り体調が悪くなってしまいます。例えば風邪をひいたときの発熱は体内で起こっている化学反応。体内に侵入したウィルスを出すために、体温調整機能が脳に指令を出し発熱します。

体温を上げることで血液の巡りを活発にし、ウィルスを体外に出そうとするのです。このように人間には気と血の巡りを促進する機能が備わっているので、その機能を最大限に発揮できるよう日ごろから体を動かして循環を良くしておくことが大切です。

・ストレッチを行う

体が冷えると、関節の動きも鈍くなってしまいます。そうならないためにも、日頃からストレッチを行うことが大切です。人間の膝は、縮む動きより伸ばす動きが重要。膝の曲げ伸ばしを行うとよいのですが、無理に行っては逆効果。膝に負担をかけないように水の中で行うと効果的です。冷やしてはいけないので、お風呂の中で行うとより効果がアップします!

・膝を保護してくれる筋肉を鍛える

多くの場合、膝に痛みを生じるのは、階段の登り降りなど、膝に自分の体重がのしかかる時です。
だからこそ、膝にのしかかる重みを軽減して、膝を守ってくれる筋肉を鍛えることが大切!

やり方は簡単で、椅子に座って、膝から下を真っ直ぐ上に持ち上げて『ピン!』と伸ばすだけ。
膝を伸ばした時に膝の裏を浮かさず、椅子にしっかりと押し付けるようにして、膝から下の脚を伸ばすことがポイントです!

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・痛い箇所にお灸をすえる

ポイント的に痛みを感じるようならお灸をするのも効果的。もし痛い部分に効果のあるツボがわからなければ、痛い箇所に直接お灸をすえれば十分に効果が得られます。最近はドラッグストアでも簡単に手に入るので、取り入れやすいです。

・サポーターは短時間で

変形性膝関節症の方がよく利用するサポーターですが、使い方を誤ってしまうと逆効果。血流が悪くなってしまうので、就寝時はもちろん、家でのんびりと過ごす時は外すようにしましょう。サポーターを着用するのは長時間歩く時、スポーツをする時など膝をよく使うときに限定するといいですね。

冷えは万病の元とも言われますが、関節に痛みにも影響するので、意識して温めることが大切なんですね。また、ツボの場所がわからなくても、痛い部分に直接お灸をすえても効果があるなんて、初心者でも取り入れやすいです! どれも簡単に実践できるので、今日から始めてみてはいかがでしょうか。

鍼灸の本場中国で東洋医学を学び、21年間整形外科の臨床現場で活躍してきた井上院長ですが、現在は美容鍼灸を中心に施術を行っています。なぜならもっと多くの人に鍼灸の素晴らしさを知って欲しいから。

「鍼って怖そう、とか怪しいとか、思われがちなんですけど、本当に効果的な治療法。美容鍼灸から鍼の素晴らしさを体感してもらって、そこから体の不調の相談にものってあげたいんです」と井上院長は言います。

奥深い東洋医学の世界。鍼に限らず、ツボを刺激することで膝の痛みも軽減することがわかりました。ちょっとした不調なら自宅でも簡単にツボを刺激することができるので、ぜひツボの場所を覚えて体を整えるようにしましょう!

取材・文/小野

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取材・監修者プロフィール
井上 堅介
鍼灸師。東京都医療専門学校鍼灸マッサージ科卒業後、北京中医学院(現北京中医薬大学)に3年留学。帰国後は21年間整形外科病院にてのべ21万人の臨床経験を積む。2014年に「哲学堂鍼灸院」を開業。現在は、日本美容鍼灸マッサージ協会の認定美容鍼灸講師として、東京や仙台で美容鍼灸セミナーを開催し、多くの美容鍼灸師を育成。
哲学堂鍼灸院

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